- 第9話「奇妙な同盟(Strange Allies)」
- 第10話「暗黒卿(The Dark Lord)」
- 評価:★9.6(第9話)、★9.8(第10話)(10点満点、IMDbユーザー評価)
- 前回→第7話・第8話
ダース・ヴェイダーの重厚感は本作では異質で、それゆえに大きな存在感があった。モールは人を切り捨てる計算ができる一方で、完全に冷徹な人間とは描かれておらず、モールの個性も際立った。モール、デヴォン、ライリーの三者ともシーズン1で多くを失っており、シーズン2では新たなものを得ていく流れになるだろう。
あらすじ
帝国軍の罠により、イーコ=ディオ・ダキとデヴォン・イザラの師弟一行は、惑星ジャニックスからの脱出の糸口を失ってしまう。一方、モールはクリムゾン・ドーンの幹部であるドライデン・ヴォスからの申し出で合流することとなり、デヴォンにも合流を申し出る。合流した一行は一時的な共闘関係となり、スパイボットらの多大な犠牲を出しながらもファースト・ブラザーのマーロックとイレブンス・ブラザー率いる帝国軍の追跡を振り切る。
しかし、その行く手にシスの暗黒卿ダース・ヴェイダーが現れる。モールの副官ルック・キャストも倒され、ダキ、デヴォン、モールの三人がかりでもヴェイダーには敵わない。さらにマーロック、イレブンス・ブラザー、帝国軍も追跡に加わり、一行は次第に追い詰められていく。義足の故障により万全ではないモールは、ダキを捨て駒にする。ダキはヴェイダーに殺され、それを目にしたデヴォンは怒りに身を任せ、暗黒面へと近づいてしまう。
一方、帝国軍と交戦していたブランダー・ローソンは、脱出の道を切り拓くため、相棒のトゥー=ブーツに息子ライリー・ローソンを託し、自らを犠牲にする。大人たちの犠牲によって、一行はついに脱出に成功した。船の中でデヴォンは、モールから受け取ったライトセーバーを握りしめる。そして、モールの弟子となる申し出を受け入れるのだった・・・
レビュー
『モール/シャドウ・ロード』もとうとう完結! 合計10話はスター・ウォーズのアニメシリーズとしては短いながらも、非常に満足感の大きい作品だった。特に第9話・第10話で多くのファンを興奮させたのは、やはりダース・ヴェイダーの登場だろう。何人ものライトセーバー使いが登場してきた本作においても、ヴェイダーは圧倒的な存在感を見せつけた。モールをはじめ、ダキ、デヴォン、マロック、イレブンス・ブラザーと俊敏に動くキャラクターが多い中、ヴェイダーはゆったりとした最低限の動きで、しかし重い一撃を放つ。モールたちが力を合わせたフォース・プッシュでも押し返すことができない。その重厚感は、本作の中でも異質と言えるほど際立っていた。霧の中や壁の向こうからぬっと現れ、一言も発さず、規則的な呼吸音だけが聞こえる。その描写は悪役というより、ホラー作品の怪物のようだった。
モールとの会話がなかったのは少し残念だったが、そこはシーズン2以降で描かれるのかもしれない。モールは最初、ヴェイダーが何者か分かっていなかったようだが、ダキが「シスの暗黒卿」だと指摘したことで、その正体がアナキンだと勘づいただろう。『クローン・ウォーズ』シーズン7時点で、すでにシディアスがアナキンを狙っていることを知っていたモールは、師の目標が達成されたことに気づいたに違いない。モールもヴェイダーもシディアスの弟子であり、そしてシディアスにすべてを奪われた存在である。その共通点を掘り下げる会話が今後あるなら、かなり面白いものになりそうだ。
最後の戦いで、モールはダキをフォースで押し出し、囮にして自らは逃れる。師であるダキがヴェイダーに殺されたことで、デヴォンは怒りに身を任せ、その怒りを使ってイレブンス・ブラザー、そしてヴェイダーに襲いかかる。結果として、デヴォンはヴェイダーに復讐する力を得るため、モールの弟子になることを承諾する。こうしてモールは、ダキの死を利用し、同じく「シスへの復讐」という目的を持つデヴォンを手に入れることに成功した。ダキはデヴォンに対し、モールが助ける動機が「誰のためか」に気をつけるよう促していた。結局、モールがダキを一時的に助けたのも、最終的には「モール自身のため」だったのだ。
ただ、モールが最初から計算づくでダキを見捨てたというよりは、追い詰められた状況の中でダキを利用する選択をした、と見る方が自然だろう。二人はヴェイダーに押されながらも、しばらくは互いを支え合って戦っていた。一度膝をついた後、モールはダキとアイコンタクトを取り、一緒に突撃しようとする。しかし、その直後に義足が火花を散らす。モールは義足を確認し、ダキを見る。デヴォンの声が聞こえる。目線を泳がせ、逡巡する。そして、ダキを見捨てる選択をした。そこには狡猾さだけでなく、追い詰められた者が一瞬で下した、モールらしい生存の判断も見える。
モールは必ずしも、部下や周囲の人間を単なる道具として軽視しているわけではない。マロックとの対決中、モールは彼に告げる。「お前はかつての俺のようにダース・シディアスのコマに過ぎない」。その直後、仲間であるドロイドのスパイボットを破壊されると、モールは明らかに感情を揺さぶられる。彼にとってスパイボットは、単なるコマではなかったのだろう。ここには、シディアスとの対比としてのモールらしさが垣間見える。第7話・第8話でも、彼には失ったものへの想い、自分の弱さへの嫌悪、そしてシディアスにもう誰も奪わせないという覚悟が描かれていた。敬意を払うべきジェダイ・マスターであるダキが、シディアスのコマであるヴェイダーによって命を奪われることを、モールが好ましく思っているわけではないはずだ。それでも必要なら利用する。モールの根底にあるのは、単なる狡猾さだけではない。何としても復讐に突き進む、泥臭く硬い意志である。そして、これは鎧に人間性を閉じ込められたダース・ヴェイダーとの違いでもある。
一方で、その泥臭さと表裏一体のものとして、モールの無鉄砲さも目についた。「シディアスを倒す偉大な計画がある」と語りながら、デヴォンに執着した結果、自らの配下をすべて失うことになった。信頼できたはずの兄弟であるナイトブラザー、自分に忠誠を誓っていたマンダロリアン、そしてスパイボットまでも失い、彼はほとんどゼロからの出発を強いられる。あのタイミングでドライデン・ヴォスから声がかからなければ、モールは帝国に捕まり、すべての計画が無に帰していた可能性すらある。自分の感情や執着を度外視して、冷徹な戦略家にはなれない。それがモールの強みでもあり、弱みでもあり、個性なのだろう。
配下をすべて失ったことで、マンダロアの支配者としての、そして『クローン・ウォーズ』で描かれてきたモール像は、ここで一つの終わりを迎えたと言える。ゼロから再出発し、ここからは『ハン・ソロ』で描かれたような犯罪シンジケートのボスへとなっていく。ドライデン・ヴォスは今のところモールを利用しようとしている立場だが、最終的にはモールに服従することになる。モールの物語の新章が始まったのだ。
デヴォンは、何者かでありたいという個人的な欲求を抱えながらも、マスター・ダキへの忠誠心からモールになびくことはなかった。しかし、ダキへの想いが強いからこそ、彼女はその死に怒り、暗黒面の道へと足を踏み入れる。ダキはデヴォンの命を守ることはできたが、その後の人生まで守ることはできなかった。ブランダー・ローソン警部もまた、息子ライリーの命は守った。しかし、その心には大きな傷を残すことになった(が、ローソンには明確な死の描写がないため、生きている可能性もある)。ダキもローソンも、失敗した大人たちであり、彼らはその命をもって贖い、次の世代の命をつないだ。しかし、帝国が支配するこの暗い時代に、自分たちの想いや希望まで託すことができたかは定かではない。帝国に家族を奪われたという共通点を持つデヴォンとライリーが、今後どのような関係性になるのかも気になるところだ。デヴォンは怒りによってモールへ近づき、ライリーは父の犠牲によって帝国への憎しみを抱えることになる。二人が再会することがあれば、それは互いの傷を映し合う関係になるかもしれないし、逆にまったく違う道を選んだ者同士の対比になるかもしれない。
終わってみると、シーズン1はまだまだ序章に過ぎないという感覚が強い。モールはそれまでの部下を失い、デヴォンも師を失い、ライリーも親と故郷を失った。シーズン2からは、それぞれが新しい何かを得ていく流れとなり、物語はさらに加速していくだろう。『ハン・ソロ』や『反乱者たち』とどうつながるのか。デヴォンは暗黒面に完全に堕ちるのか。シディアスとヴェイダー率いる帝国はどう動くのか。シーズン2への期待と妄想は膨らむばかりだ。
海外の反応
「ヴェイダーはまたしても自分が止めようのない殺戮マシーンだと証明してしまった」
「まさかヴェイダーが丸々1話出てくるとは思わなかった。第10話の最後10分くらいがせいぜいだと思ってた」
「いやマジで、ヴェイダーが最終話全部持っていった。ずっと口開きっぱなしだった。
完全にホラー映画から出てきたみたいな動きしてた」
「ヴェイダー、次は砂じゃなくて落石のことをめちゃくちゃ嫌いになってそう」
「これで、モールが"ヴェイダーには一人では立ち向かえない"と『反乱者たち』で言っていた理由が分かったな」
「不思議なくらい、ヴェイダーに一言も喋らせなかったな。ヴェイダーとモールの会話は絶対面白かったと思うんだけど」
「これは賛否あるかもしれないけど、ヴェイダー対モール戦はちょっと残念だった。
映像が悪いわけじゃない。むしろすごく良かった。でも、ヴェイダーとモールの会話が何かしらあると思ってたんだよね。
あと、『反乱者たち』でモールがヴェイダーを恐れていたことを考えると、ヴェイダーの勝ち方はもっと圧倒的で無慈悲な感じになると思ってた。
デヴォンが今度はヴェイダーへの復讐を望んでるし、二度目のヴェイダー対モール戦があるのかも」
「この2話はスター・ウォーズアニメの最高峰に並ぶ出来だった。アニメーションのクオリティは言うまでもないけど、ここでのヴェイダーの描き方も本当に良かった。ヴェイダーって、本来ああいう“無言の悪魔”みたいな存在なのに、そういう姿は意外とあまり見られない。だから、名もなきジェダイたちを相手に、会話する価値すら与えず処理していくのはすごく良かった。
とはいえ、ダキが一撃を入れて、ヴェイダーに本気を出させたところもかなり好き。
デヴォンが怒りに飲まれそうになるのをモールが止める場面も最高だった」
「これで『ルック・キャスト=アーマラー』説は終わったっぽいな」
「モールは弟子ひとりのためにチーム全員を差し出したようなもんじゃん。
この中だとルック・キャストが一番かわいそう。かなり面白そうなキャラだったし、もっと掘り下げてほしかった。
シーズン2は時間飛ぶのかな。それともシーズン1の直後から始まるんだろうか」
「ダキの死はだいたい予想通りだったな。
モールは助けるチャンスがあったのに、デヴォンのマスターの座を奪うために、あえて死なせた感じ。
ルック・キャストがあっさり退場したのはちょっと悲しい。モールの仲間のうち何人かはシーズン2まで残ると思ってたけど、第9話でほぼ一掃されたね(笑)
それとローソンは明らかに生きてるよね?肩を一発撃たれて、そのあと足引きずって去っただけだし。シーズン2でどこかの牢獄にいるのを見ることになると思う」
「ローソンはまだ死んでないと思う。
彼はモールがダキに何をしたか見てるし、今後デヴォンに、あそこで本当は何が起きたのかを話してくれる人が必要になるはず。それを知ったら、デヴォンはモールを見限るんじゃないかな」
「なんで尋問官たちは、ライトセーバーのヘリコプター機能であの酸の穴を飛び越えなかったんだ?」
「正直、今後はアニメ作品だけでも全然いい。街の美術がとにかく凄まじかった」
豆知識
ドライデン・ヴォス
ドライデン・ヴォスは、映画『ハン・ソロ』に登場した悪役であり、同作ではクリムゾン・ドーンの表向きのトップ。『モール/シャドウ・ロード』では、モールの脱出を手助けする代わりに、現在のクリムゾン・ドーンの首領を殺すよう要求する。この時点のドライデンはクリムゾン・ドーンの幹部で、モールを利用して現在の首領を追い落とそうとしているようだ。『ハン・ソロ』ではドライデンはモールに服従しており、その過程はシーズン2で描かれることになりそうだ。
シャドウ・ロード
ダキはモールを指して「シャドウ・ロードには用心しなければならない」と語る。劇中でモールが「シャドウ・ロード」と呼ばれたのは、これが初めてである。
「運命の闘い」
第10話のタイトルカードでは、『EP1/ファントム・メナス』の楽曲「運命の闘い」が流れる。
デヴォンとダース・タロン
第10話でデヴォンはモールの弟子になる道を歩む。これはルーカスが構想していたエピソード7案に登場するモールの弟子ダース・タロンに重なる。どちらも女性トワイレックであり、ファンは当初からデヴォンが正史版のダース・タロンになるのではと予想していた。
空飛ぶ尋問官
『反乱者たち』では、尋問官がライトセーバーを使って空を飛ぶ描写があった。酸の池に阻まれる場面や落ちていくマロックの場面など今回は、この空飛ぶライトセーバーがあれば、戦況が大きく変わるシーンが多かった。シーズン2以降で、ライトセーバーを改良し空を飛ぶ尋問官が登場する可能性はありそうだ。
『フォース・アンリーシュド』
Sam Witwer’s Starkiller and Maul slicing an AT-ST in half in THE FORCE UNLEASHED and MAUL - SHADOW LORD pic.twitter.com/yWo7eK4NMW
— Star Wars Holocron (@sw_holocron) March 18, 2026
ライトセーバーで帝国軍のウォーカーを破壊するという描写は、ゲーム『フォース・アンリーシュド』に登場していた描写を思い出せる。また、今回のモールと同様に、同作の続編では主人公のスターキラーが二刀流のライトセーバーを使用している。モールもスターキラーもサム・ウィットワーが声優という共通点がある。
ホラー映画からの影響
本作ではホラー映画からの影響が引き続き見られる。ダース・ヴェイダーの登場場面は、『13日の金曜日』のジェイソン・ボーヒーズや、『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズから強い影響を受けている。
ルック・キャストの最期
脚本の初期稿では、ルック・キャストの死はより直接的で生々しいものとして描かれていた。しかし最終的には、ヴェイダーがライトセーバーを起動する前に、霧の暗闇の中へ引きずり込まれる形にした方が、暗黒卿の登場としてより効果的だと判断され現在の形になった。
『侵略の惑星』へのオマージュ
ヴェイダーが霧の中から姿を現す場面は、コンセプトアーティストのラルフ・マクウォーリーが手がけた、アラン・ディーン・フォスターによるスター・ウォーズ初のスピンオフ小説『侵略の惑星』の表紙へのオマージュでもある。
- 前回→第7話・第8話
【『モール/シャドウ・ロード』シーズン1】
第9話・第10話








