【総評】『バッド・バッチ』シーズン2のテーマと伏線:「普通ではない」元兵士が求める普通の生活

2023/04/30

バッド・バッチ レビュー

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『バッド・バッチ』シーズン2が配信終了!そして、不良クローン分隊の物語は、2024年配信のシーズン3で完結する!今回の記事では、シーズン2を振り返りつつ、描かれたテーマと、残された伏線について振り返っていこう。

 海外の反応・レビュー・豆知識

戦後のクローンはどこへ向かうか


『バッド・バッチ』シーズン2は、戦後のクローン・トルーパーの「今後の人生」が主題となっていた。惑星セレノーを舞台とした第一話「戦利品」第二話「戦争の爪痕」では、本作がクローン大戦後であることが改めて強調された。この最初の二話で、かつての「敵」だったロマーから、テクやオメガは「大切なこと」を学ぶ。もはや、バッド・バッチは共和国の兵士ではない。

たびたびフィラー(話数を増やすための不要な回)だと非難されていた回も、このテーマに沿ったものだった。第四話「ライオット・レース」では、戦争のために作られたクローンであるテクが、レースという別の場所で能力を発揮する。第五話「埋もれた財宝」では、オメガがフィーに影響を受けて夢を見つける。それぞれが、兵士とは違う道を歩もうとしていた。

しかし、バッド・バッチは傭兵として戦って生きることを強いられていた。居場所を作るためには、兵士として活動するしかなかった。第六話「部族」では、元ジェダイのグンジが故郷へ戻り、新たな人生を歩み始めた。第十話「奪回」では、ベンニが抑圧者から故郷を解放することで、自由な生活を手に入れた。しかし、バッド・バッチには、もはや故郷がない。惑星カミーノは、シーズン1で、無残にも帝国軍に破壊された。彼らは、シドの手下として戦い、居場所を手に入れなければならない。

だが、この「故郷の喪失」という問題は、終盤になって解決の兆しが見えた。第十三話「パブー」で、一行は難民が作った「第二の故郷」へとたどり着いた。そこでは、相互に助け合うコミュニティが形成されていた。ここなら戦わずとも、居場所を見つけることが出来る。最終話で、テクを失った後、ハンターはオメガにパブーへと移住しようと提案した。しかし、帝国がオメガを攫い、物語は振り出しへと戻る・・・

しつこく言っているが、『バッド・バッチ』という作品は、クローン・トルーパーが、新たな故郷で、第二の人生を始める話だ。今まで戦争に縛られていた彼らは、ようやく「普通の生活」を手に入れようとしている。そして、それは、バッド・バッチという特殊なクローンだけに当てはまる話ではない。第七話「クローン謀議」第八話「真実と結末」、そして後述するクロスヘアーの物語でも描かれたように、すべてのクローン・トルーパーは、戦後に居場所を失った。しかし、彼らの人生は続いていく。戦争のために身勝手に造られ、奴隷のように働かされてきたクローンが、ようやく自由を手にする時が来た。ライヨ・チューチーやレックス、エコーらのクローン・レジスタンスも、シーズン3では、「新たな故郷」へたどり着くのではないだろうか。

帝国に居場所を求めるクロスヘアー


一方、シーズン1でバッド・バッチと決別したクロスヘアー。彼は、帝国に残ることを決めていた。第三話「孤独なクローン」では、コーディとは対照的に帝国に忠実であり続け、敵対した総督を射殺した。コーディすらも帝国から離脱し、別の道へと進んだ。孤立を深めるクロスヘアー。

だが、クロスヘアーが求めているものは、バッド・バッチや他のクローン・トルーパーと同じ「居場所」だ。シーズン1第十五話で、クロスヘアーはこう打ち明けている。「帝国には力が必要だ。俺たちは兄弟としてもう一度活躍できる」。彼は、帝国のために戦えば、帝国に居場所を作れると考えていた。

しかし、第十二話「前哨基地」で、その淡い期待は裏切られる。帝国はクローンを消耗品としてしか考えておらず、代替品であるストームトルーパーのアーマーのために、彼らを使い捨てようとした。メイデーを目の前で見捨てられたクロスヘアーは、絶望し上官を撃ち殺した。第十四話「転換点」にて、帝国は、オメガを見つける手がかりとしてクロスヘアーを利用しようとする。だが、彼は自分だけが自由になれる提案を拒否し、バッド・バッチへ警告を発した。

ここまで、本作の悪役だったクロスヘアー。それでも、彼は常に仲間思いの人物として描かれてきた。元々帝国に加わったのもバッド・バッチという兄弟のため。帝国を裏切る結果も、兄弟の死。そして、帝国の誘いを断り、バッド・バッチにも警告を発した。彼が本当に欲しているのは、仲間と一緒に過ごせる「居場所」なのだ。つまり、彼の最終的な目標は、バッド・バッチの他の面々と同じ。シーズン3で、クロスヘアーは再び分隊に再加入することになるだろう。

「普通ではない」テク


オメガと共に、本作で大きく取り上げられたのは、技術職のテクであった。第二話「戦争の爪痕」では、真っ先に自分が兵士ではないことを意識し、第四話「ライオット・レース」では、兵士ではない才能を開花させた。女海賊のフィーとも、恋愛関係のようなものがほのめかされた。

そして、第九話「分かれ道」では、テクが「発達障害(ギフテッド)」であることが暗示された。オメガの気持ちを害する発言をしてしまい、険悪な雰囲気になってしまったテク。洞窟で二人きりになったとき、オメガへと心情を吐露した。「僕は気持ちや思考の処理方法が普通とは異なるけど、感情はあるんだ」。彼の魅力がグッと増した台詞だった。

バッド・バッチのクローンは、それぞれが特殊な能力を持つ。それは時に羨望の対象となるが、同時に「普通」にはなれないことを意味する。スター・ウォーズは、いや多くの物語は、「努力をすれば、変わって自分で道を切り拓ける」と諭す。しかし、どんなに努力しても克服できない「ハンデ」を持つ人はいるのだ。そんな人に変われと言葉を浴びせ続けるのは、どんなにむごいことか。オメガは、彼にそんな言葉は投げかけない。ただ彼を理解し、共存する。

第十六話「プラン99」にて、テクは大きな決断を下す。このままでは兄弟が全滅することを悟った彼は、その理知的な脳をフル回転させ、自らの命を犠牲にする道を選んだ。テクは、最後まで変わらなかった。だが、その変わらない能力に、兄弟たちは救われた。

均一化されたクローン・トルーパーの中で、バッド・バッチという「特殊」な存在は悪目立ちする。それでも彼らは、その身体的な特殊さ、精神的な特殊さを自分たちの「長所」として、変わらずとも活躍できる道を見出した。そして、互いを尊重することで、チームとして、家族として活動してきた。そう、変わる必要などない。自分を活かせばいいのだ。この物語は、多くの「普通ではない」子供たちに勇気を与えているだろう。

帝国の計画


最終話のレビューでも触れたが、改めてシーズン3へと繋がる伏線を振り返ろう。本シーズンでは、「特別なクローン」と「ストランド=キャスト」に焦点が当たっていた。

まず、バッド・バッチ(クローン・フォース99)は、途中加入のエコーを除き、それぞれが遺伝子改良を加えられた「特別なクローン」である。カミーノアンは、クローン技術を応用することで、成長速度の加速に加え、能力の付与や性別の転換にまで成功していた。彼らは、非常に高度なバイオ・テクノロジーを有していた。

帝国はしの技術を発展させ、後に「ストランド=キャスト」を作る。ストランド=キャストは、複数のドナーを持つクローンであり、人造人間だ。『マンダロリアン』最終話では、ギデオンが、ジェダイと自分の遺伝子を組み合わせたストランド=キャストの軍勢を作ろうとしていた。そして、スノークやレイの父親も成功例の一つである。

つまり、『バッド・バッチ』は、『マンダロリアン』やファースト・オーダーへと繋がるクローン技術について描こうとしている。そして、『バッド・バッチ』時点で、帝国には大きな野望があるようだ。第十五話「サミット」では、ヘムロック博士の計画が、デス・スターに匹敵するほどの重要なものであることが示唆された。

残された伏線はいくつかある。第七話「クローン謀議」に登場した、異質なクローン・トルーパー「信じる者」。第十一話「メタモルフォーゼ」に登場した急成長するジロ・ビースト。そして、最終話「プラン99」に登場したオメガの「姉」。このいずれもが、クローンを活用したヘムロック博士の計画に繋がるはずだ。

ヘムロック博士は、カミーノアンの技術を発展させて、「新たなクローン・トルーパー軍団」を作ろうとしていると、私は予想している。そして、そのトルーパーは、バッド・バッチや本作のジロ・ビーストのように遺伝子改良で強化されている・・・。そうなれば、銀河にとって大きな脅威となる。この計画が破綻することは目に見えているのだが、破綻まで帝国を追い詰めることになるのが、バッド・バッチやレックスなのではないだろうか。

まとめ

本シーズンは派手さには欠けたものの、素晴らしい作品だった。戦争のために作られたクローンが自らの居場所を求めて彷徨う様や、「普通ではない」ことを肯定的に捉える描写は、子どもへ向けた教訓として優れていた。大人の世界に足を踏み出していく子供は、やがて自らの居場所を探すために奮闘し、自分の「普通ではない」部分に葛藤することになる。そんなとき、本作は支えになる。

また、「クローン技術」という現行のスター・ウォーズを貫くテーマを取り上げてくれたことも高評価だ。本作も、マンダロリアン・シリーズ、ひいてはフィローニ作品群の一翼を担う重要作であることが示された。近年のスター・ウォーズは「作品間を埋めていくスピンオフ」で面白さが増大しており、その流れにも則っているだろう。

終わってみれば、フィローニ作品にはずれがないことを改めて意識させられるシーズンであった。バッド・バッチはどこへ向かうのか。シリーズの完結編である『バッド・バッチ』シーズン3が今から楽しみだ


・・・でも、二作品同時配信はもうやめて?


筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

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ジェイK
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