- 第3話「航行に問題のあるとても面白い星(Very Interesting, As An Astrogation Problem)」
- 監督:デイヴィッド・ロウェリー
- 脚本:クリストファー・フォード、ジョン・ワッツ
- ユーザー評価★ 8.0/10 (IMDbより)
あらすじ
惑星アト・アティン。子供たちが宇宙の彼方へ飛び立った場面を目撃したウィムの父ウェンドルはほかの子の親たちと集まっていた。ファーンの母ファラは自分に言い聞かせるようにドロイドが見つけてくれると語っていたが、子供たちはバリアを超えて宇宙へ出てしまったため発見することはできなかった。しかもそれでもこの星の監理官は法律に従い、外部と接触するつもりはないという。
一方、ポート・ボーゴではジョッド・ナ・ナウッドが、ウィム、ファーン、ニール、KBらを引き連れ営巣からの脱出を試みていた。途中子供たちにせがまれてSM-33を回収しに行ったジョッドは、シルヴォ船長と名乗っていた時代の部下ベンジャー・プラニックに見つかるトラブルに巻き込まれるも何とか抜け出す。子供たちやSM-33はジョッドに不信感を抱きつつも、家に帰るという目的のため彼の友人へと会いに行く。
月の天文台にはフクロウ型のエイリアン、キムが住んでいた。彼女はジョッドをクリムゾン・ジャックと呼び不信感を隠そうとしない。キムは子供たちの話からアト・アティンの場所を特定するが、時間稼ぎをしていたことをジョッドに看破され襲われる。キムは必死にジョッドの危険性を訴え、KBは巧みな交渉の末、彼の本心を聞き出し自分たちの部下にすることに成功した。そして一行は新共和国のXウィングの猛追を逃れ、再びハイパースペースへと突入する・・・
化けの皮が剝がれたジョッドの目的
子供たちを率いて意気揚々と脱出した「ジェダイ」のジョッド・・・。だがその翌日には化けの皮が剥がれ「船員」に成り下がっていたスピード感には驚かされた。結局子供たちを騙しきれずに、「俺もただの迷子なんだ!」と叫ぶ姿は情けないようにも見えるが、彼の弱い本質が見えた気がして私には好印象だった。演じるジュード・ロウ曰く、彼は「子供時代がなかった」人物であるそうでその過去が垣間見える。彼は、大人というよりも成長しきれなかった大きな子供のようだ。
ならば、彼がずっと探していた「大成功(big score)」とはなんなのだろうか。もしかするとそれは富ではなく、銀河から隔離された「安住の地」なのかもしれない。先述の通り、ジョッドには子供時代がなかった。すなわち安心して過ごせる生活がなかったのである。だから、彼はいくつもの偽名を使い、自分を偽りつつ生きてきた。そんな日々に嫌気がさし、ただ平穏な生活を求める・・・。そう考えれば、SM-33を救うなどで子供たちのご機嫌を取り、子供たちと共にアト・アティンに行くことを至上命題にしてるジョッドの行動理念が分かる気がする。子供たちを助けなければ、アト・アティンで受け入れられることはない。彼の行動は邪心に基づくものとはいえ、信頼しても良いのかもしれない。
また、ジョッドがやはり元ジェダイである可能性は十分にありそうだ。彼は明らかにフォースを操れるようで、しかもフォースについても知識がある口ぶりだった。そしてジェダイではないと否定したような言葉も、どこか真実をごまかすようだった。クローン大戦時代、そしてその後の帝国による粛清で安全な子供時代を送れなかった、そしてその後の逃亡の日々から自分はジェダイ失格だと考えている、という流れならば十分に整合性は取れる。
この物語はジョッドという大人が子供たちを率いるという構図ではなく、子供たちと大きな子供の物語だと思うべきだろうか。ジェダイのおとぎ話に憧れていたが真実を知ったウィムと同様に、ジョッドもアト・アティンのおとぎ話に憧れているが、残酷な現実を知ることになるかもしれない・・・
様々な面を持つアト・アティン
相変わらず謎が多い惑星アト・アティン。その不気味さは増すばかりだ。アト・アティンに取り残された親たちは宇宙に飛び立った子供の行方を案じる。だが、「管理官」は外部との接触は法律によって禁じられていることを理由に子供たちを諦めるよう促す。子供の命がかかっている状況で、法律を持ち出すことにどれほどの意味があるのだろうか。しかも年端も行かない子供たちが違法な行動をしたと責めるような口調。これは法律を盾に自らの意向を通そうとする独裁者の手法ではないか。加えて、そもそも「管理官」が存在するのかも怪しく思えてくる。治安を守るのはドロイドの役割として描写されており、その管理官なる人物も人間ではないのでは・・・?
そして、ディストピア感を増す極めつけとして、子供たちは明らかに星の外側について知らない。オルデランが破壊されたことを知らない。Xウィングが希望と正義の象徴であることも知らない。彼らは銀河内戦(EP4-EP6の帝国と反乱軍の戦い)や最新の銀河の情勢について何も知らない。惑星が1000以上も存在することも知らず、コルサントとオルデランぐらいしかないと思っていた。明らかに情報統制がされている。大人たちが語る星の外にある共和国が、今の新共和国を指しているのかでさえ疑問だ。
また、子供たちは別の面からもその不気味さに気づきつつある。彼らは大人たちが公務員や分析官といった職業にしかついていないことを疑問に思う。銀河の外にはいろんな職業があるのに、彼らの親はどうやらお金を分析する仕事にばかりついているらしい。前回の記事でも触れたが私も同様の疑問を抱いていた。孤立した星に金融は必要なのか?おとぎ話の星のはずが、お金と仕事という最も現実的なものがこの星の社会の中心となっている。
そしてアト・アティンは「宝の星」であることも明らかになった。旧共和国時代から続くこの星は、9つあった宝の星の最後の一つであり、銀河から隠されている。今やおとぎ話の中くらいにしか存在せず、キムは子供たちを見て初めてその存在を確信する。一体この地に何が「宝」として隠されているのか・・・。先述した通り、私はその平和な社会こそ「宝」ではという夢も希望もない予想をしているが、本当におとぎ話の通り驚きの何かが隠されている可能性もある。
管理される「ディストピア」、現実的な「金融の星」、そして理想郷としての「おとぎ話」。全く異なる3つの側面を持つこの星は最終的にどんな姿を見せるのだろうか。本作の大きな注目ポイントだ。
KBの魅力
今回はKBの活躍に目を見張る回だった。第一話・第二話では唯一親が登場していなかったが今回登場し、一気にそのキャラクターが明らかになった(余談だがKBは親が両方とも母親であるようだ)。気になるのは彼女の親がその生命反応を確認し、しかも医療的な措置が定期的に必要だと語っている点。彼女には疾患がありそれを補うためにサイボーグ化の手術でもしたのだろうか。ジョッドからも「眠るんだろ?」といじられ、彼女がサイボーグであることが強調される。
しかし、彼女の本質的な魅力はそんな付属物ではない。敵を発見する観察力、ジョッドを追い詰められるだけの冷静さ、暴走しがちなファーンを止めるストッパー・・・。彼女は、この一団の軍師なのだ。ジョッドもその姿を認めており、ファーンとウィムを「お前」呼ばわりした直後に、彼女を「KB」と名前で呼んでいる。
物語を引っ張っていく過激派のウィムとファーン、それに流されるニール。彼らがいなければドタバタは起こらないが、同時にKBがいなければ故郷に帰ることは不可能だろう。スケルトン・クルー(最小人員)の一人として、間違いなくKBは必要だ。キムからいつでも連絡するように言われた彼女の行動次第で物語は大きく変わるだろう。
豆知識
おなじみの船
ポート・ボーゴには、「スター ツアーズ」のスピーダー、スタースピーダー1000 らしき船が泊められている。また、ホンドー・オナカの船であるカトーニ号らしき船も。
ドロイドたち
ジョッドが起動したB-1バトルドロイドは「我々は勝ったのか?」の問いかける。これはクローン大戦の勝敗を聞いているという小ネタだ。また、 『新たなる希望』で初めて登場したドロイドの一種である CZ シリーズ ドロイドも「王子の無事を」と語っており、レイアが登場した『新たなる希望』からの引用だと思われる。
カメオ出演
SM-33を救出しようとするナウッドの試みは、ベンジャー・プラニックという旧友によって中断される。このプラニックの声を演じたのは、『スパイダーマン2』などのドック・オク役で知られるアルフレッド・モリーナが演じていることが明らかになった。彼は『レイダース/失われたアーク《聖櫃》 』にも出演していた。
クリムゾン・ジャック
ジョッドのクリムゾン・ジャックという別名は、1977年に出版されたコミックに登場した海賊の名前からの引用。クリムゾン・ジャックは最近のコミックにて正史化したが、ジョッドとは似ておらずこれも偽名であることがほのめかされている。
門番ドロイド
ナウッドはキムの天文台で 門番のTT-8L/Y7 ゲートキーパー ドロイドに出迎えられる。これは『ジェダイの帰還』のジャバの宮殿に初登場したことで有名。ドラマ『マンダロリアン』にも登場していた。
筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)
画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点