【レビュー・豆知識】ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2 第10話~第12話(最終週)【ネタバレ】

2025/05/15

キャシアン・アンドー レビュー

t f B! P L

"アクシス"をめぐって


ヤヴィンの戦いの直前、きな臭くなる状況下でも、骨董商で反乱活動の首魁"アクシス"であるルーセン・レイエルは惑星コルサントに留まり情報収集を続けていた。彼はISBの内通者であるロニ・ヤング監査官から自分の身に危険が迫っていること、そしてデス・スターの計画について知る。彼はロニを殺して口封じをすると、助手のクレヤ・マーキを逃がし自ら証拠隠滅を図ったが、デドラ・ミーロ監査官に追いつかれ、追い詰められる。逃げ道は無くなり、彼は自ら腹を刺し自害を試みた。しかし一命をとりとめ、病院へと運び込まれる。デドラはこの失態により逮捕され、彼女の後任としてヒアート監査官が全権を引き継ぐ。デス・スターの責任者であるオーソン・カラン・クレニック長官は情報の漏洩に気づくとコルサントに舞い戻り、デドラを尋問する。デドラのアクシスへの執着がこの情報漏洩をもたらした。デドラは失脚した。一方、クレヤはルーセンが捕まったことを確認すると病院へと忍び込む。彼女はルーセンに拾われ、ともに戦ってきた過去を思い出しながら、父でもあったルーセンに安らかな死を与える・・・
とうとう『キャシアン・アンドー』シリーズにて絶大な存在感を放ってきたアクシスことルーセン・レイエルがその命を落とすことになった・・・。彼がもう「完璧に安全を保てない」と知りながらもコルサントに残らなければ、デス・スター計画が露呈することもなく、帝国の勝利に終わっただろう。ルーセンは英雄だ。 だが、知られざる英雄である。ルーセンが歴史に残る「真作の美術品」ではなく、あくまでも「贋作(の疑いがある)」のナイフで命を落としたのは、彼が歴史に残らない英雄である点を象徴しているように思えた。だが、彼の想いは、メッセンジャーたるキャシアンが受け取り、そしてさらにレイアやルークが引き継いでいく。

ルーセンがかつて兵士であったのは少し意外だった。階級も軍曹とかなり低い(しかもルーセン・レイエルは偽名のようだ。彼はリア軍曹と呼ばれていた)。その所作からは上流階級を生き抜いてきたしたたかさがにじみ出ていたが、その生き方を身に着けたのは多く見積もってもここ十数年の間にだ。幼いクレヤに語っていたように、彼は必要に応じて何にでもなれるのだろう。骨董品を売って命をつなぎつつ、必要に迫られて今の地位にたどり着いた。彼の執念と有能さがわかる。彼は強靭な精神力で、負けに負け、耐えに耐え反乱活動を大きくしてきた。

そして、ここにきてクレヤ・マーキも大きなインパクトを残した。過去篇で描かれていたように、彼女はルーセンの「娘」だったのだ。ジン・アーソとソウ・ゲレラとの関係にも重なる。それを踏まえて、故郷や家族を奪われてきた彼女が「やらなくてはならない」ことだからと「父」であるルーセンを殺したシーンは涙なしには見られなかった。その直前に、「娘が会いに来る」エイリアンの車いすを押すシーンがあり、なおさら悲劇的に見えた。彼らが普通の親子ならば、そんな平和な生活もあったはずだ(なお、このエイリアンは「おばあちゃん」であるらしい笑)。

ルーセンはクレヤに命令を順守させる反面、惑星ナブーのシーンで語ったように、彼女の意思を大切にしていた。だが、第9話で自ら語ったように、クレヤは「選択する自由を得るために戦っている」=「今の自分には選択肢がない」と考えている。そのクレヤはルーセンという方位磁石を失って生きる指針を失った。キャシアンに説得されても、ヤヴィンの反乱同盟軍に加わる決断ができない。そして、ヤヴィンについた後も「今どこにいるのかすらわからず、出口も見つけられない」。過去の回想が混じる点や救出される使命手配犯という展開は、『キャシアン・アンドー』シーズン1のリフレインだが、あのころのキャシアンには居たルーセンはもう居ない。ここから先は自分で決めなくてはならない。本作は終わったが、彼女の人生はまだこの先もずっと続くのだ。だが、そんな彼女も最後に希望を目にする。目を増したクレヤは、ヤヴィンの基地の活気に満ちた姿を見る。「あちこちにいる友達」をつなぎ、これを作り上げたのはルーセンの功績なのだ。彼の想いは確かに今も息づいている。


デドラ・ミーロの失脚も本作の象徴的な出来事だった。彼女はその執念深さで「スカベンジャー」として情報を漁り、アクシスに辿り着く。だが、その過程でデス・スター計画を知ってしまい、同僚でスパイのロニ・ヤングを通じて反乱軍側にその計画が漏れる。結果、彼女はオーソン・カラン・クレニック長官の手により失脚する。その失脚の余波で、ルーセンの命をまんまと奪われた。この展開はあまりにも皮肉だ。帝国は外敵ではなく、自らが煽った出世欲により内部で不和を起こし崩壊していく。帝国内の誰も報われることはない。

デドラの執念深さは、キャシアンを追い続けゴーマンに虐殺をもたらしたシリル・カーンを彷彿とさせた。デドラはシリルを失ったからこそ、ここまでアクシスに執着したのかもしれない。シリルを、そしてゴーマンの人々を殺したことを彼女は覚えている。彼女を責め、その首を絞めたシリルのあの腕を。だが、もう後戻りはできない。だから、彼女は猛進するしかなかったのではないか。そして、その思いが自らその引導を渡したいとの欲求につながり、独断専行して一人であのスターパス・ユニットを見せつけた結果、大きな失態を侵した。

デドラは積み上げたすべてを失った。彼女が4年間も追っていなければルーセンを見つけられなかったのは確かだろう。だが、その行動には意味がなかったのだ。反乱軍のスパイになったほうがよかったとのクレニックの言葉は、その結末を考えるとあまりにも皮肉だ。彼女は、反乱軍のスパイであるキャシアンと同様に刑務所に収監される。キャシアンは持ち前の反抗心で反乱を呼び寄せ脱出できたが、デドラには無理だろう。彼女は今まで秩序を保つ側として生きてきたのだから・・・。

救出劇


ISBのリオ・パータガス少佐とヒアート監査官は、病院に忍び込み、ルーセン・レイエルを殺した彼の助手クレヤ・マーキを追う。一方のクレヤは通信機を使って救助を呼んでいた。ヤヴィンに滞在しているウィルモン・パークはその信号に気づき、キャシアン・アンドーのもとを訪れる。ルーセンの反乱への貢献を知っている彼は、反乱同盟軍の上層部には無断で、相棒のK-2SOと旧友のルースコット・メルシとともにコルサントへ救出に向かう。一方、ヒアート監査官もアクシスを熱心に追っていた元監査官デドラ・ミーロからの助言で、信号を受信し、クレヤの潜伏地を突き止める。先にクレヤを見つけたのはキャシアンたちだったが、すぐにヒアート率いるISBの部隊が現れ、窮地に陥る。だが、K-2の活躍により一行はISBの部隊を全滅させ、ヤヴィンの基地へと逃げ帰る・・・
キャシアン・アンドーとK-2SOのコンビはやはり名コンビだ。キャシアンのテキトーさに突っかかり、皮肉を言う表情豊かなK-2のシーンにはやはり惹かれる。このコンビがたった3話しか見られなかったのは心残りではある。だが、そこにメルシを加えてトリオになることで、K-2をからかう構図になって新たな魅力も引き出されていた。また、K-2が「人間を予測不可能」だと知ったのが賭け事のカードゲームだったという設定もかなりお気に入りだ。

キャシアンはゴーマンの方針をめぐり、ルーセン・レイエルと激しく対立し、第7話~第9話ではルーセンと仲違いしたことが描かれていた。また、ウィルモン・パークも、第4話~第6話ではルーセンではなく、まさに今命を燃やして戦い続けるソウ・ゲレラの元で戦う展開になっていた。二人ともルーセンから離れていたにもかかわらず、罠である危険性を承知で彼を救いに向かうのは、やはりルーセンのカリスマ性あってこそだろう。彼のやり方は間違っていたとしても、その思いは本物で、文字通りすべてを反乱軍へと捧げていた

クレヤ・マーキは、キャシアンが助けにくると信じていた。彼が人の想いを無下にできるような人間ではない、メッセンジャーであることを知っていたからだろう。前項でも述べたが、指名手配犯を救うという展開はシーズン1のリフレインとなっている。あの頃はキャシアンが救われる側だったが、成長しルーセンの後継者ともなったキャシアンは今では救う側だ。そして、生きるべき道を失ったクレヤを助け出し、ヤヴィンという居場所を与える。最終アークにふさわしい構図だ。

傑作たる本作だが、一つだけ気になったのは思いのほかキャシアンが最後まで「人間味」を保っていた点だ。『ローグ・ワン』のキャシアンは反乱のためなら上の命令に疑問を持たずに従い、人を簡単に切り捨てる人間のように私には見えており、てっきり彼はルーセンの影響でそうなると思っていたが。今回ルーセンは、『ローグ・ワン』のキャシアンがティヴィックを口封じで殺すように、ロニ・ヤングを口封じで殺した。そういう重なる展開はあったものの、『ローグ・ワン』直前の今回のアークでも知り合いであるルーセンを助けようと奔走したり、反乱同盟軍の上層部に反抗したり、と割と自由に自らの正義に従って行動していた。ゲイレン・アーソを殺さないのも納得のキャラクター像だった。『ローグ・ワン』の出来事で「人間味」を取り戻すという展開になるかと思っていたが・・・作品が進むうちにキャラが自我をもって思い通りの展開に持っていけないというあるあるの一つかもしれない。本作を経ると、やはりキャシアンは人間味にあふれているのだから。

そして『ローグ・ワン』へ・・・

キャシアン・アンドーは、命がけでルーセン・レイエルがもたらした秘密兵器の計画を、モン・モスマベイル・オーガナラダス提督デイヴィッツ・ドレイヴン将軍ら反乱同盟軍の上層部にもたらす。だが、パルチザンとして活動するソウ・ゲレラの行動もあり、彼らはこれらが罠や妄想ではないかと疑う。モンはいとこのヴェル・サーサに判断の手助けを乞う。ヴェルはキャシアンと話し過去を振り返りルーセンの話も聞く。そして、そこにゲレラに潜り込ませたスパイがキャシアンに会いたがっているとの話も飛び込み、ドレイヴン将軍もベイルも秘密兵器を信じる方向に傾く。こうして、キャシアンはカフリーンの輪に向かうことになり、物語は『ローグ・ワン』へと直結する。銀河ではそれぞれの人物たちの想いもあった。父であり相棒だったルーセンを失ったクレヤ・マーキはヴェルから休息をとるように促された。反乱軍の各々は来るべき戦いに備えている。敗北と自身の失脚を悟ったリオ・パータガス少佐はカリス・ネミックの演説を聞いた後に自害する。モンの夫だったペリン・ファーサは享楽の日々へと溺れゆく。失脚したデドラ・ミーロはかつてのキャシアンと同様に囚人になっていた。そして、キャシアンの恋人だったビックス・カリーンB2EMOとともに惑星ミーナ=ラウで暮らしていた。その腕の中には小さな赤ん坊の姿が。希望はつながる・・・
キャシアン・アンドーはルーセン・レイエルのもたらした情報を反乱軍上層部に報告するが、彼らは聞く耳を持とうとしない。だが、彼は反抗してでも自らの言葉を伝えようとした。『ローグ・ワン』のジン・アーソにも重なる展開であり、彼のメッセンジャーとしての本領発揮でもあるだろう。クレヤ・マーキに「終わるものなどない、自分で生きてルーセンの命をつなげ」と語ったように、彼は反乱のために命を落としたルーセンの想いをつなごうとしている。ヴェル・サーサとの会話でも、彼がどれだけ多くの人を背負って生きているかが伝わってきた。

ベイル・オーガナはキャシアンに反対する一人だったが、最終的には状況を鑑みて彼にカフリーンへの旅を命じる。そして、キャシアンと「よく眠れたことなどない」という共通点を見つける。キャシアンは、故郷に残した妹のことを思い出し眠れていなかった。同様に、ベイルにも背負っているものがあるからこそ眠れないのだろう。そして、ベイルが口にするのはあの言葉。「フォースと共にあらんことをらんことを」。今は無きジェダイ・オーダーで使われていた言葉だ。彼はジェダイの想いも引き継いでいる。彼らは戦わなければいけない理由を持つもの同士なのだ。そして、ベイルの勇敢さは、『EP4/新たなる希望』の悲劇を強調させるものだった。リキャストで雰囲気が変わっていたのも結果的には良い効果をもたらしていたように思える。

カフリーンに出かける直前、キャシアンがヤヴィンの自らの家の植木鉢にいつものように水をやる。このシーンでは、なんとも悲しい気持ちになった。キャシアンはこのすぐ後に命を落とす。ヤヴィンの基地もまもなく帝国の間の手が迫り放棄される。そのようなことを知る由もなく、彼はいつもの生活を続けている

また、リオ・パータガス少佐の自殺もインパクトがあった。彼はゴーマンの虐殺も計画し、反乱軍を的確に追い詰めてきた悪役だった。だが、彼は最後にネミックの残した言葉を聞き、物思いにふけっている。彼は敗れた。その原因は、きっとこのネミックの言葉にあるのだろう。「心が求める自由は根源的な欲求なのだ」。だが、今更わかったところで彼には選択肢はない。このままでは失脚し下手をすれば拷問のような日々を過ごしたまま死ぬ。彼は自らの尊厳を守るため、帝国に反抗し、自由を行使して命を落とした。最期が最も印象的なキャラだった。

モンの夫のペリン・ファーサは、スカルダンの妻と何やら怪しげな関係になっていた。少なくとも、享楽的な生活へとおぼれていっているようだ。モンとはある程度良い関係を築けていたが、モンの行動によってその生活は失われた。彼女が払った犠牲が強調される


最後はビックス・カリーンの姿で終わる。彼女の腕の中には赤子の姿。展開から考えると、間違いなくキャシアンの子供だろう。この妊娠はビックスがキャシアンから去ったことの理由付けにもなっている。子供が居てはキャシアンは反乱を続けることができなかっただろう。そして、ビックスはぐずる子供に語る。「大丈夫だから」。キャシアンが命を落としてまで戦ったことで最後に帝国は敗れ、すべてが「大丈夫」になる。このビックスが我が子とともに太陽を見つめるカットは、『ローグ・ワン』のキャシアンの最期と対になるカットだ。ルーセンが語ったように、キャシアンは自分が見ることのない夜明けのために命を落とした。しかし、その夜明けを我が子は見ることになった。誰かがメッセージを伝えることで命の意味がつながっていくと再三示されてきた今作だが、キャシアンの知らないところでも希望はつながってゆく・・・。

豆知識

トゥーカ

ルーセンとロニのシーンには、ペットとして猫のような生命体トゥーカが登場。アニメ『クローン・ウォーズ』に初登場し、アニメ『反乱者たち』、ドラマ『マンダロリアン』 、ドラマ『アソーカ』にも登場し、今ではおなじみのクリーチャーになっている。

ノートラン

ルーセンはデドラに見せたノートランのナイフで自害を試みる。最も有名なノートランと言えば、ジェダイ・マスターのキット・フィストーだ。

リナ・ロー医療センター


ルーセン・ラエルが治療を受けている病院は、リナ・ロー医療センターと表記されている。リナ・ローはハイ・リパブリック時代の首相であり、ハイ・リパブリックの様々な物語に登場する

デヴァロニアン

回想シーンで、ルーセンとクレヤはデヴァロニアンのネックレスを売っている。デヴァロニアンは『新たなる希望』で初登場した悪魔のような角を持つエイリアン

ナブー


ルーセンとクレヤは回想シーンで、ナブーのカフェに座っている。この惑星は『EP1/ファントム・メナス』で初登場したパドメの故郷だ。このナブーの撮影では、イギリスのヒーバー城が使用された。この城は『EP1/ファントム・メナス』の撮影で、ナブーのロケ地だったが、そのシーンは削除されていた。

レヴノッグとライアンザ


キャシアン、メルシ、K-2 の三人でのゲーム中にキャシアンとメルシが飲んでいるのはレヴノッグ。『キャシアン・アンドー』シーズン1の第1話に登場したお酒だ。また、彼らがプレイするゲームは「ライアンザ(Rianza)」 と呼ばれるもので、古代の麻雀セットとドミノからインスピレーションを得てアートチームが一から作り上げた。

『ローグ・ワン』おなじみのキャラ


『ローグ・ワン』の様々なキャラが再登場。ラダス提督、ジェベル議員とパムロ議員に加え、エイリアンの戦士でスカリフの戦いにも参加したパオやスカリフの戦いをモン・モスマに伝えた通信士のテンジゴ・ウィームズも登場している。また、メリック将軍やドドンナ将軍も名前だけ登場している。

ナーキーナ

デドラ・ミーロはナーキーナ5を彷彿とさせる刑務所に収監される末路を迎える。トニー・ギルロイは、これはナーキーナ5ではなく、ナーキーナ5の「女性版」とも言える別の刑務所だと明言し、別の媒体ではナーキーナ3か9かも?と語っていた。

ジャケット


第12話の最後で、キャシアンが着ているジャケットは、『ローグ ワン』の冒頭でのカフリーンの輪の任務中に着ていたのと同じジャケットという設定。予告通り、本作は『ローグ・ワン』の直前までを描くことになった。なお、撮影時のジャケットではなく、仕立て直したものだ。


画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点

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