- 第6話「また友達がいなくなる(Zero Friends Again)」
- 監督:ブライス・ダラス・ハワード
- 脚本:ミュン・ジョー・ウェスナー
- ユーザー評価★7.5/10 (IMDbより)
あらすじ
惑星ラニューパにて、ジョッドの手から逃れるため四人の子供たちは落とし穴へと落下し、宝物庫の外へと脱出した。しかし、その衝撃でKBが機械トラブルを起こす。ファーンは彼女をすぐに直すとあまり気にかける様子もなく、崖を上って船を取りに行こうと提案する。しかし、KBはそれを断り、「ゴミガニ」に助けてもらおうと主張するウィムについていく。仕方なくファーンはニールを連れて崖を上ることに決め、四人は二手に分かれた。
宝物庫から出てきたジョッドはギュンターとポキットに待ち伏せされ、頼みのSM-33もすぐに無力化されてしまった。Xウィングが海賊を倒そうと駆け付けるも遅く、ジョッドはブルータス船長のもとに連行され、死刑を宣告された。だが、彼は元部下たちにお金を無限に生み出せるアト・アティンのことを語ってその欲を煽り、彼らを味方につけることに成功した。
ウィムとKBが歩いていると、KBが体調に異変をきたす。事故に遭ってからというものKBにはメンテナンスが必要なのだがアト・アティンを離れてから彼女はできていなかった。だが、ファーンに嫌われることを恐れKBは言い出せずにいた。ウィムはその不安をやわらげ、さらに間一髪のところで彼女のシステム停止を阻止する。一方、ファーンはニールの言葉から人の話に耳を傾けることの重要さを知り、考えを改める。
ウィムとKBはゴミガニの母に出会ったが、それは期待したような助けてくれる知的生命体ではなく、その化け物は二人に襲い掛かってきた。そこに牽引船を乗っ取り<オニックス・シンダー>を取り戻したファーンとニールが飛んできて、ウィムとKBを助け出す。一行は再会を喜び、教訓を得たファーンとKBはさらに友情を強固なものとした。だが一難去ってまた一難。<オニックス・シンダー>がスクラップ処理の機械に飲み込まれそうになっていた。四人は慌てて船に乗り込むと、それぞれの役割を全うし、船の外殻を爆破・分離することで脱出に成功する。四人は心機一転再出発し、新たな船も手に入れた。
KBとファーンの仲裁
今回はKBとファーンの仲を中心に四人の子供が一つのチームとしてまとまるという流れであった。短いエピソードながらも子供たちの関係性がより深まり、監督のBDハワードの才能が遺憾なく発揮されていた。
KBとファーンの関係がギクシャクしてしまったのは「言えない」と「聞こうとしない」という二人の性格が悪い意味でかみ合ってしまったからであった。KBは事故を経て前のようには過ごせないのだが、また友達がいなくなることを恐れるあまり自分の弱点について語ることができなくなっていた。ファーンは姉御肌を発揮しようと頑張るあまり意見をくみ上げようとせず周りが見えない傾向があった。
そんな二人を諭すことになったのが、ウィムとニールだ。ファーンとぶつかりつつも彼女と関係性を築けているウィムは、言えばわかってくれるとKBに語る。そして、KBが弱点を抱えていても自分とニールが友達であり続けることを宣言し、彼女の独りへの恐怖をやわらげる。ニールも崖を上る途中でファーンにみんなが君のようにできるわけじゃないと率直に語る。こうして、KBとファーンは大切なことに気づく。
KBの弱点はスパでの任務を嫌がる前回の描写から仄めかされており、さらにそのキャラクターアークはシリーズを通して描かれている。彼女がその弱点をコンプレックスとして抱えていることが今回描かれたことで、KBの子供離れした機械への知識が弱点を強みにしようとした彼女の努力のたまものだとわかり、さらにKBが愛おしくなった。
今回を経て四人は一つのチームへと昇華した。KBとファーンという無二の親友の関係性にも、ウィムとニールが必要だとわかった。そして、それぞれがこの冒険で得たスキルを活用することで、四人は自分たちだけで船を飛ばすことにも成功する。タイトルにもなっている「skeleton crew」とは、その組織を動かせる最低限の数を表した英単語であり、まさに
四人は「skeleton crew」となった。
おとぎ話を現実にするウィム
前回の記事でも述べたが、ウィムはおとぎ話と現実が必ずしも対立するものではないことに気づき、ライトセーバーを手に取る勇気を得た。一方でそれでも現実はそこまでうまく事が運ぶわけではない。セーバーをうまく起動できず、彼はファーンを救うことに失敗する。
そんな経験を経ても彼にはまだ子供らしいおとぎ話を信じる心が残っているようだ。「ゴミガニ」が助けてくれるはずと考える彼は、窮地に都合よく救世主が現れるというおとぎ話を信じているように見える。だが、そんな思いも裏切られ嘆くことになる。「なんでいつも悪い奴を信じちゃうんだ」。彼は再び現実を直視することになった。
だが、ウィムは違う形でおとぎ話の英雄に近づいた。今回彼はKBの命を寸前のところで救う。地味すぎて実感がないようだが、KBは派手なものではなくともこれが英雄的な行動だと告げ、彼を「ジェダイ」と呼ぶ。ウィムはフォースも使えず、ライトセーバーも操れないが、現実的な英雄へと近づいている。
冒険を経て、ウィムはおとぎ話を楽しむだけの子供ではなくなりつつある。現実の厳しさに直面しながらも、その中でおとぎ話の英雄のような勇気を持つことの大切さに気付く。子供の四人ともにスポットが当たっている本作だが、「おとぎ話」であるスター・ウォーズの作品として、ウィムが主人公であることは誰も否定しないだろう。
ジョッドは海賊をだます?
本当はいいやつかも?という期待をことごとく裏切ってきたジョッド。今回も海賊の処刑から免れるため子供たちの故郷アト・アティンの座標を海賊へと売り渡した。海賊が襲来することで、あの星の平和は崩れ去るだろう。このジョッドの行動は悪にしか見えない。
だが、ジョッドの言い分に引っかかるものがある。前回も述べたが、造幣局を手に入れれば無限の富が手に入るというのは間違いだ。貨幣制度は信用によって成り立っている。信用がない海賊が造幣局を手に入れたところで貨幣を発行し続けられるわけがない。なら貨幣の貴金属を狙うのかという話かとも思うが、今回のジョッドはそんな口ぶりではなかった。ジョッドは嘘をついて海賊をだましているのか・・・?
はっきり言ってしまうと、本作の最後にジョッドが子供たちを救う展開になるであろうことは予想がついている。巧みに伏線を張ってきた本作なら、アト・アティンの秘密やジョッドの行動についてもう一ひねりあってもよいと思う。このジョッドの不自然な主張はそんな最後のひねりへの伏線かもしれない。
豆知識
『最後のジェダイ』のエイリアン
スパでジョッドを眺めていたエイリアンは、『最後のジェダイ』のカント・バイトのシーンで登場した歌手アッブラ・モルブロと同じジデク種族である。
ブルータス船長のアジト
ブルータス船長の基地は、共和国軍が使用していたヘブン級医療ステーションだ。このステーションは、アニメ『クローン・ウォーズ』にたびたび登場していた。
ゴミガニ
『スケルトン・クルー』より、“ゴミガニ”のマザーの制作舞台裏が公開🎦
— ジェイK@スター・ウォーズ レンメイ (@StarWarsRenmei) January 3, 2025
EP5でAT-ATのシーンを担当した伝説的なアニメーターのフィル・ティペット創設のスタジオがストップモーションで作り上げた
R2や3POなどのイースターエッグも
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ゴミガニのマザーは、EP5でAT-ATのシーンを担当した伝説的なアニメーターのフィル・ティペット創設のスタジオがストップモーションで作り上げた。このカニが取り込んでいるスクラップには、R2や3POがイースターエッグとして含まれている。
【ドラマ『スケルトン・クルー』のレビュー記事】
筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)
画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点