【レビュー・豆知識】ドラマ『アコライト』第6話「指導/堕落」:ストレンジャーの過去と怪しさを増すソル【ネタバレ・あらすじ】

2024/07/04

アコライト レビュー

t f B! P L

  


  • 第6話「指導/堕落(Teach / Corrupt)」
  • 監督:ハネル・カルペッパー
  • 脚本:ジェイソン・ミカレフ、ジョスリン・ビオ

あらすじ

未知の惑星で目覚めたオーシャ。気絶した彼女は、カイミールという偽名を使っていたダークサイダーのザ・ストレンジャーによってこの惑星に連れてこられていた。ストレンジャーを倒そうと武器を手に取るオーシャだが、その巧みな言葉にほだされ、彼と敵対するわけでもなく惑星に残る決断を下した。

一方、オーシャに成りすましたメイマスター・ソルに武器を突きつけようとする。ソルはジェダイ聖堂に救難信号を送ろうとするが、不調でうまくいかない。彼は再起動へ向かい、机を殴りつけ、感情をあらわにする。今回の件は彼の心に傷をつけた。オーシャだと思い込んでいるメイに思わず抱き着き弱音を吐くほど弱っていた。 ストレンンジャーはオーシャの心を確実にえぐっていった。オーシャがいくら愛を注いでもジェダイは振り向かず、オーシャはその渦巻く感情からジェダイから失格だとみなされたと指摘する。そして、すべてを失ったからこそ、自由になれると説く。元ジェダイだと語る彼の言葉をだんだんと受け入れていくオーシャ。やがてストレンンジャーは自分と向き合うために感覚を遮断するコートシス(コルトシス)のマスクをかぶるよう促す。オーシャは信用できないと拒否するが、彼は自分自身を信じろと答えた。 メイはバジルに正体を気づかれ襲撃されつつも、ピップを初期化し船の修理を終わらせることに成功した。そしてようやくソルから事件の話を聞き出せそうになるが、そのタイミングで船が再起動し、ソルは再び口をつぐむ。メイはジェダイにすべてを告発しようとコックピットへ駆け出し・・・ソルに気絶させられた。ソルは逃亡を図る。 ソルと入れ違いで惑星コーファーには、惑星コルサントから急行したヴァーネストラ・ロウ率いるジェダイの救助チームが到着した。彼らはライトセーバーで殺された死体を見つける。モグ・アガナはソルの犯行を疑うが、ヴァーネストラには違う考えがあるようだった。
メイが目覚めると両手をソルによって拘束されていた。解放してと訴える彼女だが、ソルは過去の話を語りだす・・・。一方、オーシャはあのマスクを自らかぶっていた。あの象徴的な呼吸音を思い出させる音が鳴り響く・・・

ストレンジャーの過去と『最後のジェダイ』


まずは、ストレンンジャーの過去について。どうやら彼は「大昔」にジェダイだったようだ。それがどれほど昔なのかはわからないが、ソルに「俺を覚えていないのか?」と語り、ソルも「懐かしい感じがする」と語っていたことから、この二人は知り合いだったのではないか。そして、ストレンンジャーの顔を覚えていないということは、子供のころにジェダイから離れたのか?この告白が嘘だという可能性もないわけではないが、セーバーの構えや聖堂での訓練に詳しかったことから、真実に思える。

そして、その鞭でつけられたような背中の傷。これ見よがしにライトセーバー・ウィップが披露されたので、もはやヴァーネストラ・ロウの仕業にしか思えない。ハイ・リパブリックで若かりしころの彼女を知っている身としてはそう思いたくないが、本作はストレンンジャーの正体といい割と素直な伏線を敷いてくるで、やはり・・・?ただ、ジェダイ・マスターにやられたのか?との問いに答えなかった点は気になるが。

オク=トーのような島といい、エンドクレジットのカイロ・レンのテーマといい、今回は『最後のジェダイ』のオマージュにあふれた回であった。師に裏切られたストレンンジャーというのも、カイロ・レンと重なる。背中の傷ということは不意打ちの可能性があり、寝込みを覆われたベンとそっくりだ。そして、仮にファンに愛されてきたヴァーネストラがその傷をつけたとしたら、我らがルークが寝込みを襲ったことと同じ構図になる。本作は、再び『最後のジェダイ』をしようとしているのか

後述の豆知識の項でも語っているが、この惑星はオク=トーではない。しかし、総指揮のヘッドランドはあえて寄せたと語っている。わざわざそのようなことをした意図とは・・・?レイとオーシャが重なることで彼女が愛や教えを求めているであろうことを強調するような効果はあったと思うが、この意図の答えは最終話の後まで出せそうにない(追記:だが、後述するように「おとぎ話の破壊」というテーマは呼応している)。しかし、シークエル三部作から最も時代設定が離れた実写映像作品で、シークエル三部作の引用をしたのは称賛したい。これにより、本作自身に文脈を付与するにとどまらず、シークエル三部作、スカイウォーカー・サーガにも新たな視点をもたらした。スター・ウォーズとは常に広がり続ける文脈で新たな発見を得られる世界最大のSFシリーズなのだ。その面白さをヘッドランドはよく理解している。さすがのオタクだ。

二人の正反対の師


ストレンンジャーは元ジェダイである(と主張する)自分とオーシャを重ね、巧みに彼女を「指導」していく。彼の主張は2つ。「自分と向き合え」「自由になれ」だ。あえて文字通りの裸をさらすことで自分が無抵抗だと示す(書いていて思ったが、これが自由の象徴である面もあるか)。それでも攻撃してこないことをジェダイに囚われていると指摘し、以降彼女の「解放」を目指す。

「怒りに裏切られている」。ストレンンジャーはそう語り、彼女の感情がその思考とは違う方向に進んでいることを指摘する。ようやくオーシャが口を開き、何より「愛」を望んでいたことが明らかになる。マスターのソルに対しても、そして妹弟子のジェキに対しても。しかし、愛することが禁じられているジェダイにいくら愛を注いでも愛は返ってこない。そのうち、愛されないという恐れが怒りにつながり、暗黒面を見出されオーシャは失格だとされたのだろう。ストレンンジャーはそのことを肯定し、自由を得る糧にせよと促す。オーシャは自らがジェダイ失格となった事実を受け入れはじめ、そしてさらに自分に向き合うべくあのマスクを被った。すべてを遮断し、彼女が気づく内なる事実とは・・・。展開的には、彼女は事件の事実を目撃することになるだろう。口を酸っぱくして言っているが、『羅生門』の影響が本作にはあると語られており3話は「ある視点からの真実」にすぎないのだろう。ということは、オーシャはメイの言葉通り本当にジェダイに洗脳され、別の記憶を植え付けられていたのかも?

ストレンンジャーは自らと向き合うことをソルにも要求していた。彼曰く「ソルは自分の闇を受け入れていない」。確かに今回のソルは、明らかに事実の露呈を恐れていた。今までは評議会に事実を隠し、そして告発しそうになるメイをも阻止した。最終的に彼はメイを拘束し、一方的に話を進めようとする・・・今までの懐が深い温厚なソルへのイマージは消え去り不信感が募り、ストレンンジャーの方が人間として成熟しているように思える。ストレンンジャーがオーシャに自由を与えているのと対照的に、ソルがメイを拘束しているのも心証が非常に悪い


が、ソルが本当に悪い奴なのかといえばそうでもないのではないか。今回ソルはひどく打ちのめされたことで、その人間性が垣間見えた。そこにあったのは人間らしい弱さだ。オーシャに扮したメイに対して思わず抱き着き、「私を救ってくれた」と本音を語る。中年男性が急に距離を詰めるのはある種の気持ち悪さを感じさせる演出ではあるが、同時に彼がオーシャを愛し、そしてその存在に支えられていたことが伝わってきた。今までジェキと距離を保っていた姿とは対照的だった。その姿をもう少し早く見せていれば、オーシャが愛を渇望することはなかったのではないか。

さらに、自由を与えているとみれば良い師に見えるストレンンジャーだが、彼は巧みにオーシャを操っているにすぎない。その倫理観を嘲笑し、ジェダイ失格となったトラウマを刺激し、自分の負の感情に目を向けさせようとする。それを暗黒面だと指摘されても「だからなんだ」と飄々と返し自信を見せることでねじ伏せようとする。そして何より、彼の目的はオーシャを利用することにすぎないはずだ。彼が欲するのは「2つの力」であり、メイの代替品としてオーシャを欲するに過ぎない。(たとえ二人へのアプローチが全く違ったとしても、だ。素顔が露呈したから戦略を変えるのは当然だろう)

また、ストレンンジャーは自分でほのめかしているほど完ぺきではないだろう。前回、彼はフォース・ヒーリングを披露した。ヒーリングはその特性からライトサイドの技であるとされており、そこにまで精通しているという描写は衝撃的だった。だが、今回、オーシャの傷は治りきっていないと描写された。いくら悟っている風に見せても、そこには限界がある。果たしてストレンジャーに対して、過度な期待を持って良いのだろうか。


話はやや逸れるが、彼の求める「二つの力」とは当然シスの「二人の掟」につながるのであろう。『スカイウォーカーの夜明け』のセリフにて、パルパティーンも「二つの力」を欲していた。ここでいう「二つの力」とは、レイとカイロ・レンの持つダイアドの力のことだ。実は、シスの「二人の掟」とはこのダイアドを人為的に作り出す目的があったと設定されている。本作においては、魔女のセリフに登場した「二人の力」だが、それはスター・ウォーズで誰もが求める最も強力な力を指すのだろう。そして、それを欲して弟子を求めているということは、ストレンンジャーがシスの関係者であるのはまず間違いない。

ストレンジャーは飄々と安定した態度で、オーシャに自分で考え、自分の中の闇を受け入れるように「指導」する。ソルは深く傷つき、不安定になり、メイを捕らえるという「堕落」を見せる。今回のタイトルを素直に見れば、この二人はこう見えるだろうが、果たしてそうなのだろうか。ストレンジャーは誘導し徐々に洗脳しているのではないか。ソルは自分のためだけに事実を隠そうと画策していたのか。その答えは、次回明かされるであろう。

夢の中で生き、目を曇らせるジェダイ


「望みで目を曇らせた」。メイはソルがストレンンジャーの正体を見抜けなかった原因をそう指摘する。この回で、これはもう一度強調される。ヴァーネストラとともに惑星コーファーへと向かったモグは、ライトセーバーで殺された死体を見て真っ先にソルにあらぬ容疑をかける。それは、ダークサイダー、ましてやシスの犯行よりはるかに納得できる、安心できるからであろう

彼らは自分たちが見える世界で物事を考え、目を曇らせている。オーシャもこの世界観に囚われていた。丸腰や復讐は許されないという倫理観だけでなく、訓練しないとフォース感応力が消えるという間違った知識さえも植え付けられていた。これは、そう思わせた方がジェダイにとって都合がよいというだけでなく、そうであってほしいという願いでもあるはずだ。

ソルはメイから「ジェダイになることで(オーシャが)自分を捨てることになった」と聞き、驚いたような反応を見せる(脱線するが、ソルはメイがオーシャになりすましていると「彼」の話をしたときに気づいたのだろう。普通なら「ピップを見つけた」と受け取るところで、メイは「ストレンンジャーを見つけた」という意味に捉えかけ、一瞬固まってしまった)。我々一般人から見ると、ジェダイになるということは一般的な愛(すなわち愛着をも含む愛)を捨てる出家生活に見えるが、自分たちの世界しか知らない彼らはその差に気づくことはない。

この「望みによる目の曇り」はどんどんと拡大し、ジェダイの破滅をもたらす。ジェダイはシスによる共和国への侵入も、オーダー66とクローン・トルーパーに仕組まれた陰謀にも気づくことが出来なかった。「暗黒面で曇っている」とヨーダは捉えていたが、それは「ジェダイの思うように世界が動かなくなった」だけではないか?彼らが周りと共有していた世界観、言い換えれば「夢」が破壊され、すべてが見通せなくなった。そういう意味で、ストレンジャーによる「夢を殺す」計画は、ジェダイの破滅へと繋がるのかもしれない・・・

追記 『最後のジェダイ』引用の意味:おとぎ話の破壊

前項で語ったジェダイの「夢」とは、まさに「おとぎ話」と同義であろうオーシャのような子供に広めた「おとぎ話」をジェダイ自身も信じることで目を曇らせ、自らの首を絞めるという構図ではないか。そして、本作でストレンジャーは、夢を殺す、すなわち「ジェダイのおとぎ話」の破壊を目指す。

そして、これが「おとぎ話」の破壊(と再構築)を目指した『最後のジェダイ』のテーマと呼応する。詳細は私が書いた『最後のジェダイ』のレビュー:「現代のおとぎ話を破壊した『最後のジェダイ』に見る、現代への警鐘とルーカス哲学の継承」を読んでもらいたいが、『最後のジェダイ』と同様に、本作『アコライト』もここまででおとぎ話の限界を描いているように思える。そう思うと、『最後のジェダイ』の引用は必然であった。

同時に、ストレンジャーからは無神論的な虚無主義を感じる。彼は自由になりたいと語る。だが、その先に何があるのか?彼は何をしたいのか?自分らしくと言えば聞こえはいいが、倫理を冷笑する彼に、その後の明確なビジョン、それこそ「夢」があるのかは疑問だ。彼は、倫理観や未来の指針を示す「大きな物語」を否定する。それは、現代風にいえば無神論であろう。

ただし、ストレンジャーが完全否定されていると言いたいわけではない。特に宗教が未だに社会に絶大な影響を及ぼす現代アメリカ等では、必ずしも無神論者が非道徳的ではない。ストレンジャーが自ら語るように、社会にステレオタイプを植え付ける「大きな物語」では居場所がないマイノリティの人々がいるのも事実だ(宗教で弾圧されているマイノリティの具体例としては、アメリカにおける性的マイノリティを見ればわかりやすい)。魔女の集団やジェダイを通じて、本作では宗教の負の側面も強調されており、ストレンジャーへの共感は高まる。

いずれにせよ、本作とは「夢」、「おとぎ話」、「宗教」といった「大きな物語」をストレンジャーが否定する構図であることは強調しておきたい。繰り返しになるが、その否定は必ずしも悪ではなく、時に居場所がない人に手を差し伸べることでもある。スター・ウォーズという「おとぎ話」は「おとぎ話」の正の側面を肯定してきたが、そればかりで良いのかという疑問もつきまとう。本作は、さらにその問題に分け入っていく一作となるだろう。

(一回文章が消えて追記を諦めかけたが、あまりに不完全燃焼なレビューになってしまったので追記)

豆知識

未知の惑星


今回登場したものの名前が明かされなかった「未知の惑星」。一部ではオク=トーなのではという憶測があったが、早々に総指揮ヘッドランドが否定し、この地はコートシスの産地の別の惑星だと述べていた。ならばと、ファンの間で有力になっているのが惑星ボルデムニクであるとする説だ。この惑星は、小説『ダース・プレイガス』にてダース・プレイガスが自らの師であるテネブラスを殺した惑星だ。コートシスの産地として有名で、レジェンズの2Dアニメ『クローン大戦』にも登場していた。

クリーチャー


今回初登場したクリーチャーのスクーラは、脚本では「一部がアリクイ、一部がアヒル」だと書かれていた。

ヴァーネストラの設定


ヴァーネストラがハイパースペースを旅することに苦手意識を持っているのは書籍シリーズ「ハイ・リパブリック」で描かれてきた設定。また、彼女のライトウィップも書籍で登場している。そして、自分の船には、かつてのパダワン、イムリ・カンタロスの名前を付けている。ここら辺の要素が描かれた小説シリーズは、翻訳されているので要チェックだ!

議員

ヴァーネストラの話すアベドネドの元老院議員はチュワント(Chuwant)議員アベドのキャラクターには、ビースティ・ボーイズのディスコグラフィーの名前をつけるという伝統を守り、この議員は "So What'cha Want "のフレーズから名付けられた。

感覚を遮断するヘルメット

ストレンジャーは、聖堂でもコートシスのような感覚を遮断するヘルメットがあったと指摘する。これは、『EP4/新たなる希望』でルークが行ったような訓練を指していると思われる。

カイロ・レンのテーマ

前回は、ストレンジャーがフォース・ヒーリングを使う場面で流れていたカイロ・レンのテーマだが、今回はエンドクレジットで流れている。総指揮のヘッドランド曰く深い意図があるそうだが、今は言えないとのこと。

筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei

画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2024年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点

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