【レビュー・豆知識】ドラマ『スケルトン・クルー』第7話「あたしたち絶対怒られる」

2025/01/11

スケルトン・クルー レビュー

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  • 第7話「あたしたち絶対怒られる(We're Gonna Be In So Much Trouble)」
  • 監督:リー・アイザック・チュン
  • 脚本:クリストファー・フォード、ジョン・ワッツ
  • ユーザー評価★8.1/10 (IMDbより)

あらすじ

惑星アト・アティンでは子供たちを無事に故郷に帰そうとウェンドルヌーマらの親たちが集まり、バリアの向こうに通信機を打ち上げようとしていた。一行はドロイドに発見されるも、ファラが通信機の打ち上げに成功する。

当の四人の子供たちウィムファーンニールKBの四人は前回手に入れた新生<オニックス・シンダー>号で故郷へ戻る道中であった。ウィムはこの冒険が終わり現実に戻ることに抵抗感を覚えるがファーンたちは彼を励ます。一方、子供を裏切ったものの再び捕らえられたジョッドブルータス船長ら海賊団を旧共和国の造幣局であるアト・アティンに導き懐柔しようとしていた。だが嵐に遮られて探索は中止され、危うく処刑されかける。しかし、そこに運よ<オニックス・シンダー>が現れ、SM-33の言葉からジョッドはこの船こそが嵐を通るカギだと気づく。

牽引ビームにより<シンダー>が海賊に捕まっても子供たち四人は機転を利かせて切り抜こうとする。しかし、ジョッドはその罠を逆手にとりブルータスを処刑すると再び船長の座に返り咲き、子供たちをあっという間に捕らえ<シンダー>も手に入れた。捕虜となった四人だがそこに通信機から親たちのホロメッセージが届き一気にウィムが勇気を出す。それがきっかけでファーンはSM-33に自分が船長であることを認めさせ、彼の助けで海賊のフリゲート艦からの脱出に成功する。

<シンダー>はもともとは造幣局の船であったため、追っ手を振り切り無事に嵐を通り抜けることに成功する。帰還を四人は喜んだが安心したのもつかの間、倒したはずのジョッドが現れた。彼はSM-33の首をライトセーバーで跳ね飛ばすとその武力で子供たちに首を垂れるよう強いる。そして子供たちを言葉で傷つけつつ四人を黙らせ、ライトセーバーで両親に危害を加えると脅すことで協力も取り付けた。

アト・アティンに着陸すると、正式な共和国の使者を騙るジョッドは造幣局の金庫へ入ることに成功する。そこには輝く黄金のクレジット貨幣が山のように積まれていた。ジョッドは歓喜する。四人の子供たちも親と再会し喜びをかみしめる。そして、それを眺めていたジョッドはライトセーバーを起動させ・・・

ジョッドの本性


今回はなんといってもジョッドの行動が大きなインパクトを残した。残虐な方法でブルータスを殺したと思ったら、子供たちを再び裏切り、そして正義の象徴たるライトセーバーでSM-33を破壊、子供たちを脅す始末・・・。私は彼を信じていたのに!私同様彼が最終的に子供を救うと思っていた多くの視聴者が裏切られる形となった。総指揮のジョン・ワッツとクリストファー・フォードにとって「怖い大人」は十八番であり、もちろんその可能性も考慮していたが実現すると驚きがある。

子供たちを脅すどころか罵倒までしたジョッドがここから正義の味方に目覚めるという展開は・・・難しいだろう。親を切り刻むと脅したあの姿を見てから彼を再び信じることは出来そうもない。同時に彼が根っからの悪人であったとも思えない。「俺も迷子なんだ」と叫び複数の偽名を使い分ける姿や、自分が船員から好かれていると子供のように無邪気に信じる今回の姿、子供たちが「過保護に甘やかされた」ことに怒りを爆発させた言動からは、彼が成長してこれなかった複雑な背景を想像させた。四人の子供たちにとって本作で最も身近な大人だったジョッドは、自分たちがなりうる最悪の姿として提示されている

そして、そんな中でジョッドはお金だけを信じ、最終的にお金を求めることだけが生きがいとなったのだろう。今回のジョッドはアト・アティンの財宝にたどり着いたことに歓喜し、本作で一番の笑顔を見せる。この姿は子供たちを思い自分の人生を犠牲にしてでも行動した親たち、すなわちもう一方の大人たちと対照的だ

また、両者はもう一つ別の点でも対比されている。それは働く理由だ。ジョッドはお金のために働いていたが、アト・アティンの大人たちは「大いなる事業」のために働きお金を得るためではなく、作るために働いている。仕事を理由にウィムと向き合わなかったウェンドルでさえ、ただお金を得ようとあそこまで身を粉にしていたわけではない。この大人たちは共和国の崩壊を知らなかったようなので、彼らは虚構の中に生きているともいえる。すなわち、この対比は本作にあるテーマ、現実とおとぎ話の対比とみることもできるかもしれない(これについては次項でも検討する)。

そして今回は、ジョッドが子供たちを前にライトセーバーを起動する衝撃的なシーンで終わった。『EP3/シスの復讐』のアナキンを思い出させるようなカメラワークであり、子供たちの身に危険が迫っていることが暗示される・・・。ただ、ここで親や子供を殺すメリットはないはずなので、子供たちを再び脅しつつジェダイを騙り外部との通信を取るという自分の要求を通そうとしているだけな気はするが。いずれにせよ、ここでもジョッドの邪悪な本性が垣間見える。

果たしてジョッドにはどのような結末が待ち受けているのか。因果応報の罰を受けるのか。秦の悪人としてのずるがしこさを武器にまんまとアト・アティンを略奪するのか。それとも最後は正義に目覚めるのか。7話にして衝撃的な展開となったことで、その結末は予想がつかないものになっている・・・。

崩れ去るおとぎ話


ここ二話のレビューにて、私はおとぎ話と現実の対比について触れてきた。簡単にまとめると、5話ではウィムがおとぎ話から得た力を現実にあてはめる方法を学び、6話ではウィムがそれを実践し同時におとぎ話のようにうまくいかないことも学んだ。そしてこの7話ではおとぎ話という枠組みは破壊される

私含め多くの視聴者がなぜジョッドの本性に驚いたのか。それはこれがスター・ウォーズという枠組み、そしておとぎ話という枠組みの中にあると感じていたからだ。おとぎ話の王道としては、ここまで怪しい雰囲気を醸し出す大人は最後には正義の心を見せるものだ。ハン・ソロやランドが最後は正義へ転向したように。『最後のジェダイ』ではそこを逆手に取った描写があったものの、よもや子供を主人公とした作品として押し出されている本作でも同じことをするとは予想していなかった。本作のおとぎ話的、予定調和的な部分は崩れ去った

ウィムにとってもおとぎ話は崩れ去っている。ウィムにとっておとぎ話の正義の象徴だったライトセーバーは今や恐怖の現実の象徴となる。ライトセーバーの柄と怯える子供たちを映したショットはそんな崩壊を象徴する描写であった。ここ二話を通じてウィムはおとぎ話から得た勇気を活かすようになっており、彼の勇気は今回も<オニックス・シンダー>を一時取り返すきっかけとなったが、最終的に彼は圧倒的な現実の恐怖屈し口を閉ざしてしまう。

本作の目的として、おとぎ話を破壊するというテーマが見え隠れする。先ほども触れたが、アト・アティンの大人たちも「共和国の大いなる事業に役に立っている」というおとぎ話を信じさせられている。共和国はすでに無い。もっと言えば、このアト・アティンは共和国崩壊のはるか昔に忘れ去られている可能性すらある。銀河共和国がアト・アティンの産出する貨幣にのみ頼る前時代的な金本位制に近い貨幣体制を採用しているとは思えない。それに、もしそうならば銀河共和国の後継である帝国はもちろんこの星を訪れるはずではないか。今回共和国の使者の来訪でせりあがった広場に巻き込まれそうになった住民を見るに、住民はその人生で初めて使者の来訪に接するほど銀河から隔離されており、同時に平和ボケしている。本作の最後には、海賊の略奪と共和国の崩壊を目にした大人たちも自分たちが信じていたおとぎ話の崩壊に直面するのは間違いない

海賊の側でもそれが起こる可能性は高い。海賊はタック・レノッド船長の伝説を信じ、そして実際に莫大な富が眠るアト・アティンは実在した。だが、少なくともジョッドが煽っていたように「お金を発行できるから無限の富を得られる」というのは(何度も指摘しているが)明確に夢物語である。そして、「レノッド船長が最後にアト・アティンで略奪した」という彼らが信じていた歌も怪しく思える。略奪の歴史が語られていない以上レノッドは失敗したのではないか(または監理官になった可能性も十分にあるが)。

アト・アティンが「おとぎ話の星」であるという設定により、本作はまるでおとぎ話であるかのような雰囲気が漂っていた。だから、ジョッドは元ジェダイで最後は正義の心に目覚めると視聴者は信じていた。だが、第7話にしてその幻想は打ち砕かれ、今後の展開は読めなくなった。一度おとぎ話を破壊した本作が最終話にてどのような答えを出すのかが楽しみだ。個人的には、おとぎ話の存在のアト・アティンが存在する以上、うまくおとぎ話と現実を両立させるようなオチになる予感がする。最終的には本物のジェダイが救いにくる展開があっても面白い。

最終話では子供たちが大人を導く


次回で本作はいよいよ完結することになる。子供たちはこの冒険でどのような答えを得るのだろうか。伏線としては、キムと連絡先を交換したKBアト・アクランにて学校の大砲の存在を教えてもらったニール、そしてアト・アティンの監理官の正体あたりが残されている。SM-33は頭を切られたのも復活の伏線であろうが、彼が助けてくれてまた解決するのはあまりにもおとぎ話チックな気もする。

間違いなく起こるのは、成長し現実を知った子供たちが無知な大人たちを導く展開だ。アト・アティンの大人はこの星から一歩も出たことがなく、銀河の事情について何も知らない。子供たちは、彼らを導き正しく危険を認識させなければならない。今海賊とジョッドの危険性を知っているのは子供たちだけだ。「もっと耳を傾ければよかった」と反省を述べていた今のウェンドルなら、息子ウィムの言葉を聞くであろう。親子の絆によりアト・アティンは救われるという展開が考えられる。

そして、ここまでたびたびXウィングが登場している以上、アト・アティンの決戦でも新共和国が手を貸してくれるところを期待したいものだ。マンダロリアン・バースの一作として作られている本作であるにもかかわらず、今のところ他の作品との交差はあまりなくバースの一作に連なる意義があまり見えない。最終話で新共和国と関係を樹立するぐらいの展開はあるのではなかろうか。

いずれにせよ、『スケルトン・クルー』は次回で完結することになる。8話はやはり物足りなく感じる。次の一話で果たしてどこまで描かれるであろうか。確かなことは、私はこの『スケルトン・クルー』を大いに楽しんでおり、最終話も楽しむであろうことだけである。

豆知識

嫌な予感がする


ニールの母親ヌーマは「嫌な予感がする」と言おうとするが最後まで言えずに思わる。これは、スター・ウォーズを最も象徴するセリフでスカイウォーカー・サーガ全作に登場する。その直前ウェンドルも『EP4/新たなる希望』の冒頭のC-3POと同じ「聞こえたか?」というセリフを口にする。また、このシーンは、『E.T.』や『ローグ・ワン』を彷彿とさせる流れになっている。

スナップ・ボール


<オニックス・シンダー>上で、ニールとファーンはスナップ・ボールを楽しんでいる。これはニールが第4話で説明したスポーツで、レジェンズ(旧設定群)からの映像化だ。

1139


ジョッドに質問されたドロイドは、旧共和国クレジットの保管庫が1139 個あると答える。これは、ここ以外の気インコが1138個あることを意味し、ルーカスの処女作である『THX-1138』へのオマージュである。スター・ウォーズでは、この1138という数字が何度も使われている。 



画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点

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