- 原題:The Duel
- 英題:The Duel
- 監督:水野貴信
- 制作:神風動画
- ユーザー評価:★8.4/10(IMDb)
公式のあらすじ
謎めく過去を持つ浪人、銀河の外れで起こる“個”の決闘
旅を続ける浪人の男とドロイド
その日、2人が立ち寄った村は長い間、日々、野盗集団による過酷な暴力の犠牲となっていた
だが、村人達は意を決し少しずつ集めた金で雇った用心棒達と行動を起こす
野盗集団と用心棒たちの戦い。当初は優勢にみえた用心棒達だったが、現れた野盗の女ボスによって形勢は逆転する…番傘型の赤いセーバーを携えた彼女はシスだったのだ
一部始終を見ていた浪人は真っ直ぐシスの元へと向かっていく
海外の反応
「黒澤明監督がスター・ウォーズの世界に与えた影響を思い出させてくれる作品だった」
「川に浮かぶ丸太の上での決闘は、逆ムスタファーの戦いだったね(笑)」
「黒澤監督作品にインスパイアされた演出とアクションが最高だった!続きが見たい」
「スター・ウォーズという神話の新たな解釈を見るのは新鮮で面白い。正史が嫌いではないが、正史に囚われすぎると創造性が潰されてしまうだろうね」
「第1話のこのエピソードの美しいアートワークのおかげで、シリーズの残りも見ようと決心した」
「CGアニメには一家言あるが、このエピソードはマンガ風の陰影や線画を駆使した伝統的なアニメの美学とスタイルに、現代の技術を見事に融合させていると言わざるを得ない。語るのではなく、多くを映像で示した。ファンタスティック」
レビュー
スター・ウォーズの日本への「帰郷」を象徴する一作。その物語の型や演出、音楽は、クロサワ作品の時代劇を彷彿とさせる。クロサワ作品の神髄はスター・ウォーズへと進化し、そしてこの作品で再びスター・ウォーズと融合した。この雰囲気を支えるのはやはり本作の素晴らしいデザインだ。ストームトルーパーのアーマーをつぎはぎした野武士やスター・ウォーズ風の日本の古民家・茶屋、おなじみのエイリアンたちが扮する用心棒・・・。正史という枠組みを超えた作品だからこそ成しえた奇抜で見ごたえのあるデザインとなっている。
その中でも、主人公のローニンは世界観を象徴する際立ったキャラである。仕えるべきものを失った浪人である彼は村から村へと彷徨って生活している。そして、彼と同じく主を失い狼藉ものとなった野武士たちもいる。野武士たちは村を襲い、一方ローニンは彼らを倒すべく立ち上がる。ローニンの姿は正義の侍ジェダイのようにも見える・・・が、彼の引き抜く刃の色は野武士のボスの女シス卿、コールと同じく真紅。浪人である点も、元々所属していた陣営も、すべて彼らは同類なのだ。この戦いは悪と悪の戦いだ。ただ最後まで感情を露にしないローニンではあるが、その行動は悪人には思えない。村人を守ろうとする心もあり、自らが殺した女も弔う。
その胸元にはいくつもの赤いクリスタルがあった。ローニンは、今までもこうしてシスを倒してきたことがわかる。その目的は贖いなのではないか。かつてシスとして悪の道に生き、この混沌とした世の中をもたらすことに加担したローニン。今はシスとして仕えていたものを信じられなくなり、放浪の生活を送りながらシスを倒している。彼には真紅のセーバーを捨てて生きる道もあったはずだ。そうすれば、村人からあのような恐怖の視線を向けられることもない。だが、彼はそれでもシスとして生き、シスを倒すことに邁進している。かつてシスであった自分への罰を下しているのではないか。元々はこんな世の中をもたらしたかったわけではないのではなかろうか。計算されつくしたローニンの演技は、悲しき過去をも想像させた。
本作「The Duel」はアニメ『ビジョンズ』Vol.1の顔となっている。『ビジョンズ』の中で、小説やコミックで続編や前日譚が描かれた唯一の作品であり、先日のセレブレーションでは本作の茶屋を再現した出展まであった。そして、『ビジョンズ』Vol.3では続編が計画されている。それは最初に述べたように、本作がスター・ウォーズの「帰郷」を表している作品だからだろう。いや、この表現はやや不正確かもしれない。神風動画の水崎代表取締役は「もらったものをお返ししているだけ」と述べていた。この作品は日本の文化とスター・ウォーズが相互作用して生み出されたのだ。スター・ウォーズが文化を超え、時代を超え、愛されていることを雄弁に語っている。
豆知識
EP1のオマージュ
ローニンを追う女ボスが滝に遮られるシーンは、EP1のナブー戦におけるダース・モールのオマージュ。ボスのライトセーバーが滝にぶつかる音は、モールのライトセーバーがシールドにぶつかる音を再利用している。
EP3のオマージュ
ローニンと女ボスが川に浮かぶ丸太の上で戦うシーンは、EP3のムスタファーでオビ=ワンとアナキンが溶岩の川
カゴ・カーゴ
野武士たちが乗っているのは、AT-ATの胴体を駕籠に見立てた乗り物。その名もカゴ・カーゴ
エイリアン
用心棒として、おなじみのエイリアンが多数登場している。タスケン・レイダーやタグ、トランドーシャンなど。
R5-D56
ローニンの相棒のドロイドの名前は、R5-D56。漫画『子連れ狼』に登場する子供、大五郎にちなんで名づけられた。
ポスター
出典