【レビュー・豆知識】ドラマ『アコライト』第7話「選択」:予想を裏切る「衝撃」と人間臭いジェダイ【ネタバレ・あらすじ】

2024/07/11

アコライト レビュー

t f B! P L

  • 第7話「選択(Choice)」
  • 監督:コゴナダ
  • 脚本:チャーメイン・デグラーテ、ジェン・リチャーズ、ジャスミン・フローノイ

あらすじ

第3話と同じ16年前の惑星ブレンドク。この惑星はかつてのハイパースペース災害で不毛の地となったが、たった100年で生態系を回復していた。ジェダイは、フォースの集中(ヴァージェンス)があると睨み、マスター・インダーラとそのパダワンのトービン、そしてソルケルナッカを派遣した。だが、まだ若いトービンは一向に結果が出せずイラつく。そんな彼に自分を重ねるソル。

ある日、ソルは無人のはずのこの地でフォースを操る双子の少女、メイオーシャを見つけた。二人は怪しげな魔女の集団に属しており、マザー・コリルマザー・アニセヤの監督下に置かれていた。魔女が子供たちに危険を及ぼすことを危惧したソルは、インダーラを説得し、魔女の儀式に乗り込む。アニセヤはトービンの欲望を煽り操ることで抵抗を試みるが、メイがジェダイに力を見せたいと希望し、インダーラも冷静な対応をしたことで二人は試験を受けることになった。

ソルはオーシャと特別な繋がりを感じ、自分の弟子になる運命だと考えるが、インダーラは自分の願いと他人の願いを混同するなと彼にくぎを刺す。メイはジェダイの試験にわざと落ちようとする。魔女への介入に否定的なインダーラはそれを受け止める。だが、魔女に否定的なソルは、オーシャにはアドバイスを施し、彼女のジェダイへの道を作る。だが、インダーラは評議会の拒否を理由にオーシャを連れて行くことに反対し続ける。その時、トービンが衝撃の事実を発見する。メイとオーシャは完全に同じ血液を持っており、二人は人為的に造られたとしか思えないのだ。その陰にジェダイたちは「フォースの集中」の力を見出し、手柄を焦るトービンは双子を確保しようと走り出す。

ジェダイになりたいというオーシャの望みを母マザー・アニセヤは叶えようとする。だが、コリルはメイを煽り彼女の出発を阻止しようとする。ソルはオーシャに危険が迫っていることを察知し、砦に乗り込む。対峙するジェダイと魔女。トービンとコリルの間で緊張が高まり、アニセヤが防ごうとしたところで、ソルは彼女を刺してしまった。そして、アニセヤには害意はなかったと知る。しかし、戦いの火ぶたは切って落とされた。駆けつけたケルナッカは魔女に操られ、ソル、トービン、インダーラの三人でなんとか収める。だが、双子の安全確保は遅れ、ソルはオーシャかメイかのどちらかしか救えない状況に追い込まれた。そして、ソルはオーシャを選ぶ・・・

ソルもトービンも自らの行動を悔いて、評議会に報告しようとする。だが、インダーラはすべてを失ったオーシャから夢まで奪う行動に強く反対する。結果、一行は今回の詳細を伏せ、オーシャをコルサントへと連れて行く・・・

ファンの妄想を壊す再びの「衝撃」


3話と対応した今回で、事件の真相が明らかとなった。その真相はファンの肥大化した妄想から大きく外れるものであった。結局、お互いの小さなすれ違いの積み重ねがこの大きな悲劇を生んだ。期待外れと感じる人もいるかもしれないが、登場人物たちもファンと同じように肥大化した妄想を持っていたという構図は、十分に検討された興味深い展開であった。

主人公格のソルはジェダイの4人の中でもひときわ自分の思い込みで行動し、すれ違いを積み上げていく。コリルが双子を危険から遠ざけるために家に帰そうとする場面、アニセヤが双子の訓練のために厳しく接している場面を目撃し、その僅かな材料と彼女たちが魔女である事実だけで、双子が虐げられていると勘違いした。そして、自らが儀式を中断した結果であるとも知らず、マークが刻まれていないオーシャの身を案じ始める。さらに、メイのアセンションを説明する言葉が(母アニセヤの言葉よりも)やや過激だったことから、その勘違いは加速し取り返しのつかない事態へと進んでいく。これもすべて、彼がジェダイの世界観を強く信じていたからだろう。

一方の魔女もジェダイたちを勘違いしている。ジェダイは「フォースの集中」を探している中たまたま双子を魔女の儀式の直前に発見しただけだったが、ジェダイを危険視するアニセヤは「ジェダイはなんでもお見通しのはずだ」と過大評価し、彼らが双子を攫いに来たと身構える。そしてコリルは、危険に陥っているオーシャを助けるため、そして暴走気味のトービンを止めるためにやってきたジェダイを攻撃だと誤認する。第3話時点では観客も魔女の視点から見ていたのでその勘違いも理解できる。かくいう私もジェダイの人さらいの要素として「オーシャの血液サンプルを勝手にとるトービン」を批判していたが、これも「メイに痛くないと言ったのに痛がられたから今度は違う方法を試した」にすぎなかった。私もジェダイ批判の文脈に飲み込まれていたようだ。

両者のすれ違いは、ジェダイが再び砦を訪れた場面で決定的な悲劇をもたらす。過激派であるコリルとトービンが武器を手に取る。わが子のメイに危険が迫ることを危惧したアニセヤは娘を逃がすために魔術を使おうとするが、それを攻撃だと勘違いしたソルは彼女を刺し殺してしまうソルには、自分たち以外のフォースの技に関する理解が欠落していた。そして、両者には決定的な溝が生まれる・・・

この両者のすれ違いの根本にあったのは、お互いの世界観だろう。彼らは自らの信念を信じ、世界を見る目を歪めていた。特に彼らはお互いにフォースを信仰する宗教チックな存在であり、自分たちの世界観を信じる傾向は顕著だ。前回のレビューで指摘したが、本作の悪役ストレンジャーは反宗教的な思考が垣間見えた。今回も、その宗教批判という文脈の延長線上にあっただろう。

宗教の中で生きる人々はその世界観によって、ものの見方を曲げてしまう。だが、それは、宗教だけに限った話ではない。何らかの信念や思い込みは誰しもが持っているものだ。観客の期待をあえて裏切りつつそれを強調する本作は、かつての“大問題作”『最後のジェダイ』に並ぶ「衝撃のスター・ウォーズ」だ。

欠点ばかりの人間臭いジェダイ


前回からほのめかされていたとはいえ、ソルの愚かな人間性を実際目にすると驚きがあった。指摘されていたように、彼は、あまりにも思い込みが激しいタイプだ。トービンの持つ不満に自分を重ね、ジェダイにあこがれるオーシャに自分を重ね、勝手に自分の思いを押し付けていく。オーシャを見つけて付いていき、繋がりを感じるだの、弟子になる運命だのを言い出す様は気色悪さを感じざるを得ない。しかも、それが「欠点ゆえに弟子がいない」とインダーラから指摘された直後であり、小さなプライドが傷つけられたから躍起になっているのか?と勘ぐってしまう。挙句の果てには、あれだけ思い入れがあったはずのオーシャとメイを見間違えるのである(しかもこれは16年後もやっている)。その執着からインダーラに付いていって魔女を刺激し、その見間違いからアニセヤを刺し殺したわけで・・・この悲劇の根本には、ソルの勝手な思いがあったのは否定しがたい。

自分のアクセサリーとして弟子が欲しいだけで誰でもいいのか?ジェキはその代わりなのか?とすら思いたくなる。・・・が、そこまで悪人でもないのだろう。本人としては虐待から少女を救うために肩入れしているに過ぎず、彼なりの理解できる正義はある。前項で指摘したような宗教で見方が歪んでいるという欠点はありつつも、根は善人だろう。


今回、株を落としたのがもう一人。パダワンのトービンだ。彼はコルサントに帰りたいという一心で、魔女には心を操られ、しまいには一人で暴走して双子を攫おうとする。感情移入がしにくい動機で事件の発端となる彼にはヘイトがたまる。だが、彼が「帰りたい理由」はホームシックというよりは、時間を無駄にすることへの焦燥だろう。彼はこの任務が無意味だと感じるとたびたび漏らしていた。

たびたび指摘してきたが、本作のジェダイはエリート官僚の様相を呈している。ヴァーネストラは優秀な人間はコルサントにいるべきだというような考えでソルを引き留めようとし、実際に自分もコルサントで政敵との戦いに明け暮れる(前回モグが彼女の出陣に驚いたのがその証左)。貧民から這い上がった彼がそのような思想に毒されて、エリートたる自分の肉体労働を許せなくても無理はない。そして、その思いを今度はアニセヤが煽る。優秀な善なるジェダイでしょ?彼のコルサントへの思いは暴走し始める。そして、その暴走はソルと同じ方向を向いたことにより悲劇につながる・・・

トービンが「ただ家に帰りたい」という思いで、ジェダイと魔女の戦いを招き多くの死をもたらしたのは、もちろん愚かなことだ。彼がその失敗に思い悩み、死を選ぶことも理解はできる。だが、まだ若い彼は周りから影響され、それを煽ってきたのもやはり周りなのだ。思い悩み死を選んだことは悲劇に思え、別の道がなかったのかと考えてしまう。

また、今回のジェダイは皆が少なからず失敗している。ソル、トービンは前述したが、ケルナッカは魔女に操られ、そしてインダーラもソルとトービンの暴走を止められない。また、今回の描写ではこのインダーラが理性として描かれていたが、よくよく考えるとインダーラこそが主犯である。評議会に自首しようとするソルとトービンを止め、事件を闇に葬ったのは彼女だ。そこにオーシャのためを思ってという枕詞がついたとしても、トービンは罪悪感に苦しみ続け、メイの復讐劇も生んだわけで、全肯定はしがたい。さらに深読みすると、そもそも双子のことを評議会に報告したという言葉すら怪しく思えてくる。双子という事実はジェダイの情報に残っていなかったはずでは・・・?深読みしすぎかと思う一方、インダーラも自分の信じる正義のためなら多少の不正に目をつむるキャラとして描かれているようにも思える。

そして、ソルの決定的な人間臭い過ちは、最後に描かれる。ソルは、メイとオーシャの二人が落ちそうになっている場面に駆けつける。力が足りない彼では、二人を救うことが出来ない。そして、ソルは自分の弟子になりうるオーシャを選ぶ。"好き嫌い"で救済対象を決めるのは理解はできるものの、より達観すべき正義の騎士ジェダイとしてあるまじき姿だろう。彼は、我々と変わらない一人の人間に過ぎないと強調される。

今回は、前項の宗教による世界観の問題だけでなく、それぞれの人間臭い欠点が強調されていた。本作はジェダイ批判ではあるが、ジェダイのすべてを否定するわけではなく、ジェダイである人々の問題とするのは上手い着地点であるように思える。実際に前回オーシャが語っていたように「ジェダイ以外のフォース感応者の在り方は認められない」という考えは、評議会を含めたジェダイたちの統一見解ではなく、ソルの考えのようだ。今までとの整合性も取れた上で、ジェダイの問題点をあぶり出す良い選択だ。

スピンオフとして連なる本作


本作の総指揮のヘッドランドは、今までの制作陣の中で最もスター・ウォーズのスピンオフに触れてきたオタクだろう。それ故に本作はスピンオフとしての側面が強く、同時にスピンオフでの展開を念頭に置いている。人気キャラのジェキやヨード、ケルナッカをあっさりと殺し、おそらくすべての謎を詳細に語るつもりはないであろう点は、スピンオフ書籍でおいおい描けば良いと思っていそうだ。この姿勢はオタクには受け入れられる一方、なじみのない一部からは反発もされそうだが・・・。そして、特に本作がスピンオフとして強化している「本編」は、やはり『EP1/ファントム・メナス』と『最後のジェダイ』だろう。

ソルの愚かさが今回強調されたが、これは同時に彼のモデルとして明言されているクワイ=ガンの株を上げることにつながっている。クワイ=ガンも弟子にしたい子供を見つけたが、彼は過度な感情移入をするより、アナキンの自主性に身と運命をゆだねる。そして、第5話のソルとは対照的に、一目見ただけで赤いライトセーバーの存在がシスだとも気づく。本作は、スピンオフとして物語を補完するものであり、時には本作のキャラの株を下げることもあるのだろう。

そして、Vergenceという概念の再登場も印象に残った。これは、EP1からの単語で、本来はフォースが集中する場所を指す言葉だ。ダゴバやオク=トーがそれにあたる。それがアナキンという人間の周りにあるから、アナキンは異例で選ばれし者なのだ。双子に父親がいないという双子の設定だけでアナキンが貶められたとの主張はやはり早計だっただろう。双子がVergenceの力から作られたとしても、Vergenceそのものであるアナキンに力では遠く及ばないはずだ。しかし、とても興味深い設定だった。Vergenceが周りに生命をもたらすなら、なぜそのものであるアナキンはタトゥイーンという不毛の地に住んでいるのか。アナキンがフォースの力を吸い上げているのか?そして、双子とアナキンにはVergenceという共通点があるわけで、アナキン誕生の秘密にも繋がりそうだが。・・・双子と言えば、もしかしてVergenceから生まれたメイとオーシャは、同じくVergenceから生まれたルークとレイアと本質が同じか?

そして、『最後のジェダイ』は言わずもがな。今回は明確に『最後のジェダイ』のオマージュとしてファンの膨らんだ妄想をぶち壊し、各キャラの印象を180度変えようとしてた。そして、オーシャの夢を、すなわちジェダイの伝説を壊さないように最後までふるまうジェダイも、最後には英雄を選ぶルークのオマージュだ。その行動が悲劇に繋がるというのは、『最後のジェダイ』が出した結論とは別の方向に向かっているようにも思えるが、『最後のジェダイ』を再考する機会を与えてくれたのは間違いない。

この単体だけで見ると、かゆいところに手が届かないような印象もある。だが、本作はスター・ウォーズという世界最大のユニバースに連なる一作として確かな存在感を放ち、「本編」を強化し、ユニバースが広がる幅をもたらしている。本作を経たスター・ウォーズは、さらに味わい深くなるものだと確信している。

豆知識

ヌーナ

ジェダイ一行が食べていた鶏肉は、ヌーナのもの。『EP1/ファントム・メナス』や『クローン・ウォーズ』に登場した二本足の鳥型クリーチャーだ。

ウーキー


鶏肉を焼くケルナッカという構図は、ポーグを焼くチューバッカのオマージュ。二人のウーキーを演じたのは、どちらもヨーナス・スオタモだ。そして、「ウーキーを怒らせるのは賢くない」というのは、『新たなる希望』のハン・ソロの忠告のオマージュ。

ハイパースペース災害


100年前にブレンドクを襲ったハイパースペース災害とは、書籍シリーズのハイ・リパブリックPhase1に登場した災害。ハイパースペース航行中の船が針路上の物体に衝突し各地に破片が飛び散った。結果、甚大な被害がもたらされ、ハイパースペース・ルートの利用にも障害が生じた。

ナイトシスター

魔女と聞いたトービンは、ナイトシスターかと疑う。ナイトシスターとは、『アソーカ』でも実写化したダソミアに住んでいた魔法を操る魔女を指す言葉だ。ヴェントレスの出身部族でもある。

フォースの集中(Vergence)


Vergenceとは、インダーラが説明していたように、フォースが集中している場所を指す言葉。『EP1/ファントム・メナス』では、人であるアナキンに「フォースの集中(Vergence)」があると指摘されてきた。そのほかには、コルサントのジェダイ聖堂やダゴバ、オク=トーにあるのもこの「フォースの集中」とされる。

ボナダン

トービンの出身地として言及された惑星ボナダンは、レジェンズ小説に登場していた惑星で、コーポレート・セクターに属していた。幻のEP9『Duel of the Fates』でも舞台になっていたことで、記憶に新しい。今回の翻訳では「ボナドン」と表記されていた。

M値


ジェダイは、双子のM値を調査するために血液サンプルを取る。M値とは、ミディ=クロリアン値のこと。『マンダロリアン』や『バッド・バッチ』で使われていた単語だ。

『羅生門』

今回の構成は、黒澤明監督の『羅生門』から影響を受けており、一つの出来事を第3話と第7話で相反する2つの視点から描いている。

筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2024年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点

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