『マンダロリアン・アンド・グローグー』をジャパンプレミアで鑑賞したので、簡潔なレビュー。既に公開されていた情報以上の大きなネタバレはないが、完全なネタバレ回避レビューではないのでご注意いただきたい。
本作は映像作品として非常に楽しい作りになっている。ただ、一本の映画として見るとキャラのアークや流れが弱い。終わった時に印象的なシーンは思い出せるが、どのような物語だったのか、一言で説明しづらい。批評家の評判が芳しくないのも理解できる。
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まず、本作の売りはなんと言ってもアクション。これはもう手放しで褒めていいレベルに達している。ド派手な爆破シーン、ディン・ジャリンの隠密かつ鋭い攻撃、次々と襲いかかるクリーチャー、あちこちで発生するドッグファイト。あらゆるアクションがこれでもかと詰め込まれており、息つく暇もないほどだ。
それを映像面で支えるのが、多種多様な技術。VFXのような現代的な技術に加え、アニマトロニクス、パペット、ストップモーションといった古典的な技術も活用している。ストップモーションのシーンは特に私のお気に入りだ。興味がない人には伝わらないだろうが、あのストップモーション特有の動きがたまらない。新旧の技術を見事に使い分けていることで、古き良き、しかし決して古臭いわけではない映像が完成している。
ただ、強いて言うとすれば、もう一歩だけ革新的なデザインがあればさらに良かったと感じる。ナル・ハッタやシャカリの風景は悪くはない。しかし、掘り下げたくなるような広がりを感じるほどの新鮮さはなかった。特にシャカリはあまりにも禁酒法時代のアメリカを重ね過ぎではないか。また、ある宇宙船はスター・ウォーズとしては新鮮だったが、SF全体で見ると使い古されたデザインではあった。この革新性の足りなさは、シークエル三部作以降のスター・ウォーズ全体に言える課題ではある。
ルドウィグ・ゴランソンの音楽はやはりピカイチだ。民族音楽のみならず電子音楽も取り入れた本作の音楽は、スター・ウォーズにまったく新しい雰囲気をもたらしている。エンドクレジットでは意外で印象的なアレンジもあった。
物語面を見ると、ストーリーアーク、キャラアークはあまりにも弱すぎるのではと感じた。本作の内容はスター・ウォーズのストーリーという大きな流れに強く寄与することはない。「銀河の運命はこの二人に託された」という宣伝文句を鵜呑みにすると、物足りないと感じてしまうだろう。私個人としてはあらすじからストーリーアークの弱さはある程度予想して鑑賞したのでそこまでこの点は気にならなかった。
しかし、キャラアークの弱さは想定外であった。銀河だけではなく、ディン・ジャリン、グローグーにとっても、この物語は本当に必要だったのかとすら思わせる弱さだった。もちろん、ディンとグローグーの掛け合いや、二人で危機を切り抜ける楽しさは健在で、二人の関係性に進展もある。しかし、その進展は若干であり、映画一本を使うほどではない印象を受けた。『マンダロリアン』シリーズで既に成長を重ねてきたディン・ジャリンに本作でゼロから成長アークを作ることは困難だったこと、結果としてグローグーという喋らないキャラに成長アークを託したことが主な原因だったように見受けられた。物語に起伏を作るためにキャラアークをやや強引に作ろうとして失敗しているように思えてしまった。
その代わりにキャラアークを担うのは、ジャバの息子ロッタである。ロッタのキャラにはしっかりジャバの息子としてのアークが存在しており、起伏が弱い本作を支えている。『クローン・ウォーズ』での出来事を念頭に、あの“ぷくぷく”ちゃんからの成長ぶりを見ると、長年追ってきたファンとしては感動すら覚える。だが、全体の弱さを補うほどの強さはない。
そして、アークの話にも関連するが、物語がどこに進んでいるのかは非常にわかりにくい。何と戦っているのか?次はどこに進むのか?これがなかなか見通せず、観客は次々とアクションへ放り込まれていく。これは物語を重視している人には短所だろう。
良くも悪くも、本作からは「テレビスペシャル」や「テレビ映画」に近い印象を受ける。物語やキャラを大きく進展させることよりも、ワクワクするアクションや可愛いシーンを連続させることを重視している。そして実際に、アクションの密度や画面のスケールは映画館向けに大きく強化されており、その点は成功している。だからこそ、この映画は映画館で観るべきだと思う。家の小さい画面で観るのと、映画館の大スクリーンで観るのとでは体験がまったく異なり、前者では印象が悪い方向に引っ張られてしまいそうだ。
本作『マンダロリアン・アンド・グローグー』の物語面を見ると、スター・ウォーズの中でもかなり「挑戦してない」作品だとは思う。革新性は弱く、『マンダロリアン』でやってきたことの楽しいアクションや可愛いシーンだけを詰め込み、商品化した印象だ。そこには、本作を新規層やライト層の入り口にし、スター・ウォーズを再び映画館のビッグコンテンツにしたいという思惑もあるだろう。スター・ウォーズも結局は商品だ。売れれば、ファンを増やせれば、それが正解となる。うるさい批評家ぶった、私のようなオタクの戯言はそこまで気にしなくてよい。
