【レビュー・豆知識】『マンダロリアン』シーズン3最終回:第八話「帰還」【あらすじ・ネタバレ】

2023/04/20

マンダロリアン レビュー

t f B! P L

  • 第八話「帰還(The Return)」
  • 監督:リック・ファミュイワ
  • 脚本:ジョン・ファヴロー
  • 評価: ★8.6/10(IMDbユーザー評価)

あらすじ


惑星マンダロアで、潜んでいた帝国軍に捕えられた主人公ディン・ジャリン。しかし、持ち前の戦闘力と、IG-12に乗ったグローグーの手助けで即座に脱出。二人は、敵の頭であるモフ・ギデオンを狙う。R5-D4の高いハッキング技術もあり、二人は指令室へ足を踏み入れることに成功する。そこにあったのは、大量のギデオンのクローンだった。

一方、パズ・ヴィズラの犠牲で生き延びたボ=カターン・クライズ一行は、ベスカー合金のアーマーを着た帝国軍に追いかけ回される。一人脱出したアックス・ウォーヴスは、艦隊に危機を知らせて地上へ送ると、自分はTIEファイターを引き受ける。洞窟に隠れていたボ=カターン一行に、アーマラーたち援軍が加わる。帝国軍残党との本格的な戦いが始まる。

ディンとグローグーは、モフ・ギデオンと対面する。自分のクローン軍団を破壊されたギデオンは怒り心頭。ダークトルーパー・アーマーに任せて、ディンを蹂躙する。プレトリアン・ガードも加わり、ディンの命は風前の灯火。そこに、グローグーが割って入る。「No」のボタンを連打しながら、彼はプレトリアンを引きつけた。運よくボ=カターンも到着し、戦いはディン&グローグーvs.プレトリアン・ガード、ボ=カターンvs.モフ・ギデオンに。

グローグーのフォース能力と、ディンの身体能力で、二人はプレトリアン・ガードに辛勝した。一方、ボ=カターンはギデオンに追い詰められ、ダークセーバーも破壊される。だが、アックスが乗る巡洋艦が基地にめがけて墜落した。ギデオンは火に包まれ、ディンとボ=カターンは、グローグーのフォースの力で救われる。

マンダロリアンは、故郷を取り戻した。改めて誓いの儀式が行われ、グローグーはディンの正式な息子、正式な弟子になり、ディン・グローグーとなった。そして、ディン・ジャリンは彼を鍛えるために故郷を離れ、新共和国の傭兵となることを決めた。修理したIG-11を新たな保安官としてグリーフ・カルガに紹介した後、二人はやっと手に入れたネヴァロの我が家でくつろぐのだった。

「完結」と今後


『マンダロリアン』シーズン3堂々の完結!シーズン4を望む声もさっそく出ているが、これにて、ディンとグローグーの物語はひとまず完結となるだろう。明確な伏線が匂わされることはなく、ポストクレジットシーンもなかった。ギデオンは死んだ。マンダロリアンは故郷を取り戻した。ディンは、第二の故郷であるネヴァロへと戻った。成長して故郷へ錦を飾る「帰還」は、おとぎ話において、終わりの場面なのだ。最後の「アイリス・アウト」(丸く一部が切り取られる演出)も、完結を際立たせる。

正直言って、やや強引な完結ではあった。モフ・ギデオンという共通の敵が出てきたから、なんとなくマンダロリアンの団結は描かれた。しかし、本当に溝は埋まり切ったのか?以前からあった、新マンダロリアンとデス・ウォッチの確執、帝国派と主流派の確執はどうなったのか?姉サティーンの統治を振り返らない本作は、マンダロリアンの物語として完結したと言えるのか?加えて、この回自体もガバガバな展開が散見された。ギデオンがディンを捕らえた理由も、クローンの虐殺を眺めていた理由もわからない。随所で、設定の甘さがあった。まあ、ここら辺は「スター・ウォーズらしい」かもしれない。

邪推すれば、マンダロリアン完結作が映画になったことで、方針転換があったのかもしれない。実際に、大規模な再撮影も行われたようだ。映画で完結する「マンダロリアン・バース」は、これから新共和国と帝国残党の戦争を描くことになる。そうなると、脇にそれかねないマンダロリアンの話、ディンとグローグーの話をこのシーズンで終わらせたいという思いが垣間見えた。

実際に、今シーズンの第三話「改心」では、新共和国の内部組織が描かれた。 第六話「傭兵」 は、新共和国統治下の銀河の姿を描いた。いずれも「脇道」に逸れるという批判を覚悟したうえで、新共和国と帝国残党の戦争を描く「マンダロリアン・バース」の本筋を強化する話だった。しかし、「脇道」に逸れた今シーズンで、「ディンとグローグーの物語」をひとまず完結させることの是非には、議論の余地がある。

もちろん、ディンとグローグーは、今後もマンダロリアン・バースで活躍することになるだろう。だが、これからは、銀河規模の戦いを描くことが主軸となる。シーズン4が実現するとしてもそのテーマからは逃れられず、二人はゲスト的な立ち位置に留まるだろう。

マンダロリアンの団結と共生


前回の副題が「スパイ」(しかも複数形)だったことで、多くのファンが、マンダロリアン内のスパイを疑った。アーマラーやアックス・ウォーヴスが容疑者として疑いの目を向けられた。なんて疑い深いファンたち!謝ったほうがいいですよ!(ごめんなさい)。冗談はさておき、巧みな制作陣はマンダロリアン内のスパイを明らかに匂わせていた。アーマラーの意味深なカット、そして前述の意味深な副題。観客を疑心暗鬼に陥らせたことで、団結を改めて強調した。スパイを疑ったファンは、掌で踊らされたわけだ。

本シーズンの主題は、対立を乗り越えることであった。そのためには、他者への疑念を払拭する必要がある。主流派のボ=カターンが、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチと共に過ごしたことで、両者は相手を認めることになった。そして、この流れのキーマンであるディン・ジャリンも、賞金首に過ぎないグローグーを認めることで、新たな道へと足を踏み出していた。三者三様のディン、グローグー、ボ=カターンが、モフ・ギデオンとの戦いで協力して勝利を収めたことには大きな意味がある。

他者を認めるとは、相手を権威や力で屈服させることではない。支配者の象徴だったダークセーバーは、平和的にボ=カターンの手に渡され、そして破壊された。もはやボ=カターンの権威を支えるものは、何もない。しかし、ディンがその人柄に忠誠を誓ったように、彼女はこれから誠意を尽くすことで人々を統治していく。チルドレン・オブ・ザ・ウォッチの儀式に参列し、アーマラーから鍛冶場の火を受け取る。支配ではなく、共生というスター・ウォーズの究極のテーマが描かれる。芽吹きつつある木々と、目覚めたミソソーとも共に歩んでいく。第六話「傭兵」で見た、全ての人間が新たな人生を歩める理想郷を目指すだろう。

前述したように、以前のマンダロリアンの対立やサティーン・クライズの統治に触れなかった本作は、消化不良感も否めない。一方で、対立を乗り越えるというテーマは常に掲げられており、一応の解決はしたことになる。「団結したマンダロリアンは強い」のだ。

そして、改めてグローグーは、正式なマンダロリアンの弟子、ディン・ジャリンの息子「ディン・グローグー」になった。親子であり、弟子であるという流れは、『スカイウォーカーの夜明け』のレイ・スカイウォーカーを意識したものだろう。ディン・ジャリンとグローグーは、互いを受け入れて、究極の団結の形である「家族」になるのだった。

小物のギデオンの計画


シーズン1からメイン・ヴィランとして暗躍していたモフ・ギデオン。その正体は、蓋を開けてみれば、ナルシストな小物であった。彼は、フォース能力を付与した自らのクローン(ストランド=キャスト)で、自ら銀河に秩序をもたらすことを夢見ていた。大局的な見地から物事を判断する、今後のメイン・ヴィラン、スローン大提督とは大きく異なる。

ジェダイやクローン製造者、マンダロリアンの文化や技術を奪い、身を固めようとする彼は、まさに典型的な征服者であった。本作では、圧政者よりも、侵略者としての帝国の悪の面が強調されていた。マンダロアをあくまでもベスカーの産地としてしか捕らえないギデオンの考えは、植民地支配を思い起こさせる。彼は、ダークセーバーという歴史的な遺物までも「玩具」だと罵り、破壊した。しかし、その侵略や破壊という辛い出来事があってこそ、マンダロリアンは団結し、前進できた。折れない心が勝利をもたらした。

ギデオンの計画は、あるくまでも彼一人の野望ではあったが、彼の遺伝子操作を加えられたクローン、ストランド=キャストの設定は今後に繋がる。再三指摘してきたが、スノーク、復活したパルパティーン皇帝、レイの父親はいずれも、ストランド=キャストだ。本シリーズは、シークエル三部作への橋渡しとなり、ファースト・オーダーとパルパティーン皇帝の脅威を強調していく。そして、まずは『アソーカ』で、スローン大提督が立ちはだかることになる。今回登場したギデオンのクローンは、驚異的なスピードで成長しているようだったので、小説「スローン三部作」で登場したスパーティ・シリンダーに繋がるかもしれない・・・

豆知識

バクタ・スプレー


IG-12に乗ったグローグーは、傷ついたディン・ジャリンを見て、治療液のバクタをスプレーで噴射する(アーマーにめがけて)。シーズン1では、IG-11がディン・ジャリンの傷をこのバクタ・スプレーで治療していた。

バイナリ語

R5-D4と連絡を取り合っているとき、ディンは「バイナリ語はわからない」と返す。バイナリ語は、R2-D2やBB-8などのアストロメク・ドロイドが使用する通信形式で、理解するのは困難だ。ちなみに、勘違いされがちだが、『EP5/帝国の逆襲』時点のルークでも、バイナリ語を完全には理解していない。(実は、Xウィングに通訳機が搭載されている)

エレクトロ・スタッフ

ベスカーのアーマーに身を包んだ新型トルーパーや、モフ・ギデオンは、エレクトロ・スタッフで武装していた。エレクトロ・スタッフは、マグナ・ガードやパージ・トルーパーが使用していた装備。この武器により、ライトセーバーとの接近戦も可能になる。

シールド・バリアでの戦い

モフ・ギデオンの指令室は、何重ものシールド・バリアで守られていた。これは、『EP1/ファントム・メナス』のナブーで行われた、モールvs.クワイ=ガン&オビ=ワンの戦いのオマージュだろう。

炎を止めるグローグー

今回、ボ=カターンとディン・ジャリンは、グローグーのフォース能力で、墜落の炎から巻き込まれずに済んだ。シーズン1第八話でも、グローグーは火炎放射器の炎からディンとキャラ・デューンを守っている。この時よりも、グローグーは成長しているようだ。また、この描写は、ケイナン・ジャラスの最期とも重なる。

監督のカメオ

ディン・ジャリンは新共和国の基地であるアデルファイを訪れた。背後では、  第五話「海賊」と同じように、総指揮であるデイヴ・フィローニ演じるトラッパー・ウルフたちが談笑している。

IG-11

IG-11が、キャラ・デューンに代わる保安官として復活!第一話ではパーツが足りないと指摘されていたが、新共和国の基地で同型の頭部を見つけたことで、修理することが出来た。



  
        第三話「改心」
        第四話「孤児」
        第五話「海賊」
        第六話「傭兵」
        第八話「帰還」


筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

画像は、『マンダロリアン』シーズン3(2023年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点。出典 出典

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