- 第4話「甘い生活(The Good Life)」
- 第5話「帰還(A Good Turn)」
- 第6話「報われぬ善行(One Good Dead)」
あらすじ
ギャングの蔓延る街で、コルビーとニロは浮浪児として過ごしていた。ゴミを漁ったり、間抜けなドロイドのCBから果物をかすめとったりして何とか命をつないでいる。ギャングのラズロはそんな彼らを見つけ、使える子供だと目をつける。彼らに金を渡して甘い生活を体験させると、彼らが狙う裏カジノの襲撃の手助けをさせる。襲撃はうまくいき、コルビーはラズロたちとともに逃げおおせたが、ニロは保安官たちに捕まってしまう。
数年後、少年となったコルビーはキャド・ベインと名乗っていた。ある日、ラズロはベインの故郷の街へと行くが、保安官に撃たれて殺される。ベインは復讐を誓い街に乗り込むが、そこに居たのは今や保安官助手となったニロだった。ニロはベインを帰して穏便に済まそうとするが、彼の復讐心は収まらず、親しいエイリンが止めようとしても耳を貸さない。彼はかつてカジノ店だったあの場所を爆破すると、保安官をおびき出し彼を決闘で撃ち殺す。だが、決闘の流れ弾でエイリンは負傷した。駆け付けたニロとドロイドに囲まれ、負傷したエイリンを抱えながらもベインはまだ戦うつもりだった。だが、エイリンがベインの武器を奪い、彼は捕まってしまう。
さらに時がたち、街は平和になっていた。だが、ベインの仲間であるヴァク・ラコとテイ・グラティが空港に現れる。どうやら出所したベインを待っているようだ。市長はニロにドロイドを差し向けて対処すべき、ニロ自身は身を隠すべきと助言するが、彼は血を流さず穏便に済まそうとする。ニロはエイリンと結婚し、息子アイザックを育てていた。だが、エイリンは2年前に亡くなっていた。そのことを知ればベインは激怒するだろう。保安官助手のヴァンスは恐れおののき、アイザックを放って逃げ出してしまった。ニロは一人でベインと対峙しようとするが、帰したはずのアイザックが戻ってきてしまった。アイザックの目の前で戦いは始まり、ニロはベインとの決闘で撃たれてしまう。ベインはエイリンを含めすべてを奪ったとニロを責めるが、彼はすべてではないと語る。そう語った彼の瞳の先にはアイザックが・・・。ベインはその真意に気づくが、すでに遅すぎた。今度こそすべてを失った彼は一人街を離れる。
海外の反応
「キャド・ベインの本名はコルビーだって!?まさかCBから名前を取ってキャド・ベイン(Cad Bane)にしたってこと?」
「第6話の最後のどんでん返しはとにかくすごかった。それを明言せずに演技で示すのが素晴らしい。」
「キャド・ベインのエピソードは本当にすばらしかったね。アイザックが彼の息子だなんて・・・。最高だった。3話全体でみると陳腐にも見えたけど、完璧なストーリーテリングだった。ボバ・フェットVSキャド・ベインの戦いを『クローン・ウォーズ』で描けなかったのを残念がっていることも伝わってきた」
「善人は報われない。悪人がすべてを悟ったときには遅すぎた。キャド・ベインのストーリーは救いがないね」
レビュー
アサージ・ヴェントレスが「その後」の物語だったのと対照的に、この3話はキャド・ベインの「過去」の物語だった。アサージは3話で過去と折り合いをつけ未来を向いたが、キャド・ベインはこの3話の過去に囚われてしまっているように感じる。エイリンが自分の子供を宿しており、ニロが息子を守ってくれていたと気づいた時には、すでに2人はこの世になく、そして息子アイザックからは親の仇だと思われてしまった。この過去を彼は一生引きずるのだろう。
そして、彼はギャングのファミリーも失っている。ラズロの仇を取ってまで守ろうとしていたが、今回自分の復讐に巻き込んだ仲間のヴァク・ラコとテイ・グラティも死んだ。結果、彼はすべてを失い、『クローン・ウォーズ』で観てきたように孤独な賞金稼ぎとして生きることになる。
キャド・ベインに父親属性が付与されたのはなかなか見方を変える設定だ。彼には父親代わりのラザロがいて、そして父親としての役割を果たせなかった息子がいる。彼は何度か子供を誘拐しているが、考えてみると子供を直接傷つけるようなことはしていなかった。また、『クローン・ウォーズ』の未公開エピソードで、ベインは少年時代のボバ・フェットの師匠であった。今回の話でこの師弟関係は疑似的な親子関係となり、ドラマ『ボバ・フェット』での二人の対決も「親子」の対決だと見えるようになる・・・はずなのだが、一向にボバとベインの過去の関係が描かれない。それどころか、ボバ・フェット少年すら最近の作品に登場しない!!『バッド・バッチ』はチャンスだったはずなのに・・・。セレブレーションのアニメ20周年パネルでは、この未公開エピソードを公開していつか公開したいとフィローニ監督が語っていたので彼の願いが成就することを祈るしかない・・・
ニロはあまりにも善い人間であった。キャド・ベインの奥に眠る「コルビー」を信じ、彼を取り戻そうとした。第5話では、保安官の死体から銃を回収した後も、彼に銃口を向けようとはしなかった。第6話では先に発砲したにも関わらず、彼の銃弾は当たらなかった。旧友を撃ちたくなかったのだろう。市長はそれを弱さだとみなしていたが、覚悟をもって命を懸けて旧友と向き合えるのは強さだ。
また、今回の舞台設定がアメリカ郊外、もっと言えばおそらく禁酒法時代のアメリカ郊外からインスピレーションを得ていたものであったも印象的だった。ここまでアメリカ郊外に寄せていると、スター・ウォーズでは逆に新鮮な光景に思えてくるから不思議だ。ただの西部劇ではなく、ギャングもののテイストを入れていたのはうまく雰囲気と物語にマッチしていたように思える。また、キャド・ベインという銀河一の賞金稼ぎが、地球人から見ると一般的な光景であるアメリカ郊外から生まれたとするのは、貧困を放置している現実世界への警鐘にもなるだろう。
『テイルズ・オブ』シリーズは、少なくとも片方はドラマ作品とつながるというコンセプトがある。『テイルズ・オブ・ジェダイ』では アソーカ・タノ編が、『テイルズ・オブ・エンパイア』ではモーガン編が、ドラマ『アソーカ』の前日譚になっていた。今回の『テイルズ・オブ・アンダーワールド』では、このキャド・ベイン編がドラマ『ボバ・フェット』につながるという位置づけのはずだ。だが、前述したとおり、ボバとの関わりという重大なピースが欠けているのはあまりにも惜しい。今回でより愛着が沸いたキャド・ベインをさらに見たいし、ボバとの関わりも必ず見たい。帝国初期の暗黒街が描かれる次作の『モール:シャドウ・ロード』に期待してもいいのだろうか・・・?『ボバ・フェット』は個人的にはまだ評価できない部分があると感じているので、ぜひともキャド・ベインとボバの関係性をさらに描いて、味わい深さを増してほしい。
豆知識
クランチー
ニロとコルビーは「Crunchies」を食べたいと語っている。カリカリを意味する形容詞からとっただけだで偶然だと思われるが、イギリスには同名の「Crunchie」という有名なチョコバーのお菓子がある。
ゴンクの自動販売機
街にはゴンクが改造されたと思しき自動販売機?がある。コルビーが叩いてお金が出ないか確認していた。
カードゲーム
エイリンとキャド・ベインは暇つぶしにカードゲームをしている。スター・ウォーズ世界でのカードゲームと言えば、サバックが非常に有名である。
スター・コミューター2000
ベインが街に戻ってくる際に乗ってきた船の機体は「スター・コミューター2000」。スターツアーズ社で採用されていたスタースピーダー1000にも似ている機体で、『反乱者たち』などに登場していた。