- 第1話「暗黒の報復(The Dark Revenge)」
- 第2話「邪悪な企み(Sinister Schemes)」
- 評価: 第1話★8.4 第2話★8.1/10点満点(IMDbユーザー評価)
- 次回→第3話・第4話
第1話・第2話は、モールというキャラクターを改めて一人の主人公として描き直す、完成度の高い導入となっていた。とりわけ映像面は非常に優れており、ライティングや人物の細かな演技表現は、これまでのスター・ウォーズアニメでも頭一つ抜けている。
本作が興味深いのは、復讐に生きるモールと、進むべき道を見失った元ジェダイの少女デヴォンを、「自分は何者なのか」「何のために力を持つのか」という共通の問いで結び付けている点だ。人生の意味や居場所を求める二人が、今後どのように関わり合い、影響を及ぼしていくのかが大きな見どころになるだろう。
一方で物語の構造自体はまだ王道的な導入に留まっており、今後どこまで予想を超える展開や感情の揺さぶりを用意できるかが、本作の評価を左右する鍵になりそうだ。
あらすじ
惑星ジャニックスを舞台に、かつてシスの暗黒卿だったモールは、自らが築き上げた犯罪シンジケート「シャドウ・コレクティヴ」を裏切った者たちへの復讐を開始する。彼の命令の下、マンダロリアンのルック・キャスト、ドロイドのスパイボット、ナイトブラザーのイカロスとスコーンたちは犯罪王ニコ・ディーミスの銀行を襲撃する。モールの思惑通りにディーミスとそのライバルであるルーティ・ヴァリオは仲違いしディーミスは命を落とす。しかし、ヴァリオの身柄は地元警察のブランダー・ローソン警部によって確保され、モールは決定的な成果を逃してしまう。ドロイド補佐官トゥー=ブーツと捜査にあたるローソンは、背後にモールの存在を察知するが、帝国への不信感からその情報を報告しようとはしなかった。
ヴァリオを奪還すべく、モールは警察署への急襲を敢行する。だが彼の狙いはそれだけではない。警察署には、元ジェダイの少女デヴォン・イザラが万引きの現行犯として勾留されていた。モールは彼女を新たな弟子候補として見定め、ヴァリオと共に攫い、警察とデヴォンの師であるマスター・ダキの追跡を振り切る。モールは一方ではヴァリオを利用しパイク・シンジケートへの復讐計画を進め、他方ではデヴォンを言葉巧みに誘惑する。モールの計画はまだ始まったばかりだ・・・
レビュー
モールが再び帰ってきた!『クローン・ウォーズ』で劇的な復活を遂げて以降、『反乱者たち』、『ハン・ソロ』にも登場してきたモールが本作ではとうとう主人公に。第1話と第2話を見る限り、本作は犯罪シンジケートのボスである『ハン・ソロ』のモール、弟子を求める孤独なダークサイダーとしての『反乱者たち』のモールというやや乖離していた2つのモール像の架け橋となり、両者を融合する作品となりそうだ。第1話はジャニックスという舞台とモールの計画を提示する導入回であり、第2話はデヴォンをめぐる誘惑と選択を本格化させる回だった。
今回の出来栄えには驚かされた。惑星ジャニックスは、これまでのスター・ウォーズアニメの中でもとりわけ生活感が強い。中華ヌードルを食べる警察官は『キャシアン・アンドー』的な生活感を連想させ、スター・ウォーズ世界をより重厚なものにした同作からの影響を感じさせる。また、キャラの演技も今まで以上に繊細だった。特にモールはデヴォンに対しては時に視線を外して、時に射貫くような視線を向け、言葉だけではなくしぐさや視線でも彼女を誘惑する。
アクションは言うまでもない。ド派手な爆発、縦横無尽に動き回るモールやマンダロリアンはアニメという形式の利点がよく出ている。特に警察署襲撃では、モールがただ力でねじ伏せるのではなく、闇の中から不規則に姿を現し、予測しにくい動きで襲いかかることで、怪物的な恐怖として演出されていたのが印象的だった。そして、最も感心したのは光の使い方。夜の街並みの光は時に自然で時に不自然で、だからこそ都会の街並みにふさわしかった。この光を上手く使えているからこそ、ライトセーバーの荒々しさやデヴォンに落ちるモールの影が自然かつ大きなインパクトを持ったものに仕上がっている。
モールはかつての自分が築き上げた犯罪シンジケート、シャドウ・コレクティヴを裏切った者たちへの復讐を誓っている。ディーミスやヴァリオに加え、パイク・シンジケート、クリムゾン・ドーンはモールが不在だった1年の間に彼を裏切り、その不在に付け込み私腹を肥やしていた。『クローン・ウォーズ』S7では彼らはまだモールに忠誠を誓っていたが、帝国誕生により状況は大きく変わっている。このモールの不在の理由は描かれるのだろうか。また、意外だったのはクリムゾン・ドーンも裏切ったという設定。『ハン・ソロ』でモールの組織として登場したクリムゾン・ドーンは彼自身が創設した組織だと思われていた。本作は、モールがいかにしてクリムゾン・ドーンを手に入れるかという話になりそうだ。
そして、モールが復讐を誓っている対象は犯罪組織だけではない。かつての師である皇帝パルパティーン、ダース・シディアスにも復讐しようと計画している。そのために彼はさらなる力を、弟子を求めている。シディアスはモールを見捨て、彼の兄弟や母、故郷を奪った。復讐を求めるのは理解できる。しかし、彼の感情は怒りだけではないのではないか。彼には、銀河の中心から脱落し、忘れ去られていくことへの恐怖があるのかもしれない。だから、命の危険を冒してでも再び表舞台に登場する。自分自身が取るに足らない存在だとは思いたくない。モールはこの帝国の時代を「無法の時代」だと呼んでいたが、彼自身もまた無法を求め、それをもたらそうとしている。彼はその無法の中に、自らの居場所と存在意義を見出そうとしている。
存在意義を求めているように見える人物がもう一人いる。それは元ジェダイの少女デヴォン・イザラだ。彼女は、ジェダイであろうとし盗みを否定し続けるマスター・ダキに反発し彼のために盗みを働いたことで、その庇護下から外れる。ダキは一方で盗みを否定しデヴォンよりも人々を優先するというジェダイらしい高潔さがある。しかし、もう一方で警察が駆け付ける事件を「我々には関係がない」と静観しようとする。隠れなければならない状況でもジェダイを辞めることはないダキの姿勢は成熟とも言えるが、デヴォンから見れば力があるのに何もしない弱気の大人の論理にしか映らないだろう。何のためにジェダイであるのか。何のために特別な力を持ち、厳しい訓練を積み、高い倫理を課されるのか。彼女の中にはそんな想いがあるのだろう。だからこそ、自身の存在意義を求め、同じような欲求を持つモールに心を動かされてしまうのではないか。
第2話のラストシーンで彼女はフォースを使い独房から脱出する。ダキは騒ぎを起こさないために独房に入るようにデヴォンに促した。モールは力を解放すればいつでも出られると促した。その瞬間の彼女が選んだのは、ダキの静観ではなく、モールの示した「力」の側だった。囚人であるという無力感から解放され、自分が選べる力があることを自覚する。デヴォンはこのままモールの示す力に惹かれ自らの居場所を求めるのか、それともダキの示す高潔なジェダイの倫理に戻るのか。
少し残念だった点で言えば、予想を超える展開というのは少なかったところか。モールの動きやデヴォンの闇落ちへの布石は予告編からも十分に予想できるものであった。また、働きづめの父親ローソン警部と息子の確執というのはさんざんドラマで繰り返されてきた類型だ。それをスター・ウォーズで描いた意義はあるものの、今シーズン中の更なる進化を期待したいところだ。ローソンが情報屋の女性とねんごろな関係にある部分や彼が帝国にモールを隠蔽するという判断で部下を数多く死なせている点も絡んでくるだろう。モールとダキの中間にいる、「守ろうとはするが導くことはできない大人」という立ち位置が、今後どう活かされるかに期待したい。
また、ルック・キャストをはじめとしたマンダロリアンたちにももう少し立体感が欲しいと感じた。ドラマ『マンダロリアン』でその文化や宗教が深掘りされてきたからこそ、ならず者モールの銀行強盗を手伝うモノトーンな兵士として描かれていたのは味気なく感じた。ルック・キャスト(ルック・カスト)が後のアーマラーではないかという説が実現するところまでは望まなくても、『マンダロリアン』と合流する要素があるとなお嬉しい。
総じて、満足感の高い第1話、第2話であった。ダークで重厚感のある本作は、名作が多いスター・ウォーズアニメの中でも異彩を放っており新鮮な気持ちで楽しめる。復讐に燃えるモールと犯罪シンジケートの争い、その争いに巻き込まれつつも父親として生きなければならないローソン警部。そういう犯罪スリラーの物語の中で、どのように銀河帝国や若きジェダイのデヴォンが絡んでくるのか。次回以降も目が離せない。
海外の反応
海外では、とくに映像表現とジャニックスの街の空気感、そしてモールのビジュアル・ストーリーテリングの巧さが高く評価されていた。一方で、物語面では導入回らしさが強く、今後の展開に期待する声も見られる。
「めちゃくちゃ楽しめた!
新キャラがどれも生き生きしていて、特にデヴォンとローソン警部が印象的。ドロイドたちも楽しくて、なかでもスパイボットは最高。アニメーションは本当に美しいし、惑星ジャニックスは“スター・ウォーズ版ゴッサム”みたいな雰囲気がある。モールの“影”を繰り返し使うビジュアルモチーフも大好き。ストーリーテリングの流れと勢いが今のところ抜群だ」
「第1話でマフィアのボスの1人を殺して、もう1人を投獄したのには嬉しい驚きがあった。
正直、帝国が出てくるまで、シーズンの大半を使ってモールが次々ギャングを倒していく話になるんじゃないかと少し不安だったけど、この展開を見る限り、無駄に引き延ばさず、最初から語るべき物語をきちんと描こうとしているのが伝わってきた。」
「みんな映像のクオリティ向上を挙げてるけど、個人的には演出、画面構図、ライティング設計、デジタル撮影的な見せ方の巧さに感心した。
モールがヴァリオを脅す場面みたいな細かいところまで、本当に賢くて無駄がない。完璧なビジュアル・ストーリーテリングだよ。スター・ウォーズのアニメとしては明確に一段上に行った作品。圧倒された」
「個人的には『バッド・バッチ』の初回の方がインパクトは強かったかな。
今回も布石ははっきりしてるし完成度は高いけど、アニメーション以外の部分で“度肝を抜かれた”とまではいかなかった。『バッド・バッチ』は最初からオーダー66という大事件があったけど、モールにとってのその大転換点はすでに『クローン・ウォーズ』のラストで描かれているからね。それに今回の締めは、デヴォンが脱出するという、比較的前向きで希望のある終わり方だった(次回で多少は裏切られる気もするけど)」
「モールのドロイドは最高。『トランスフォーマー』(2007年版)のフレンジーを強烈に思い出した」
「警察署が襲撃されて、デヴォンが独房に入ってる展開は、『ターミネーター1』でカイル・リースが手錠をかけられてる中、T-800が警官をなぎ倒していくシーンを思い出した」
「アクションシーンや背景に使われているペインティング調の画風がすごくいい。
これまでのスター・ウォーズアニメ作品と、はっきり差別化できるビジュアルになっているのが気に入ってる」
「スター・ウォーズには嬉々としてサディスティックなことをするドロイドがたくさんいるけど、スパイボットはその中でも特に“やる気”に満ちてる存在として、早くも強い印象を残してる」
「……もしかしてこれこそ、俺が昔からずっと見たかったスター・ウォーズ版の警察スリラーなんじゃないか?」
豆知識
ジャニックス
ジャニックスの都市は、バットマンのゴッサム・シティから部分的に着想を得ている。広大な大都市である一方、暗い裏側を抱えた街として描かれている。
ISB
トゥーブーツは、モールに関するファイルがISBによって機密扱いされていると述べている。ISBは帝国保安局のことで、『キャシアン・アンドー』でも重要な役割を果たした帝国の機関だ。
演じるサム
モール役のサム・ウィットワーは、シリーズのアーティストに向けた参考用パフォーマンスの中でモールの模様を再現するため、自身の顔に線を引いた。ブラッド・ラウ監督は、「アニメーションにできるだけ多くのニュアンスを取り入れたかった」と語っている。
カフ
ブランダー・ローソン警部が飲んでいるのは「カフ」。スター・ウォーズの世界におけるコーヒーのような飲み物だ。また、彼の手元や近くには常にカフカップがあるのがギャグになっており、自宅や職場には飲み終えたカップがいくつも転がっているのが確認できる。
ハット語
ダキが市民に助けを求めると、その人物は「エ・チュ・タ」と返す。これは『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で初めて登場した、ハット語の失礼なフレーズだ。
- 次回→第3話・第4話
【『モール/シャドウ・ロード』シーズン1】
第1話・第2話








