【レビュー・豆知識】アニメ『テイルズ・オブ・ジェダイ』 ドゥーク―伯爵編(第二話&第三話&第四話)

2022/10/29

アニメ レビュー

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『テイルズ・オブ・ジェダイ』のもう一人の主人公、ドゥークー伯爵主人公作のレビュー・豆知識の記事。彼がジェダイに対してどういう思いを抱き、なぜジェダイを捨てたのか。「ジェダイの物語」としては、確実にドゥークー伯爵の回の方が面白かった。来年配信のドラマ『Ahsoka』に向けて作られたこのアニメ・シリーズだが、デイヴ・フィローニ監督が本当にやりたかったのは、このドゥークー伯爵の話なのではないだろうか。三話しかないので、人にも勧めやすい作品だ。

アソーカ・タノ主人公作のレビュー&豆知識、海外の反応については、以下のリンクより。




第二話「正義」



  • 副題:「正義(Justice)」
  • 監督:サウル・ルイス
  • 脚本:デイヴ・フィローニ
  • 評価: ★8.5/10(IMDbユーザー評価)

二人のジェダイが寂れた惑星を訪れる。師匠の名前は、ドゥークー。弟子の名前は、クワイ=ガン・ジンだ。二人は、ダゴネー議員の息子誘拐を捜査していた。酒場に入ると、あっさりと誘拐犯が村人たちだったと判る。彼らは、長年支配を続ける議員に不満を持っていた。クワイ=ガンは、「選挙で落とせばいい」と提案するが、腐敗したこの星では、選挙はなんの意味も持たない。長老は「議員は、最初は善人だったかもしれないが、今は違う」と語る。ドゥークーにとっては、この言葉が、ジェダイ・オーダーの現状とも重なりそうだ。

だが、クワイ=ガンの「議員だけでなく、みんなのために行動している」という言葉もあり、村人はしぶしぶ協力する。ジェダイに対する信頼感は、まだ残っているようだ。彼らは、議員の息子も丁重に扱っていた。息子は、村の惨状を知らなかったようで、ショックを受けている。

そこに兵隊を引き連れたダゴネー議員がやってくる。「ジェダイは元老院に仕える身だ」と叫ぶ議員に、「ジェダイは共和国の民に仕えている」と返し、村人を守ろうとするドゥーク―。評価がうなぎ登りするカッコよさだ。

だが、戦闘で村人に死人が出てしまう。見せしめとしてさらに多くを殺そうとする議員。ドゥークーは、フォース・チョークを使って議員の「悪しき心を根絶しよう」とする。だが、クワイ=ガンが息子を差し向けたことで、寸前のところで議員は助かった。

戦いの後、議員の息子は、自分が村の惨状をどうにかすると約束した。村の後処理は、さっきまで殺し合った議員の兵士と村人が共同で行っている。この星は、良い方向に進み始めたはずだ。ドゥークーは、弟子のクワイ=ガンを「私よりも賢い男だ」と称賛する。だが、これを根本的な解決とは思っていない・・・




まだ若いドゥークーとクワイ=ガンを主人公としたこのエピソードは、最後に二人の正体が明かされるという構造になっている。そして、若きクワイ=ガンを演じたのは、リーアム・ニーソンの息子のマイケル・リチャードソンだ!

ドゥークーの攻撃性と同時に、クワイ=ガンの偉大さがよくわかる一話。正義感によって暴走しそうになるドゥークーをうまく抑え込み、最小限の犠牲で村に連帯をもたらしている。デイヴ・フィローニ監督も、「ジェダイが歩むべき道を示している」と高く評価するクワイ=ガン。もし、全てのジェダイが彼のように柔軟な考え方と正義感を持っていれば、ジェダイは変われるのかもしれない。ドゥークーは、そう期待したことだろう。だが、現実は・・・


第三話「選択」



  • 副題:「選択(Choices)」
  • 監督:チャールズ・マレー
  • 脚本:チャールズ・マレー、エラン・マレー
  • 評価: ★8.5/10(IMDbユーザー評価)

ジェダイ・マスターのドゥークーと、メイス・ウィンドゥが、惑星ラクサス・セカンダスへと向かっている。彼らは、殺されたジェダイ評議員、マスター・カトリの遺体回収を評議会に命じられていた。ドゥークーは、メイスの命令を全うしようとする堅物な姿勢に少しうんざりしていた。

このラクサス・セカンダスは、後の独立星系連合(分離主義同盟)の首都となる惑星だ。この時点で、反乱活動が行われているようで、ラリク議員は情報提供者と会うために帰郷していた。その護衛を務めている最中に、マスター・カトリは殺されたようだった。ドゥークーは、真相を解明しようと、メイスの静止を無視して事件現場へと向かう。

現場を見た後、ドゥークーは、カトリが議員の護衛隊から撃ち殺されたと見破る。すぐさまライトセーバーを手に取るドゥークー。銃撃戦の末、議員と護衛隊の殆どは戦死する。生き残った護衛隊のリーダー格のセマージによると、議員が故郷を省みずに私的な利益を得ようとしたことに不満をもって、彼の身柄を拘束しようとしたのだと言う。メイスは、ジェダイであるカトリに相談すべきだったと語るが、セマージは、「ジェダイは元老院や権力者の犬に過ぎない」と一蹴。ドゥークーは、その言葉に思うところがある。

捕らえられたセマージに、ドゥークーは語り掛ける。「うなずける考えだ。戦い方に工夫をすれば、我々の勝利は近い」。ドゥークーの心は既に、共和国とジェダイから離れている。第二話でも、似たような権力者の腐敗を目にした。あの時は若きクワイ=ガンに希望を託したが、結局根本的な解決策はとられなかった。ジェダイでは銀河を変えられないのだ。

ドゥークーは、現状に対する疑問をメイスにぶつける。だが、メイスは「ジェダイ評議会が決断する現状に問題はない」と返す。そして、ジェダイ聖堂への帰還後、ドゥークーはメイスがカトリの評議員の座を受け継ぐことを知った。体制側に入る「選択」をした旧友に不信感を抱くドゥークー。さらに悪いことに、メイスは畳みかける。「お前が任務を無視したせいでラリク議員が死んだと評議会に報告する」。そこには、ドゥークーの正義感や不信感への配慮はない。ドゥークーは、ジェダイから離れる「選択」を心に抱き、二人の旧友は決別してしまった。




『EP2/クローンの攻撃』で対峙したドゥークー伯爵とメイス・ウィンドゥの過去を描く一話。二人の間の友情を見て取れる。EP2でメイスは、「元ジェダイのドゥークーが暗殺をするはずがない」と信頼を寄せていたが、その裏にあったのは、この友情なのだろう。ただ、違う「選択」をしてしまっただけで、二人とも、銀河に正義をもたらしたいという考えは同じだった。

「私腹を肥やそうとする元老院議員に庶民が反発して事件を起こし、ジェダイが解決する」という構造は、第二話と全く同じだが、それによって、状況が悪化しているというドゥークーの焦燥感がよく表れている。第二話では、まだジェダイに対する信頼があったが、第三話ではジェダイは憎しみの対象へとなっている。時間が経つにつれ、人心がジェダイから離れていくのを見たドゥークーが、ジェダイ・オーダー脱退を決めたのもうなずける。


第四話「シス卿」



  • 副題:「シス卿(The Sith Lord)」
  • 監督:サウル・ルイス
  • 脚本:デイヴ・フィローニ
  • 評価: ★9.6/10(IMDbユーザー評価)

第四話は、『EP1/ファントム・メナス』と同じ時系列。ドゥークーは、サイフォ=ディアスのコードを使い、ジェダイ公文書館から惑星カミーノの記録を消す。クローン・トルーパーとオーダー66の存在を隠し、ジェダイと共和国を、クローン大戦で10年後に破滅させるためだ。

消し終わった後、外へ出ると、聖堂が騒がしい。クワイ=ガン・ジンが、シス卿の復活を報告したそうだ。ドゥークーは、何年も警告してきたのに取り合わなかった評議会への失望を露わにする。そして、クワイ=ガンを慮り、くれぐれも身を守るように忠告する。

だが、クワイ=ガンは、惑星ナブーでダース・モールに殺されてしまった。生前の彼が好きだった木の下で、ドゥークーは、悲しみに暮れる。彼は、マスター・ヤドルの言葉を無視し、ダース・シディアスの元へと向かった。ヤドルは何か怪しい雰囲気を感じとったのか、ドゥークーを追跡する。

シディアスに対面したドゥークーは、不満を語る。「クワイ=ガンは頼もしい仲間になったはずで、モールに殺させるべきではなかった」と。だが、ドゥークーは「大義と自由のため」に、あまりにも多くの犠牲を払っていた。既に引き返せないドゥークーをシディアスは軽くあしらう。

そこに、ヤドルが姿を見せる。「腐敗した元老院に仕えるジェダイを抹殺せよ」と命じるシディアス。一方のヤドルは、「あなたのことはわかる。まだやり直せる」と訴えかける。逡巡した挙句、ドゥークーは「もう遅い」と結論付け、彼女に切りかかった。激しい攻防戦の末、ヤドルは謝罪の言葉を口にする。「評議会はあなたの言葉を聞くべきだった。私は評議会を辞めた」。だが、ドゥークーにその言葉は届かない。彼女を扉の下敷きにする。

戦いが終わり、シディアスは、ドゥークーを弟子へと向かい入れる・・・はずだった。「フォースのテーマ」と共に、ヤドルは再び立ち上がる。希望の光が差し込む。あまりのまぶしさに、シディアスは圧倒され、顔を隠すだけ。だが、この最後のチャンスをドゥークが活かすことはなかった。「私は銀河に平穏と秩序をもたらしたかっただけだ」と語るドゥークー。「あなたの言う秩序のためにどれだけの人間が苦しんでいるか」とヤドルは諭すが、ドゥークーは「では、あなたには平穏をもたらそう」と返し、彼女を殺害する。シディアスは新たな弟子を手に入れ、満面の笑みを浮かべる・・・




このシリーズの中で、最も評価が高い作品。ドゥークーの闇堕ちと、ジェダイとの決別が描かれる。ただ、厳密には、ドゥークーがジェダイ・オーダーを辞める話ではない。ややこしいが、既存の設定に従うならば、このエピソードの約10年前にドゥークーはオーダーを離れている。このエピソードまでは、聖堂を歩き回れるほどの距離感をオーダーと保ち、上手く付き合っていただけだ。

クワイ=ガンの死が、ドゥークーの闇堕ちの決定打になった設定には、説得力がある。彼は、弟子を非常に高く買い、愛していた。もし、彼が生きていれば、ドゥークーも別の道を探ったのではないか。さらに、アナキンの闇堕ちの遠因も、クワイ=ガンの死であることを考えると・・・パルパティーンが彼を殺せとモールに命令したのも、うなずける。加えて、その死には、ドゥークー自身が関与している。彼の心には罪悪感が残り、苦しむ。暗黒面の道を進んでも、決して幸福にはなれないのだ。

この話で、ヤドルに親近感を思え、彼女が好きになった人も多いだろう。実は、このエピソードのヤドルは、『EP6/ジェダイの帰還』のルークと同じ行動をとっている。「シスの弟子」に「本当のあなたの心が分かる」と告げ、その弟子からは「もう手遅れだ」と返される。最後には「武器がなくとも、シスの弟子の良心に訴えかける」。ドゥークーにも、アナキンと同じように選択の余地は、あった。だが、ドゥークーはシス卿になることを決めた・・・。


豆知識


ジェダイ・シャトル
第二話でドゥークーとクワイ=ガンが、第三話でドゥークーとメイスが乗っているシャトルは、T-6シャトル。『クローン・ウォーズ』にも登場したジェダイが使用する輸送船だ。


クワイ=ガン・ジンの声

第四話におけるクワイ=ガン・ジンの声は、映画でも彼を演じたリーアム・ニーソンが担当している。そして、第二話における青年期のクワイ=ガンの声は、リーアム・ニーソンの息子のマイケル・リチャードソンが担当。


農業ドロイド
アソーカ主人公作にも登場していたが、第二話では、『マンダロリアン』から農業ドロイドが登場。


バーテンダー・ドロイド
第二話の酒場村の酒場でバーテンダーとして働いているのは、8Dシリーズ製錬ドロイド。鉱石採集施設で働くことを想定して製造されたドロイドなので、バーテンダーには不向きそうだが・・・


プロトコル・ドロイド
ダゴネー議員が連れているプロトコル・ドロイドは、RA-7プロトコル・ドロイド。『EP4/新たなる希望』から登場する古参のドロイドだ。


「私よりも賢い男だ」
第二話で、ドゥーク―は、クワイ=ガンのことをこう称賛する。『EP1/ファントム・メナス』では、クワイ=ガンがオビ=ワンを同じ台詞で称賛していた。


ラクサス・セカンダス
第三話の舞台となった惑星ラクサス・セカンダスは、クローン大戦中は、独立星系連合の首都だった。『クローン・ウォーズ』では、この地の議会も描かれている。


サイフォ=ディアスとカミーノ
今作で、カミーノが、サイフォ=ディアスの名でジェダイ公文書館から削除される過程が描かれた。今までも、ドゥークーの仕業であることは分かっていたが、明確に描かれたのは初めて。


ヤドルの声
今作でヤドルの声を務めたのは、女優のブライス・ダラス・ハワード。ロン・ハワードの娘である彼女は、『マンダロリアン』の監督として、デイヴ・フィローニ監督とも協働していた。


聖堂の木
クワイ=ガンの思い出の木として登場する聖堂の木は、グレート・ツリーとして知られるもの。『クローン・ウォーズ』シーズン5で初登場したこの木は、フォース感応能力を持つ


工業地帯
ドゥーク―は、ダース・シディアスとコルサントの工業地帯で密会する。『EP2/クローンの攻撃』でも、ジオノーシスの戦いの後、二人はここで密会をしていた。


ライトセーバー・フォーム

ヤドルの弓を引くようなライトセーバーの構え方は、フォーム3「ソレス」でよくみられるもの。ソレスの使い手としては、他にオビ=ワンが有名。


ダース・シディアスの声
今作で、ダース・シディアス(パルパティーンの)声優を務めたのは、映画でも彼を演じたイアン・マクダーミド。『オビ=ワン』含め、最近のスター・ウォーズによく登場してくれている。


画像は、アニメ『テイルズ・オブ・ジェダイ』(ルーカスフィルム、2022年)より引用

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