資料から読み解く、ジョージ・ルーカスのエピソード7案①:ルーカス指揮下の制作と、彼の失望

2023/02/18

映画 論考&解説

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ルーカスとミッキーマウスのサムネ

ディズニー製スター・ウォーズ映画の第一弾、『フォースの覚醒』は世界中で空前の大ヒットを記録した。しかし、スター・ウォーズの生みの親であり、ディズニーにスター・ウォーズを売却したジョージ・ルーカスは、自身が提案した「エピソード7」案の大部分が破棄されたことで、不満を募らせていた。2018年にルーカスは、こう語り、悔しさをにじませている(ソース本)。

「最初から最後まで、ジェダイやフォースなどの物事がどのように起こるかというコンセプトは、用意されていた。だが、私はそれを完成させることができなかった。人々に話すこともできなかった。

もし私が会社に残ろうとしていれば、それを完成させることができただろうし、実際に完成させていただろう。もちろん、多くのファンは『ファントム・メナス』等と同様に、それを嫌っただろう。だが、少なくとも、最初から最後までのストーリーが明らかになった

シークエル三部作(EP7~EP9)をルーカス抜きで制作したディズニー社は、ルーカスのエピソード7案について言及を避けている。だが、スター・ウォーズのファンならば、ルーカスがここまで言う、そのエピソード7案の内容が気になるところだ。

そんなご要望にお応えするべく、この記事を執筆した。断片的な資料を収集し、ルーカスの「エピソード7」についてまとめた。長くなり、記事を分割することになってしまったが、そのぶん丁寧だと思ってご容赦いただきたい。

この記事では、以下の5つについて取り扱う。日本語としては最も詳細な情報となるだろう。ソースについては、URLリンクを参照してもらいたい。また、情報提供や疑問がある場合は、執筆者ジェイK(@StarWarsRenmei)のDMまでご連絡いただけるとありがたい。

今回の要旨

➡ルーカスは、ディズニーへのスター・ウォーズ売却に向け、仲間と共にエピソード7、エピソード8、エピソード9の大枠を制作していた。買収当時、ディズニー上層部はルーカスのエピソード7案を高く評価していたが、制作初期の2013年初頭に、その大部分の破棄を決定。ルーカスは大きな失望を抱くことになる。ルーカス自身には、描きたい具体的なアイデアがあった。

ルーカスが制作を決断

オリジナル三部作の公開後、スター・ウォーズは「九部作」になるという情報を各メディアが報じていた。一方、スター・ウォーズの生みの親であるジョージ・ルーカス監督は、『EP3/シスの復讐』を制作した後の2008年の段階では、『EP6/ジェダイの帰還』後を自身が描く可能性を真っ向から否定している(ソース)。

EP6の後で、語るべきストーリーなど無い。映画はアナキン・スカイウォーカーとルーク・スカイウォーカーの物語であり、ルークが銀河を救い、父親を悪の力から解放したとき、その物語は終わっている」

ルーカスはしばしば発言を軌道修正することで有名だが、この時点ではアニメ『クローン・ウォーズ』や実写ドラマ『Underworld』の計画に力を入れており、これは本心からの言葉だろう。

また、2012年1月にはルーカスは、スター・ウォーズ映画をこれ以上自分が作ることはないと明言している(ソース)。

「いつもみんなは、私に怒鳴ってきて 、なんてひどい人なんだと言ってくる。どうしてこんな状況で、これ以上のスター・ウォーズ映画を作ろうなんて思うんだ?

しかし、最終的にルーカスは自身のエピソード7案を制作した。では、いつ心変わりしたのだろうか。それは、彼の引退の決断と同時期であろう。2011年5月、ディズニーCEOのボブ・アイガーはジョージ・ルーカスに、ルーカスフィルム売却の可能性について質問した(ソース本)。この時点で、ルーカスは判断を保留したものの、直後に決断を下し、2012年6月には後任としてキャスリーン・ケネディがルーカスフィルム社の共同代表に就任した。これがエピソード7の実現に向けた第一歩だ。

後にルーカスは、2012年から制作を開始したことを明かしている(ソース本)。

「2012年時点で、私は次の3部作に着手していた。俳優たちと話し合い、ギアを上げていた。だが、妻との間に娘が生まれようとしていた。エピソード1からエピソード3を作るのには、1995年から2005年まで、10年かかっていた。(中略)69歳の私が、残りの人生でこの仕事を続けるのか?もう一度あのような経験をしたいのだろうか?最終的に、娘を育てて、しばらくは人生を楽しみたいと思ったんだ」

また、ルーカスフィルムの共同代表だったキャスリーン・ケネディは、「ジョージは、自分が考えているストーリーのスケッチを描いていたが、それは会社の売却のために描いたもので、実際に映画製作に取りかかるための資料ではなかった」と述べている(ソース)。

さらに、当時から制作の中枢に位置し、現在では作品全体を統括する立場のパブロ・ヒダルゴも「ルーカスは会社を維持するために、作りたくもないエピソード7に着手した」と推察している(ソース)。当時は、六部作の3D映画での再公開計画は崩壊し、ドラマ『Underworld』の制作はとん挫し、『クローン・ウォーズ』は中止に追い込まれかけており、商品の販売数も減り、公開した映画『レッド・テイルズ』は興行的に大失敗していた。

ルーカス自身は濁しているものの、時系列や関係者の発言を鑑みると、エピソード7の制作は、2012年10月のディズニー社による買収が前提となっていたことが分かる。一方、ルーカスが、次の三部作の制作に取り組んでいたことは事実だ。次は、その制作の体制を見てみよう。

ルーカス指揮下の制作

前述のとおり、ジョージ・ルーカスがエピソード7の制作を開始したのは2012年ごろだ。2012年5月、ルーカス、キャスリーン・ケネディ、サイモン・キンバーグ、マイケル・アーントはルーカスフィルムにて、シークエル三部作についてのミーティングを行った(ソース)。この時点で、アーントは、エピソード7、エピソード8、エピソード9の執筆を依頼された。また、いずれかの段階で、『EP5/帝国の逆襲』と『EP6/ジェダイの帰還』の脚本家であるローレンス・カスダンも、サポートに加わった(ソース)。後にエピソード7の脚本を任されるカスダンだが、この時点での彼の主な担当は、映画『ハン・ソロ』であった。

2012年8月のイベントにて、ジョージ・ルーカスはルーク役のマーク・ハミルと、レイア役のキャリー・フィッシャーに接触し、二人に続編の三部作への出演を打診した(ソース)。二人は快諾し、さらにハリソン・フォードの同意も得られたために、計画は前進することになる。

その後、ルーカスは、脚本家のマイケル・アーント、コンサルタントのローレンス・カスダンらと共に温めてきたエピソード7、エピソード8、エピソード9の大枠をディズニー社の幹部に披露した。「ストーリーテリングの観点から、多くの可能性を持っている」その内容に、ボブ・アイガーCEOは歓喜し、ルーカスフィルム社の価値は跳ね上がった(ソース)。

そして、2012年10月。正式に、ディズニー社は、スター・ウォーズの権利を持つルーカスフィルム社を、買収するこを発表(ソース)。同時に、エピソード7、エピソード8、エピソード9の制作も発表した。この買収で、ディズニー社は、ルーカスに計40億5000万ドルもの大金を支払うことになった。

ボブ・アイガーCEOと共にスター・ウォーズ売却の手続きを行うジョージ・ルーカス

この時点で、脚本家のマイケル・アーントは、40~50ページに及ぶ草稿(フィルム・トリートメント)を完成させ、ディズニーに提出しているソース)。これがエピソード7だけの草稿なのか、シークエル三部作全体の草稿なのかについては情報が錯綜しているが、ディズニーCEOのボブ・アイガーは「次の三部作のために、かなり広範で詳細なトリートメントを行った」と述べて(ソース、同上)おり、またルーカス自身も「エピソード7、エピソード8、エピソード9、そしてその他のたくさんの映画のストーリー・トリートメントを持っている」と言及している(ソース)ため、続編の三部作の全体像が渡されたことに疑いの余地はない。

買収時、ジョージ・ルーカスは、今後の新規スター・ウォーズ映画で「クリエイティブ・コンサルタント」を務めると発表された(ソース)。その後の2013年1月時点でも、キャスリーン・ケネディ社長は「(ルーカスは)私のヨーダ」だと言及し、彼が引き続きコンサルタントを行うことも確認していた(ソース)。だが、ルーカスはディズニー社に「裏切られる」ことになる。

ルーカスの排除と彼の失望

制作陣の発言やコンセプトアート(ソース)を見るに、制作の最初期の2013年1月時点では、ジョージ・ルーカスのエピソード7案に基づいた制作がまだ行われていた。しかし、直後にディズニー社とキャスリーン・ケネディ社長は大きな決断を下す。ルーカスのエピソード7案の大部分を使用しないことを決定したのだ。

ケネディ社長、JJエイブラムス監督、脚本のマイケル・アーントがその事実を伝えると、ルーカスは大きなショックを受けた。ディズニー社のボブ・アイガーCEOは、契約上の問題がないと前置きしつつも、「ルーカスは動揺し、失望し、裏切られたと感じていた」と振り返っている(ソース本)。ルーカスはコンサルタントを辞め、スター・ウォーズから距離を置いた。また、出来上がった『フォースの覚醒』を見せられても、「世界、キャラクター、物語に新しいものがない。映像的にも技術的にも飛躍が足りない」と落胆し、プレミアイベントへの参加も渋るほどだった(同上)。公開前には以下のような発言を残し、自身のエピソード7案が放棄され、ディズニー社と決別したことを公にした(ソース)。

ディズニーは、ストーリーを見て、<ファンのためのものを作りたい>と言った。観客は、スター・ウォーズが、宇宙船の話ではなく、メロドラマで、家族の問題を描いていることに気づいていないんだ。だから、彼らディズニーはそんなストーリーは使いたくない、自分たちでやると決めた。だから、私も決めた。<結構だ。私は私の道を進み、彼らは彼らの道を進むことにしよう>と。」

また、撤回し、謝罪こそしたものの、ディズニー社を「白人の奴隷商人」に見立て、スター・ウォーズの売却への後悔をにじませた(ソース)。もちろん、文脈としては冗談だが、彼の本音が垣間見れる。

「私はスター・ウォーズが大好きだ。私が作り、とても親密に関わってきた。そして、これらを<白人の奴隷商人>に売ってしまった。そして・・・(笑) 」

以上の発言や情報を見ると、ジョージ・ルーカスは自分のエピソード7案やシークエル三部作のプロットが放棄されたことに不満を抱いているようだ。そして、冒頭で引用したように、彼のエピドート7では「最初から最後までのストーリーが明らかになった」。つまり、彼自身には、放棄されたエピソード7で語りたい完成されたアイデアがあったのだ。前置きが長くなったが、ようやく本題だ。そのルーカスのエピソード7案がどのようなものだったのか、資料から紐解いていこう。

次回:ルーカスがエピソード7で描こうとした、ミクロな生態系に属する「ウィルズ」、そして「共生」、「フォースのバランス」について。

付録:エピソード7制作の時系列

2011年5月 :ディズニー社CEOのボブ・アイガーが、ルーカスフィルム買収を持ちかける
             :ルーカスがEP7の制作を決断、キャスリーン・ケネディに声をかける
2012年5月 :エピソード7の脚本家として、マイケル・アーントを招聘
2012年6月 :キャスリーン・ケネディがルーカスフィルム社の共同代表に就任
2012年8月 :マーク・ハミル、キャリー・フィッシャーと出演交渉
?       :EP7、EP8、EP9の大枠が完成。ディズニー社幹部に披露
2012年10月 :ルーカスフィルムが買収、大枠のプロットの受け渡し
2013年1月 :コンセプトアーティストたちが、具体的な制作に取り組み始める
?     :ルーカスのエピソード7案の大部分の破棄
2013年11月 :アーントに変わり、エイブラムスとカスダンが脚本の執筆を開始
2014年5月 :主要な撮影が開始
2014年11月 :撮影が終了
2015年12月 :『フォースの覚醒』が公開

参考文献

筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

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