- 第7話「忘却への呼び声(Call to Oblivion)」
- 第8話「忍び寄る恐怖(The Creeping Fear)」
- 評価:★8.8(第7話)、★8.8(第8話)(10点満点、IMDbユーザー評価)
- 前回→第5話・第6話
- 次回→第9話・第10話
今回はモールの内面が掘り下げられた回だった。シディアスへの復讐に燃える彼の内面には、彼なりの過去や傷、そして覚悟があり、ダークヒーローとしての人間味を増す描写だった。一方で、デヴォンはモールに完全に従わず、ダキとの関係性も良好だ。ダキの行動がデヴォンの明暗を分けることになりそうだ。また、トゥー=ブーツが規則を守らない帝国を見限るという展開は、規則を軽視する独裁国家の構造悪を批判している。
あらすじ
モールの加勢によって帝国の追跡を逃れたデヴォン・イザラとライリー・ローソン。それでもデヴォンはモールを信用せず、その場を離れようとする。しかし、タイミングが悪く帝国が介入し、ライリーは連れ去られてしまう。ブランダー・ローソン警部とデヴォンはライリー救出に動き、マスターのイーコ=ディオ・ダキもしぶしぶ二人に同行する。一方、モール一行は船での脱出を図るが、ファースト・ブラザーのマロック、そしてイレブンス・ブラザーによる猛追を受ける。ルック・キャストをはじめとするモール一行は懸命に応戦するが、報酬が出ないことに不満を抱いたマンダロリアンの離反で船を失ったうえ、ナイトブラザーのスコーンも戦いの中で命を落とす。モール自身も追い詰められ、義足に重大な損傷を負ってしまう。
暗いパイプの中へ逃れたモールは、そこで過去を思い出す。ダース・シディアスの弟子となったこと。オビ=ワンに敗れ、居場所を失ったこと。そして、兄弟サヴァージ・オプレスをシディアスに殺されたこと。二度と同じことを繰り返させないためにモールは決意を新たに仲間たちと合流し、再びシディアス打倒への道を歩み始める。そこへ、クリムゾン・ドーンのドライデン・ヴォスが接触してくる。一方、ローソン警部は息子を救うため、トゥー=ブーツに連絡を取る。帝国が規則を守る存在ではないと気づいたトゥー=ブーツは、ライリーを拘置所から連れ出し、ローソンたちと共に逃亡者となる。一行は盗んだスピーダーで追跡を振り切り、ローソンの友人リーナ・スルを頼る。しかし、それは帝国が仕掛けた罠だった……。
レビュー
第7話・第8話も、相変わらずの面白さとレベルの高さだった。特に今回は、水の表現の素晴らしさが印象に残る。本来、水は3Dアニメーションが苦手とする分野だったはずだが、今や実写と見分けがつかないほどの質感に達している。自然に落ちていく滝、流れていく水。それらを自然に見せることがどれだけ難しいか。『クローン・ウォーズ』からスター・ウォーズの3Dアニメーションを追ってきた読者諸氏であれば、同じような感動を抱いただろう。特に、尋問官の二人が滝を潜り抜けて現れる場面で、ライトセーバーから蒸気が上がっている描写には、思わず「カッコいい」と独り言が漏れてしまった。
この水の描写はアクションだけでなく、モールの内面描写にも大いに活かされている。モールは水面に映る自分を見て、「お前なんか嫌いだ」と手で払おうとする。しかし、当然ながら水面から自分の姿が消えるわけではない。水面に映る自分は、攻撃しても斬り捨てられない。敵なら倒せるが、自分自身への嫌悪だけは力で処理できない。この水面の描写はそんなモールの弱さを視覚化している。続く場面で、モールはビジョンの中で過去を思い出す。幼い頃にシディアスの弟子とされ、恐怖を植え付けられたこと。オビ=ワンに敗れ、居場所を失ったこと。そして、今度こそ自分を助けてくれた兄弟サヴァージ・オプレスをシディアスに殺されたこと。本作でも何度も繰り返されてきた通り、モールは復讐を果たそうとしている。だが、倒れた彼が再び水面を覗き込むと、そこにいたのは少年時代のモールだった。水が涙のように頬を伝う中、モールは謝り続ける「彼」をようやく受け入れ、語りかける。「大丈夫だ。奴にはもう何も壊させない」。
モールが復讐で動いているのは事実だ。だが、彼には少なくとも、かつての自分と同じようにシディアスに壊される者をこれ以上見たくないという思いがある。足を引きずりながら仲間と再合流するモール。その顔には、先ほどまでの弱さや迷いはない。覚悟を持った強い支配者として、再び皆の前に立つ。この描写を見た後では、悪役だったモールに人間味を見出さざるをえない。数々の殺戮を繰り返してきた存在だとしても、その裏には彼なりの痛みと想いがある。『反乱者たち』でルークに帝国打倒の夢を託すようにして死んだモールの姿も、今回の描写を踏まえると、より腑に落ちる。
一方、モールはデヴォンを弟子にすることには未だ苦戦している。前回デヴォンを助けたにもかかわらず、彼女は「帝国を倒すための偉大な計画」には乗ってこない。帝国が襲ってくれば共闘するが、その後も付き従うことはない。モールは帝国打倒という大義や、生き延びるための力という実利を提示しているが、デヴォンはそれだけで動く人間ではないのだろう。今回、マンダロリアンのケブリスの裏切りでも示された通り、実利による忠誠は、実利を与えられなくなった時点で崩壊する。だからこそモールは、デヴォンに対して単なる実利以上のものを与えようとしている。自分の力を何のために使うのか、誰の言葉で自分を定義するのか。モールはその問いを彼女に植え付け、シディアスのような恐怖による支配ではなく、彼女自身の選択として弟子になるよう仕向けている。その芽はすでに芽吹いているはずだ。だが、デヴォンの忠誠はまだマスター・ダキにある。
デヴォンとダキという師弟の関係性は、シリーズを通じて強まっている。今回も、ローソン警部の甘さに突っ込むようダキに頼むデヴォン、デヴォンの合図でスピーダーをガンシップにぶつけるダキというコンビ技を見せてくれた。ジェダイとして戦う危険な状況に置かれることで、師弟の絆が深まっていくというのはなんとも皮肉だ。だが、そのマスター・ダキは今回も株を落としかねない判断を見せる。ライリーが捕まっても、「我々がいなくなれば寛大な処分を望めるかもしれない」として、彼を見捨てようとする。これは、やはりデヴォンを優先するあまりの言動に見える。序盤では多くの市民を助けるために、デヴォンを一時見捨てる選択をした。だが、デヴォンがモールの影響を受けて変わっていくのを目の当たりにし、ダキは徐々に危機感を覚え、同時に自らの中にあるデヴォンへの想いも強めているのではないか。すなわち、ダキ自身も余裕を失っているように思える。また、たびたびダキが「私が」ではなく、「私とパダワンが」約束する、という言い回しをしているのも妙に印象に残る。一見すると、デヴォンを対等な主体として扱っているようにも聞こえる。だが同時に、彼女の意思とは別に、自分の誓いや責任の中へ彼女を巻き込んでいるようにも見える。それとも、自分を犠牲にする覚悟はあるということなのか。来週の最終回で、デヴォンがモールの弟子になるのか否かは、ダキの言動に依る部分も大きいだろう。
今回で描かれたトゥー=ブーツがローソン警部の側へ戻る理由は、「帝国が規則に従わないから」だった。規則を優先する彼の根底を変えることなく、同時に帝国の邪悪さを描く秀逸な設定だと感じた。独裁国家というものは、ルールを曲げる。徐々に、徐々に規則を無視し、力を拡大させる。帝国はまさに、構造としてそのような邪悪さを持っている。また、トゥー=ブーツは今回、大事なことに気づいた。トレードマークのブーツを脱いでいても、ローソン親子の二人は彼をトゥー=ブーツだと気づいた。規則に従っていても、彼の本質が変わることはない。規則よりも優先されるものがある。だからこそ彼は、正しいことを選ぶことができた。彼のアークは、規則に従う補佐官が、初めて規則の外にある信頼や正しさを選ぶという反乱の礎となる物語でもある。
いよいよ次週で最終回。焦点は大きく三つだろう。モールはクリムゾン・ドーンを手に入れ、シディアス打倒の足場を築けるのか。デヴォンはダキのパダワンであり続けるのか、それともモールの弟子となるのか。そして、ローソン親子とトゥー=ブーツは帝国から逃げ延びられるのか。さらに、モールと同じくシディアスの被害者であるダース・ヴェイダーがどう絡むのかも気になる。まだまだ描くべき要素は多い。
海外の反応
「モールが砂嵐の中で、自分の人生で耐えてきたクソみたいな出来事をビジョンとして見るシーンには、今までで一番“人間”としてのモールを感じた」
「尋問官たちがライトセーバーを起動したまま滝を突っ切ってくる場面は、水と蒸気のエフェクトがすごすぎた。『クローン・ウォーズ』シーズン1の頃には、こんなの夢にも思えなかったよ」
「実写は当たり外れあるけど、アニメはスター・ウォーズでもずっと安定して強いコンテンツであり続けてると思う」
「ダキがフォースでスピーダーを船にぶつけるシーン、マジでめちゃくちゃカッコよかった。あそこで流れてた曲もブチ上がる感じで、かなり効いてた」
「今シーズンでモールは少なくとも部分的に『ハン・ソロ』の姿に近づくと思う。脚はかなり壊れてるし、ローブもボロボロ。ドライデン・ヴォスと関係を持つなら、『ハン・ソロ』で身につけていた脚や衣装に置き換わる流れはありそう」
「これ俺の見間違いかもしれないけど、モールが“自分に起きたことを二度と誰にも起こさせない”と誓った時、一瞬だけシス特有の黄色い目じゃなくなってなかった」
「ライリーかわいそうすぎる。家族を元に戻したくて、ボテキンをやりたかっただけなのに、気づいたら尋問官に尋問されてる」
「ようやくモールの心理に踏み込んでくれて、めちゃくちゃ面白い!
ただ、モールがサヴァージとの子ども時代を覚えているっぽいなら、もう一人の兄弟にも触れるのかなぁ。タルジンって、サヴァージにフェラルの首を折らせてたし、ほぼ忘れられたキャラがここで言及されたら面白い」
「何度も言ってるけど、この尋問官たちは映像作品に出てきた中で一番良い尋問官だと思う。ようやくちゃんと怖くて強い。単なるアクションフィギュア枠じゃない。モールの心理描写も最高だった。特にフラッシュバックの場面。このシリーズは傑作。ここ数年のスター・ウォーズ作品で一番良い」
「モールが今でもマンダロアの正統な支配者であることに触れてくれたの、めちゃくちゃ嬉しかった。あと、イカロスの喪失にルックが寄り添うところは普通に胸にきた」
「今回のデヴォンめちゃくちゃ好き。あれは完全に少年兵だし、戦争の生存者だし、めちゃくちゃ強い。しかもアソーカっぽい皮肉っぽさがちょうどいい塩梅で入ってる。運転スキルもヤバい。若くてもジェダイがどれだけ異常に有能なのか見られるのは最高。クローン戦争仕込みの軍事的な動きを、帝国の大群から逃げるためにちゃんと活かしてるのが良い」
「いや、マスター・ダキが最後の2話まで生き残るなんて全然予想してなかった。絶対ビンゴカードに入ってないやつ。でも第9話で退場しそうだけどね、ハハハ!」
「もしこのシリーズでモールとシディアスの対決があるなら、サム・ウィットワーが一人で叫んで高笑いするだけのシーンになるのか(笑)」
豆知識
イレブンス・ブラザー
新たに登場した尋問官、イレブンス・ブラザー。彼は制作内部では「クロウ」という愛称で呼ばれていた。イレブンス・ブラザーは、もともとデイヴ・フィローニが『テイルズ・オブ・ジェダイ』のために作ったキャラクターで、同作にてアソーカ・タノに倒される。そのため、『モール/シャドウ・ロード』の第7話・第8話は、『テイルズ・オブ・ジェダイ』より前の時系列。
クリムゾン・ドーンとドライデン・ヴォス
クリムゾン・ドーンは、シャドウ・コレクティヴ結成時点ではその一員ではなかった。しかし、その後モールはクリムゾン・ドーンおよびドライデン・ヴォスと関係を持っていたことが分かっている。ドライデン・ヴォスは『クローン・ウォーズ』シーズン7「幻影の弟子」にホログラムで登場し、ブラック・サンやパイク・シンジケートの者たちと共にモールから指示を受けていた。
第8話タイトル
第8話のタイトル「The Creeping Fear」は、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の噂された仮題と同じである。また、タイトルカードが表示される場面では、パルパティーンだとすぐに分かる高笑いが聞こえる。
モールのビジョン
モールの過去のビジョンは、新規映像と既存の映像をスモークマシンに投影して作られている。アニメーションと実写的な特殊効果を組み合わせた手法により、夢のような質感が生まれている。
デヴォンに絡む不良三人組
デヴォン・イザラがスピーダーを確保しようとする場面で彼女に絡んでくる不良三人組は、『アメリカン・グラフィティ』のファラオ団に着想を得ている。この三人のエイリアンは、すべてディー・ブラッドリー・ベイカーが演じている。彼はその場で即興のエイリアン語を作り、自分自身と口論する形で収録を行った。
【『モール/シャドウ・ロード』シーズン1】
第7話・第8話









