【レビュー・豆知識】ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2 第4話~第6話(2週目)

2025/05/03

キャシアン・アンドー レビュー

t f B! P L

 

ゴーマンの革命


惑星ゴーマンではシリル・カーンが標準局の支局長として赴任していた。そんな彼をゴーマン戦線の人間エンザ・ライランツやリーダーのカロ・ライランツが監視している。彼らは帝国の内通者を探しており、シリルに接触を試みた。首都パルモに武器庫が作られていると信じている彼らはその証拠をつかもうとしていた。ISBの立ち入りを受けたシリルは、それがきっかけで戦線に情報を渡す・・・が、これは罠だった。ISBのデドラ・ミーロの恋人である彼は、彼女の手駒として動いており、彼女の上司のリオ・パータガスと共に戦線をおびき出そうとしていた。

ISB内の情報源のロニ・ヤングからの情報で、ゴーマンでの動きを察知したルーセン・レイエルはゴーマン戦線を評価するためにキャシアン・アンドーを送り込む。キャシアンはエンザや戦線メンバーの未熟さを目にし、彼らの武力闘争は犠牲を出すだけだと判断した。だが、ルーセンは裕福な惑星が火に包まれ、反乱が広がることを期待していた。ルーセンはヴェル・サーサシンタ・カズを送り込み、輸送車を襲撃させる。シンタは不慮の事故で犠牲になったが、襲撃は成功しこうして革命は始まった。それがISBの作った罠とも知らずに・・・
 
ゴーマンの人々がフランス語のような言葉を話し、フランス人俳優ばかりであったのは非常に興味深かった。制作陣によると、これはナチスに抵抗したフランスのレジスタンス運動からインスピレーションを受けているとのことだ。だが、わざわざここまでフランスに近づけたのはそれだけではないだろう。フランスの人民は何度も何度も革命を成功させてきた。それはすなわち何度も失敗したことがあることを意味するが、彼らは決して折れない。ターキンの虐殺があっても、再び立ち上がろうとするゴーマン人の姿は、まさにフランス人民そのものだ(豆知識の欄でも触れているが、このターキンの虐殺はレジェンズからの設定の引用)。そう考え出すと、「武器庫」を襲おうとするのはバスティーユ襲撃事件にも見えてくる。

既存の設定からして次週の第7話~第9話が描く2BBYにこの地では「ゴーマンの虐殺」が発生することは確定している。この虐殺を元老院で非難したことがきっかけで、モン・モスマは逃亡者となり同盟軍の活動を本格化させる。ルーセン・レイエルが望んだようにゴーマンが明々と燃え上がることで、銀河には革命が広がっていく。帝国自らがゴーマンの反乱の激化を計画したが、彼らの見込みは甘く、自分たちで作った罠で帝国は自滅する。それは、モン・モスマとの会話で語っていたように、最高責任者のクレニック長官が「失敗に終わる反乱なんかに命を懸ける者はいない」と高を括っていたことも要因の一つだろう。

そして、シリル・カーンは第1話の途中まで、ゴーマン戦線に寝返るかのような行動をとっていた。母との会話には違和感があったが、あんなに規則重視の彼が標準局に戻る際にルールを曲げる部下を利用したのは変化の象徴に見えた。もっとも、それはデドラに連絡を取るためであったが。デドラはコルサントに帰ってきた彼氏のシリル・カーンを1時間だけ電気を消してもてなす。デドラが完全に男を操る悪女にしか見えない。最初から彼女は忠実な手駒としてシリルを見ていただけかもしれない。シリルが可哀そうだ・・・。そんなシリルは自分がISBの重要な駒だと考えているが、ISBの目的がゴーマンの人々を駆逐することだとは知らない。なんだかんだ自分の正義を貫き通す彼だが、ISBの本当の目的を知っても、彼は帝国を信じ続けるだろうか・・・

狂気のパルチザン


ソウ・ゲレラ率いるパルチザンは惑星ディカーの秘密基地に集結していた。彼らの次のターゲットは非常に危険な燃料であるライドニウム。盗み出すのも難しく、彼らはルーセン・レイエルを通じて専門家であるウィルモン・パークを招聘していた。しかし、ソウは約束を反故にし、ウィルモンからすべての技術を得るため、彼を軟禁する。ウィルモンは身の危険を感じるが、最終的に殺されたのは彼が技術を授けていた男プルティだった。ソウはプルティが裏切り者だと気づき、偽の情報を流していたのだ。最終的にパルチザンはまんまとライドニウムを盗み出す。吸引するのも危険なライドニウムだが、ソウは自ら進んで浴びた。その彼の眼に宿るのは狂気。そして、革命は正気のものではできないという力強い言葉に、ウィルモンも感化される・・・
 
『ローグ・ワン』でも圧倒的な存在感を放っていたソウ・ゲレラだが、今回さらなる狂気を見せる。自分の命を顧みずただ革命へと邁進する姿にはまだに狂気を感じた。特に彼がライドニウムを「妹」と呼んでいたことは、『クローン・ウォーズ』で彼の妹とその死が描かれていたことを考えるとさらに恐ろしい。ソウの反乱の根底にある「妹」はいまや彼を狂気に陥れる毒ガスとなった。ソウは後にライドニウム中毒の影響か、酸素マスクを手放せなくなり、そして人を信じる心も失っていた。
 
ソウ・ゲレラは自分たちをライドニウムと同一視していた。皆から危険だと忌避され、今後生き残ることはなく、しかし燃料として火に勢いを与える。それがパルチザンとライドニウムの共通点だ。彼の語った「野垂れ死ぬ人間にも意味を与える」哲学は、革命の大きなテーマであろう。第3話ではブラッソ、第6話ではシンタが死亡した。この彼らの犠牲で劇的な何かが生まれたわけではない。その死が生んだものは無に等しい。だが、その遺志を引き継ぐ、キャシアン&ビックス&ウィルモン、ヴェル&ゴーマン戦線の人々の心には火をつけた。燃料を得て進む人間がいるからこそ、そこに意味をもたらせられる。『ローグ・ワン』の最後、自分たちのメッセージを誰かが受け取ったことを信じて火に包まれたキャシアンとジンにも通じる考え方だ。

また、『フォースの覚醒』にレジスタンスの基地として登場した惑星ディカーにパルチザンの基地があったことも大きな意味を持つ。レジスタンスはファースト・オーダーに抵抗する唯一の希望として、人々の上に燦然と輝く希望であった。カント・バイトの奴隷の少年もそのマークを見れば、目を輝かせる。しかし、その源流をたどれば理解しがたい狂気の集団へとたどり着く・・・。これが革命の真実なのだ。狂気のパルチザン、未熟なゴーマン戦線、そして「あちこちにいる友達」が登場したことで、これらをまとめ上げ同盟を結び、そこに法と秩序をもたらしたモン・モスマの手腕がさらに際立つ演出になっている。

モンの孤立とルーセンの危機


元老院議員のモン・モスマは帝国に不都合な人間を恣意的に犯罪者にできる再判例の撤回に奔走していた。しかし、元老院の仲間たちは皇帝の不興を買うことを恐れ、彼女に同意しようとしない。一方、反乱活動の首魁ルーセン・レイエルは、古物商としての表の顔を利用し助手のクレヤ・マーキと共に上流階級の中に情報ネットワークを構築していた。そのネットワークの中にはダヴォ・スカルダンに売った骨董品の中に仕込んだ盗聴器も含まれている。だが、スカルダンのコレクションに贋作が見つかったことで、彼はすべて再鑑定することを決める。ルーセンは慌てふためき、クレヤと共に盗聴器の回収に乗り出す。スカルダンのパーティに参加した二人は、ISB将校のロニ・ヤングを巻き込みつつ、モンやオーソン・カラン・クレニック長官の横で盗聴器を取り外すことに成功し、九死に一生を得る・・・

モン・モスマの議員としての活動が久々に描かれたが、同時に彼女の窮地もうかがい知れた。皇帝の不興を買うことを恐れる者、深く考えていない者、帝国に慣れきっている者・・・。誰も帝国に忠誠を誓う宣誓式に疑問を抱かなくなっている。それどころか、政治はテレビ番組で消費されるショーになっていた。取り沙汰されるのはパーティの華やかさばかりで、会場にはシャッターチャンスを狙うパパラッチのドロイド。そして、新人議員も晩餐会のことしか頭にない。この元老院に留まることにモンが限界を感じる理由がわかる。先述したが、彼女は来週の第7話~第9話で帝国を公然と非難し、離脱することになる。

また、ルーセン・レイエルが珍しく取り乱している回だった。彼はすべてを失う覚悟で戦っているはずだが、少なくとも今は失うつもりはないようだ。反乱は道半ばであるということか。いや、それ以上に失うことへの恐怖のような感情も見て取れた。彼はいざというときにここまでして守っていたすべてを捨てられるのか・・・?だが、その時は刻一刻と迫っている。ルーセンが『ローグ・ワン』に登場しないということは、彼はそれまでに命を落とすはずだ。最後の3話が『ローグ・ワン』の直前であることを考慮すると、彼の死も来週の第7話~第9話で描かれそうだ。今までの彼の戦い、努力、陰謀、保身を知っているからこそ、彼の最期は印象的なものになるだろう。

キャシアンとビックス


コルサントで身を隠すキャシアン・アンドービックス・カリーン。ビックスはドクター・ゴーストから受けた拷問の心の傷が癒えておらず、また直近の任務でも犠牲者を出したことでストレスを負っていた。悪夢にうなされ、隠れる生活を嫌い、薬物漬けになっている。キャシアンはビックスを守ろうとするが、ルーセン・レイエルはビックスがキャシアンの弱点になっていると考えていた。ルーセンは二人を引き離そうと画策する。だが、キャシアンは危険を冒して彼の骨とう品店に殴り込み、自分は犠牲を払っているのだから、そちらも対価を払えと語った。その言葉を受けて、ルーセンはビックスにゴーストの殺害任務を与える。「悪夢」を殺した彼女は、建物を爆破したキャシアンと共に夜の街へと消える・・・

1年前にレイプされそうになって必死の抵抗をしていたビックス・カリーンだが、それに加え1年間のストレスでさらに疲弊していた。今では睡眠薬漬けになっている日々を送る。前回の任務ではキャシアン・アンドーがビックスの顔を見た者を殺しており、そのことにも疑問を抱いている。「キャシアンは自分を守ろうとするあまり、あらゆる物事におびえ、勝利に進めていないのではないか」と考えている。第1話の最終盤でビックスが薬を飲んでいた時はキャシアンのために自殺するつもりではないかとびくびくした。彼女にはそれほど生気がない。ビックスはカーテンや皿やタオルを求めるなど普通の生活を望むような言動がある。しかし同時に勝利を必要としている。それはフェリックスの人々が、元恋人が、そしてブラッソが彼女の普通の生活を認めないと思っているからだろう。

もちろん2人のボスであるルーセン・レイエルも、ビックスが弱っていること、そして彼女がキャシアンの「弱点」になっていることに勘付いている。だからこそ、2人を引き離して別々の任務につけたり、ビックスにゆさぶりをかけてキャシアンを頼らない強さがあるのかどうかを試したりしている。キャシアンはそんな彼に殴り込み、身を捧げている自分たちのことをもっと考えるように迫った。結果、ルーセンはビックスにゴーストを殺す任務を与えることで彼女の悪夢を終わらせる手伝いをした

ルーセンは唐突に考えを改めたようにも見えるが、きっとヴェル・サーサとシンタ・カズのことも改心のきっかけであろう。ルーセンはこの二人も引き離し別々の任務につけていた。だが、シンタは「事故」後1年間もまともに働けなくなってしまっていた。精神も参っていたようだが、ヴェルとの一緒の任務に就くことでようやく力強さを取り戻した。このことを考慮して、ルーセンは時には愛や絆が人を勇気づけることを意識し、二人が一緒に立ち直る機会を与えたのだろう。割と良い上司だ。

さて、次回はこのドラマで最も重要な山場だ。「ゴーマンの虐殺」という大事件が描かれ、モン・モスマは元老院を脱退、いよいよ反乱同盟の活動が本格化する。そして今のキャシアンを造り上げたルーセンとビックスはおそらく死亡する。だが、キャシアンは代わりに最高の相棒となるK-2SOとも出会う。今から興奮している。

豆知識

巨大スクリーン

コルサントで過ごすキャシアンとビックスのシーンを撮影するために、ドラマ『マンダロリアン』でおなじみの巨大スクリーンStagecraft(The Volume)が使用された。LEDスクリーンと窓の間にスプリンクラーが設置され、雨が再現された。

ゴーマン


「ゴーマン戦線」は第二次世界大戦中のフランス抵抗運動にインスピレーションを得ている。総指揮のトニー・ギルロイはゴーマンの住民役に主にフランス人俳優を起用し、彼らの言語もフランス語へと近づけた。また、ゴーマンの建築と文化は、北イタリアのトリノ、サウジアラビアのメッカとメディナからインスピレーションを得ている。

ゴーマンの虐殺

今回「ターキンの虐殺」が言及された。レジェンズ(旧設定群)では、ゴーマンの虐殺はグランドモフ・ターキンが抗議している群衆の上に宇宙船を着陸させ、多くの罪のないゴーマン人の命を奪った事件とされていた。今回の言及は、その旧設定を正史でも拾い上げている形。

ポッドレース

ゴーマンの帝国軍将校たちがモニターで観戦していたのは、EP1でアナキンがやっていたことでも有名なポッドレースだ。

ディカー


ソウ・ゲレラと彼のパルチザンは惑星ディカーを拠点としている。この惑星は『フォースの覚醒』でレジスタンスの本拠地として初登場したもの。また、『フォースの覚醒』と同様にこの惑星の撮影場所は、かつてイギリス空軍と基地だった場所だ。

ライドニウム

ソウ・ゲレラとウィルモンは、宇宙船の燃料で有害なライドニウムを吸入する。ライドニウムは『クローン・ウォーズ』S5-12「生きていた兵士」で初めて登場した。

サム・ウィットワー

モール役、ギャレン・マレック役で知られるサム・ウィットワーがカメオ出演。
キャシアンがコルサントからゴーマンへ向かう準備をしている最中に、イヤホンを通して自分の偽りの身分の設定の指示を受ける。この声を担当したのがサム・ウィットワーだ。

ベイル・オーガナ


レイアの養父であるベイル・オーガナが登場。プリクエル三部作や映画『ローグ・ワン』、ドラマ『オビ=ワン』ではジミー・スミッツがベイルを演じていたが、本作ではベンジャミン・ブラットが演じている。スケジュールの都合のためのリキャスト。また、ベンジャミン演じるベイルは今後さらに本作に登場予定とのこと。


画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点

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ジェイK
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