【レビュー・豆知識】ドラマ『アソーカ』第8話「ジェダイと魔女と大提督」:新たな神話の始まり【ネタバレ・あらすじ】

2023/10/05

アソーカ レビュー

t f B! P L
  • パート8「ジェダイと魔女と大提督(The Jedi, The Witch, and The Warlord)」
  • 監督:リック・ファミュイワ
  • 脚本:デイヴ・フィローニ
  • 評価:★8.2/10(IMDbユーザー評価)

あらすじ

惑星ペリディアからの脱出を図るスローン大提督は、イーノックからの報告を受け、TIEファイターの出撃を命じる。モーガン・エルズベスは今までの功績を評価されグレート・マザーたちから力と「タルジンの剣」を授かる。

一方、エズラ・ブリッジャーは、ヒュイヤン教授の手を借りながら、新たなライトセーバーを製作する。そのセーバーは師匠のケイナン・ジャラスのものにそっくりだった。アソーカ・タノは、弟子のサビーヌ・レンと言葉を交わすが、地図を渡したことを咎めることはなかった。彼女は自分の師匠がそうしてくれたのと同じように、弟子を信じることにした。そして、フォースを信じよと告げる。そこにTIEファイターが現れ、シャトルは撃墜される。三人はオオカミ風のクリーチャーに乗って、スローンの元へ向かう。

三人は力を合わせ集中砲火を抜けて、要塞へと侵入する。ナイト・トルーパーも蹴散らすが、グレート・マザーの魔術により、トルーパーはゾンビとして復活する。その猛撃を躱しつつ一行は上を目指すが、「ダソミアのため」に戦うモーガンがアソーカを足止めする。エズラとサビーヌもゾンビとなったデス・トルーパーに苦戦するが、サビーヌがテレキネシスの力を開花させたことで、状況を打破。さらに、エズラをフォース・プッシュして<キメラ>へと送り込む。

だが、サビーヌはエズラと一緒に確実に帰還することではなく、アソーカを独りにしないことを選んだ。二人はモーガンを倒し、ヒュイヤンと共にシャトルでスローンを追跡するが、あと少しのところで逃げられてしまう。師弟はエイリアンたちの移動集落へと戻った。

シン・ハティはライトセーバーを誇示しつつ、ならず者の元へ向かう。彼女も新しい居場所を見つけた。元ジェダイで、大義を求めていたベイラン・スコールは、ザ・ワンズの石像の手の上で思いをはせていた。スローンは銀河に帰還し、魔女たちの入植地であるダソミアへとたどり着いた。エズラは、<ゴースト>を載せた<ホーム・ワン>の元へたどり着き、ヘラ・シンドゥーラチョッパーとの再会を果たす。

アソーカとサビーヌは、エズラを帰すことに成功し、自分たちの行動を後悔していなかった。「居るべき場所」で、前に進み続けることを決意する。アソーカの師であるアナキン・スカイウォーカーの霊体は、二人を優しく見守る・・・

アソーカの心境の変化


不仲だったアソーカとサビーヌ師弟の過去の事情がヒュイヤンの口から明かされた。曰く「戦争の終わりのマンダロア粛清の際に、アソーカはサビーヌが間違った道へ進むことを恐れ、訓練を辞めた」そうだ。サビーヌが暗黒面へと堕ちることを恐れたように聞こえる。第四話ではベイランが「アソーカのせいでサビーヌの家族が死んだ」と語っていたが、これは同じ出来事なのだろうか?ベイランはその出来事の「ある視点からの真実」を告げ、力を与えなかったアソーカを責めてサビーヌに取り入ったのか。二人の口から直接語られたわけではなく判然としないので、今後さらなる描写があるかもしれない。

ただ、二人の師弟関係は改善へと向かった。サビーヌが「間違った道を進んでいる」と考えていたアソーカだが、態度を改めた。アナキンが弟子である自分を信じてくれたように、サビーヌを理解し、その味方で居ることに決めた。第五話のアナキンの教えを経て、自分の中にある(かつサビーヌに植え付けてしまったかもしれない)暗黒面の種への恐れが消えたことも大きいだろう。彼女はようやく「生き続ける弟子は、師匠を超える」ことを理解し、サビーヌが暗黒面に堕ちる心配をしなくなった。

そして、サビーヌはアソーカと一緒に居ることを選んだ。後述するが、サビーヌはエズラに執着しなかった。ヒュイヤンのアドバイス通りに、師弟は二人で一緒に居ることを選んだ。絆を取り戻した二人は、これからは二人三脚で進んでいけるであろう。だが、その選択によって、エズラとは再び離れ離れになってしまった。アソーカは「それぞれが居るべき場所に居る」と語っていたが、このまま別々にそれぞれの戦いを続けるのだろうか。エズラのロザルへの帰還もまだ描かれていないので、いずれはスペクターズの家族での再会がありそうだが・・・?

サビーヌの覚醒の意味と、アナキンの悲劇を繰り返さない理由


要塞へと侵入したサビーヌはフォースに覚醒した。才能がないはずの彼女がテレキネシスを操るという設定への反発も見られるが、これは「どんな人でもジェダイになれる」という原点への回帰であろう。

第一作『EP4/新たなる希望』は、「ただの農夫が銀河を救う英雄のジェダイになる」話であった(父はジェダイだが、物語上で不在の父は自分のもう一つの可能性として機能している)。しかし、『EP1/ファントム・メナス』でミディ=クロリアンの設定が登場したことで、「生まれながらのエリート」以外は、ジェダイになれないと示された。才能が全てという設定は、ある意味残酷だ。ジェダイに憧れている子供も、ジェダイにはなれない。この文脈においては、『スカイウォーカーの夜明け』でフォースを操る力の片鱗を見せたフィンも、「生まれながらのエリート」だったことになってしまい、「ただのストームトルーパーが英雄になった」というテーマが崩壊する

その流れを「修正」すべく、フィローニ監督は「才能の無い」サビーヌがフォースに覚醒する過程を描いて見せた。そもそも『EP4/新たなる希望』において「フォースはあらゆる生命体に流れている」と語られている。この設定はすべての作品に通底しており、プリクエル三部作は悲劇を描くために運命(≒生まれもった才)を強調したにすぎない。また、設定面を見れば、旧ジェダイ・オーダーはフォースを操る才能に特に恵まれた少数を選んでいたとみなすことも出来るだろう。今回の「覚醒」は設定の破壊ではない。原点からの流れを取り戻そうとする意欲的なものだったと私は高く評価している。

また散々繰り返してきたが、本作のサビーヌは、アナキンの悲劇をなぞっていた。アナキンもサビーヌも「死」の運命から家族を救うべく闇の勢力へと助けを求める。アナキンは悲劇的な結末に終わったが、サビーヌはエズラを家へ帰すことに成功する。その違いとは、ひとえに「執着」の有無であろうアナキンは自分がパドメと共に生きることを望んだ。最後は銀河の支配者になる野望すら語り、自分のために家族を生かそうとしていた。一方のサビーヌはエズラと共に自分が「生きる」ことに拘泥しなかった。自分が脱出できる直前になっても、アソーカのために危険を冒した。自分本位な感情ではなく、ただエズラを帰してあげたいという無私の思いやりで動いていたのだ。だから、サビーヌはエズラを「死」から救うことが出来たのだ。

無私の思いやりで人を死から救えるということは、既に本作で描かれていた。第五話にて、既に死んだアナキンは、自分がアソーカと共に生きられないにもかかわらず、彼女を助け「死」から救っていた。この無私の精神こそ、人を「死」から救う真の方法だったのだ(これは、『スカイウォーカーの夜明け』でレイを救うベンでも描かれている)。これこそがジェダイが大切にすべき思いやりなのだ。サビーヌは、それを無意識に受け継ぎ、家族や仲間を想う心は、必ずしも悪に繋がるわけではないと示した。『EP3/シスの復讐』でアナキンが抱いていた「感情」を肯定した。

そのサビーヌが、最後にアナキンの霊体を感じ取るのは自然な流れであろう。サビーヌは、立派なジェダイとなり、アナキンの過ちを繰り返さなかった。ジェダイの継承者としてふさわしい姿を見せた・・・

スローンと魔女たちの同盟


スローン大提督は「帝国のために、銀河の安全のために」自らは戦うことを宣言していた。アソーカを「ペリディアにふさわしい浪人」だと蔑む言動は、裏を返せば脱出する自分にはまだ仕えるものがあると考えているということだろう。彼は「帝国」を支えるべく戦っている

一方、彼の忠実な手下に思えたモーガンは「ダソミアのために」戦っていた。あくまでもダソミアの復興のためにスローンを利用していたに過ぎなかった。また、グレート・マザーたちもスローンによる要塞の破壊には苦い顔をしている。これらを考慮すると、もしスローンがダソミアへ害をもたらすのであれば、魔女たちは裏切るであろう。レジェンズ(旧設定群)において、スローンはノーグリ種族の故郷を復興させるという空約束で彼らを利用していたが、最後にはその嘘がバレて彼らに殺された。正史でも、似たような流れになるかもしれない。

スローンは魔女との同盟によって銀河へと帰還する手段と、不死身の軍団を手に入れている。一方の魔女も、第二の故郷であるダソミアへとたどり着いた。彼女たちは墓場から何かを運び出していたが、エズラの「スローンは魔女たちを起こした」という台詞からすると、冬眠ポッドを運んでいたのかもしれない。魔術を操る魔女が大量に登場すれば、銀河の大きな脅威となるだろう。また、ダソミアはマンダロアと同様に、シス(帝国)が破壊した惑星であることを考えると、この二つの対比にも要注目だ。

愚痴ではあるが、私は本作でのスローンの描き方がやや物足りなく感じている。隙があったり、綻びがあったりするのは人間だから当たり前であり、キャラ像が崩壊しているとは思わないが、フィローニ監督の映画でメイン・ヴィランになるはずのスローンの第一印象としては・・・やはり弱い。彼を初めて見る観客の印象に強く残ったとは言い難いだろう。小説「スローン三部作」や『反乱者たち』で大活躍する様を見てきた人間としては、特にそう思う。いよいよ銀河に帰還したので、スローンのさらなる活躍に期待しておく。

ベイランの野望とシーズン2


ベイランは、権力の循環と戦争を終わらせる「大義のための力」を求めていた。スローンの元から離脱した彼がたどり着いたのは・・・モーティスの神々こと「ザ・ワンズ」の石像だった。ザ・ワンズは強力なフォースの使い手で、バランスを司どる「父」、暗黒面を司る「息子」、光明面を司る「娘」の三柱で構成されていたが、アナキンの来訪で全員が死んだ。この三柱は時空を超越した空間「はざまの世界」の管理者でもある。ベイランが求めていたのはこのザ・ワンズの力、つまり「はざまの世界」の力であろう。この世界を通じてアソーカは死から逃れており、運命をも変えられうる強力な力だ。

『反乱者たち』では、パルパティーン皇帝もこの力を欲し、この世界へアクセスできる存在のエズラを誘惑していた。そして、キャンセルされたエピソード9『Duel of the Fates』(※全編のコミック版はこちら)でも、カイロ・レンはモーティスの神々の力を求めていた。ちなみに後者では、都合の良いおとぎ話の力なんてものは存在しなかったというオチがついている。この作品にはフィローニ監督も携わっているはずで、関係してきそうだが・・・?

ペリディアに取り残されたアソーカ、サビーヌ、ベイラン、シンは、ザ・ワンズの残した力を巡って争うことになるだろう。石像では光を司る神「娘」の顔が破壊されていたが、アソーカは「娘」から命を分けてもらった経験があり、それ以降「娘」の化身の鳥モライに見守られている。彼女は、ザ・ワンズの力を守るキーパーソンとなるだろう。また、この中で中立的な立場となったシンがどう関わってくるのかも見ものだ。

シーズン2に期待・・・と締めたいところだが、シーズン2の制作はまだ決まっていない。正確には、シーズン2はシーズン1の評判次第で作るかどうかが決まると報道されている。ようやく序章が終わって、神話が始まると期待が高まっていたところなので、ぜひ制作してもらいたい。また、ベイラン役のレイ・スティーブンソンが急逝してしまったという事情もある。ベイランは今後の物語に書かせなさそうだが、素晴らしい彼の演技を引き継ぐ俳優をリキャストするのはハードルが高そうだ。

今後は、『スケルトン・クルー』、『マンダロリアン』シーズン4、『アソーカ』シーズン2(あれば)を経て、マンダロリアン・シリーズ全体のフィナーレになりうる映画「フィローニ監督作」が数年以内に公開する。それまでにどのように物語が盛り上がっていくのかが楽しみだ。おそらく『スケルトン・クルー』はペリディアのある銀河を舞台とすると思われるが・・・?スローンの暴れるSW銀河、神話の力が隠された別銀河の両方の物語はどう交差するのだろうか・・・

シリーズ全体の振り返りは、また改めて総評を書くので、ぜひそちらもお読みいただきたい。

豆知識

タイトル

今回の原題は「The Jedi, The Witch, and The Warlord」。これは、「ナルニア国物語」シリーズの第一作「The Lion, the Witch and the Wardrobe(ライオンと魔女)」へのオマージュだ。

魔女の儀式


モーガンはグレート・マザーたちの儀式で強化され、アソーカへと立ち向かう。この魔術による強化の儀式は、『クローン・ウォーズ』でも描かれ、アサージ・ヴェントレスやサヴァージ・オプレスも施されていた。また、死体をゾンビとして操る儀式も、同作において描かれた。

タルジンの剣


モーガンは、タルジンの剣をグレート・マザーたちから授かる。この剣は『クローン・ウォーズ』S6にて、当時のダソミアの指導者マザー・タルジンが所持していたものだ。タルジンは、メイス・ウィンドゥとの戦いでこの剣を使用した。

「やってみる」

アソーカがサビーヌに「フォースを信じろ」と告げると、サビーヌははじめ「やってみる(I try)」と答えた後、「そうする(I do)」と言い直す。これは、『EP5/帝国の逆襲』のヨーダの名セリフ「Do or do not. There is no try.」からの台詞だ。

ゾンビのトルーパー


魔女の儀式により、ナイト・トルーパーはゾンビ化する。レジェンズ(旧設定群)においても、ゾンビのストームトルーパーが登場した。ただし、こちらはウイルスによってゾンビとなった存在で、デス・トルーパーと呼称されていた。エズラとサビーヌに立ちふさがったデス・トルーパーは、もう一つの意味でも「デス・トルーパー」だった。

フォース・ジャンプ

二人のフォースの使い手が協力して、驚異的なジャンプを実現する、通称「スーパー・ジャンプ」は、『反乱者たち』で度々ケイナンとエズラの師弟が使用していた。ちなみに、一時的に師弟のような関係になったモールとエズラも使っていた。

LS-757

エズラがアーマーとコムリンクを拝借したストームトルーパー、LS-757はアニメ『反乱者たち』にも登場していた。マート・マティンの罠にハマったことがある。

ローニン

スローンは、アソーカのことを「ローニン」と呼称する。仕えるべき主を失った日本の侍「浪人」から引用した単語だ。

モライ


戦いが終わった後、アソーカは鳥のモライが飛び去るのを目撃する。モライは、モーティスの神々「ザ・ワンズ」の一柱「娘」の化身だ。アソーカは『クローン・ウォーズ』で「娘」から命を分けてもらって生き延びており、それ以来このモライに見守られている。

ザ・ワンズ


ベイランが乗っていた石像は、モーティスの神々ザ・ワンズのもの。ザ・ワンズは強力なフォースの使い手で、バランスを司どる「父」、暗黒面を司る「息子」、光明面を司る「娘」の三柱で構成されていたが、石像において「娘」の顔は破壊されている。

惑星ダソミア

惑星ダソミアが初の実写化。この地は、ナイトシスターの移住地であり、第二の故郷とも言える惑星だ。レジェンズ(旧設定群)の小説『レイアへの求婚』で初登場した後、『クローン・ウォーズ』にも登場した。ダース・モール、アサージ・ヴェントレス、メリン、モーガン・エルズベスらの出身地でもある。



筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

画像は、『アソーカ』(2023年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点。出典 出典

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