なぜファンはスター・ツアーズを記録するのか――1000回乗った二人が同人誌に残したもの

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スター・ツアーズ・クロニクル書影

前編では、約40年にわたって変化してきたスター・ツアーズの歴史と、そこから生まれた「乗る、探す、記録する」というファン文化を追った。今回は、その体験を一冊の本へ記録した同人誌『スター・ツアーズ・クロニクル』の執筆者、えーてぃーさんとウェルズさんに話を伺った。筆者も設定監修として一部携わっている。

えーてぃーさんのSAWG(えーてぃーさん提供)

えーてぃーさん(X)は、スター・ツアーズの調査や考察を続けながら、搭乗データを集める「スターツアーズ確率検証」や、情報をまとめた「スター・ツアーズ Wiki」を運営している。名前の由来にもなったAT-ATは『帝国の逆襲』をきっかけに好きになり、「歩く姿は動物のようで可愛らしく、倒れ方はコミカル」でありながら、圧倒的な強さも併せ持つところが魅力だという。その視線はスター・ツアーズにも向けられ、ホスやクレイトでは一体ずつウォーカーの動きを追っている。

ウェルズさんのLEGOマンダロリアン(ウェルズさん提供)

ウェルズさん(X/YouTube/Instagram/Booth)もXを中心にスター・ツアーズの情報を発信しており、スター・ウォーズのファン歴は約17年。スター・ウォーズ セレブレーション ジャパンでは、「世界中のファンに自分の“好き”を共有できたら」と、自身の原点であるスター・ツアーズとLEGOを掛け合わせた「LEGOマンダロリアン」のコスプレで参加した。重量や壊れやすさには苦労する一方、同じものを好きなファンに気づいてもらえることが一番の楽しさで、「同じファンの方とお話すると疲れも吹っ飛びます」と語る。

そして二人には、もう一つ共通点がある。スター・ツアーズへの搭乗回数が、どちらも1000回前後に達しているそうだ。まずは、そこまで二人を引きつけたスター・ツアーズとの出会いから聞いていこう。

スター・ツアーズから、スター・ウォーズへ

Q. スター・ツアーズを好きになったきっかけを教えてください。初めて乗ったときのことや、印象に残っている思い出はありますか?

えーてぃーさん:

初めて乗った時の記憶は残っていませんが、当時スター・ウォーズを観たことがなかったにも関わらず、初代スター・ツアーズを閉園間際に何回も乗ってから帰る、というのを子供の頃からやっていたので、相当好きなアトラクションだったんだと思います。

リニューアル後、初めて『アドベンチャーズ・コンティニュー』に乗ったことでスター・ツアーズをもっと好きになり、スター・ウォーズを観始めるきっかけにもなりました。C-3POがパイロットになるという展開は当時の私にとっては新鮮で、「他のパイロットが出てくるストーリーもあるはずだ、何回も乗って確かめてやる」と考えていました。(実際にはC-3PO以外のパイロットは登場しないので、ただの考えすぎでした)

ウェルズさん:

初めては旧スター・ツアーズで、身長制限ギリギリで乗ったのを覚えています。特に印象に残ったこととしては、スター・ウォーズも知らず、小さい頃だったので本当に宇宙に行ってしまったのではないかと思って怖がってたことですね(笑)。

初めて乗った時は怖さの方が強かったんですが、その後に親からレゴ スター・ウォーズを買ってもらったことと、NHKで『クローン・ウォーズ』が放映していたことがきっかけで、連鎖的にスター・ツアーズにハマりました。おもちゃ、アニメ、そしてアトラクションで同じコンテンツを体感してると、相乗効果で子供ってすぐハマっちゃうと思うんですよね。メディアミックス戦略の強さといいますか(笑)。

何より、SFが小さい頃から好きだったので、スター・ウォーズの世界は自分にとって凄くマッチしましたね。実は、アカウント名のウェルズは、私が小さい頃に愛読していたH.G.ウェルズに由来しているんです。SFの父によって、SFに対する好奇心が人一倍強くなっていました(笑)。

前編ではスター・ツアーズを「銀河への入口」と表現した。今回話を聞いた二人は、どちらもスター・ウォーズをよく知った上でスター・ツアーズへ向かったわけではなかった。先にアトラクションへ乗り、そこから映画やアニメ、玩具へと興味を広げている。スター・ツアーズは、実際に二人をスター・ウォーズへ連れていった入口だった。

その入口へ何度も戻るようになると、やがて見えてくるものも変わっていく。

Q. スター・ツアーズで特に好きなシーンや場所、キャラクターはありますか? キューラインやドロイド、音楽、アナウンスなども含めて教えてください。

えーてぃーさん:

『アドベンチャーズ・コンティニュー』で訪れる惑星ホスのシーンがお気に入りです。ゲストの乗るスタースピーダー1000は戦闘に巻き込まれてしまうのですが、こちらを的確に撃ち抜いてくるAT-ATや『帝国の逆襲』と同じように足を取られて転倒するAT-ATなど、様々なAT-ATを一人称視点で観ることができます。

惑星クレイトでもAT-M6に混じってAT-ATの姿を確認できるのですが、この時の動きも非常に面白いので、次に乗った際は1体ずつの動きに注目してみるのがオススメです。

ウェルズさん:

特に好きなシーンは、アクト2(2番目に登場する惑星)のクレイトですね。エピソード8のクレイトの戦いが元ネタになっていて、洞窟のシーンからスキー・スピーダーのシーンまで体感することができます。

クレイトには多くの好きなポイントがあります。特に映画の洞窟のシーン自体が旧スター・ツアーズの彗星に突入するシーンから影響を受けているという点で、元々スター・ツアーズにゆかりのあるシーンが観れることからお気に入りです。

更に、クレイトの戦いのBGMにはEP4『新たなる希望』の「Ben's Death and TIE Fighter Attack」のアレンジが入っていたり、レジスタンスと共にファースト・オーダーに立ち向かうシーンがあるなどアツいポイントが非常に多いです。また、スタツアファンにはお馴染みの名シーンがあるのも注目ですね。

その名シーンとは、ハックス将軍がスター・ツアーズに向かって「愚か者め」と言ってくる場面なのですが、3POとの掛け合いやセリフ選びが絶妙で、ファンに愛されるシーンとなっています。「愚か者」というワードがディズニーパークで多用されているセリフであること、ハックス将軍のキャラクター性、そういったところも人気の理由だと思います。

ウェルズさん提供

1000回乗ると、何が見えてくるのか

好きな場面を一度体験するだけなら、1000回も乗る必要はない。しかし『アドベンチャーズ・コンティニュー』では、乗るたびに目的地や登場人物が変わる。さらに同じ場面にも細かな差異がある。何度も乗ること自体が、まだ見ていないものを探す行為になっていく。

Q. これまで何回くらい乗っていますか? 自分でも「そこまでやるか」と思ったエピソードがあれば教えてください。

えーてぃーさん:

乗った回数をカウントし始めたのが2019年頃からなので正確な数は不明ですが、それ以前も含めると1000回近くは乗っていると思います。1日に乗った回数の最高記録は33回で、その日は食事とトイレ以外の全ての時間をスター・ツアーズに捧げました。

もっと上を目指せると思っているので、いつか記録更新に挑戦したいです。

ウェルズさん:

1000回は越えると思います。正確に記録し始めたのは割と最近なのでぴったりは答えられませんが(笑)。

基本的にどんな乗り物でも酔わない体質なので、レアシーンを見るためにとか、このシーンを見たいという思いでトイレも行かずに無限周回してしまったことはあります。どれだけ試行回数を増やせるかが鍵なので(笑)。

二人がこれほど繰り返し乗る理由には、『アドベンチャーズ・コンティニュー』へのリニューアルそのものも大きく関係している。

Q. 初代スター・ツアーズと『アドベンチャーズ・コンティニュー』で、魅力はどう変わったと感じますか? 新版で増した魅力、逆に初代から失われたと思うものがあれば教えてください。

えーてぃーさん:

乗るたびに異なるストーリーを体験できるシステムが導入されたこと、これに尽きます。何度も乗ることでより多くの惑星やキャラクターとの出会いを楽しむことができ、映像の追加によって最新作の要素も取り入れることができるこのシステムは、今なお新たな物語を紡ぎ続けているスター・ウォーズの長い歴史を表現するのにピッタリだと感じています。

初代スター・ツアーズはキューラインをはじめとする全体的な雰囲気がとても良かったと思っており、リニューアルによってスタイリッシュさが強まったことで「ゴチャゴチャしていて寂れた宇宙港」感が薄れてしまったのは少し残念です。

ウェルズさん:

大きな魅力としては、多くのパターンが見られるアトラクションになったことが挙げられると思います。現在、1000以上のパターンが一つのアトラクションで楽しめるという点は、ディズニーアトラクションという括りだけではなく、世界中のテーマパークを見ても極めて稀なアトラクションではないのでしょうか。

ただパターンが多いだけではなく、レアシーンの存在や時系列ごとにパターンの組み合わせが調整されていたり、新作が公開されればシーンの追加も行うという、ゲストをずっと飽きさせずに楽しませる工夫も素晴らしいですね。

一つのパターンだった旧スタツアから、多くのパターンに加えて、将来的に新しいシーンも無限に追加することが可能になったアトラクションは新版になって良くなった点で一番大きいと思います。また、キューラインのアライバルホールやコンコースの映像、AC-38やアリー・サン・サンなどの新たなキャラクター達の登場も良かったですよね。

勿論、旧スタツアのキャラクター達も魅力的ではあったのですが、彼らに負けず劣らずのキャラクター達を生み出してくれたのは凄いと思います。みんなキャラが立っていますよね(笑)。

何度も乗ることは、単純に同じ体験を繰り返すことではない。まだ見ていない場面を探し、一体ずつAT-ATの動きを見比べ、前回との違いを確かめる。そうして二人は、乗るだけでなく、それを「記録する」側へ進んでいった。

なぜ、スター・ツアーズを記録するのか

二人が制作に携わった『スター・ツアーズ・クロニクル』には、アトラクションの設定や登場人物だけでなく、シーンごとの差異や細かな背景まで記録されている。では、なぜそこまでしてスター・ツアーズを残そうと思ったのだろうか。

Q. なぜスター・ツアーズをここまで細かく記録しようと思ったのでしょうか? 『スター・ツアーズ・クロニクル』を作ろうと思ったきっかけや、「これは残しておきたい」と感じた瞬間があれば教えてください。

えーてぃーさん:

インターネット上でスター・ツアーズについて調べていると、根拠に乏しい、あるいは最新ではない書き込みや記事が多く見受けられることに気づきました。このような情報を参考にして誤った情報が拡散されることを防ぐため、何らかの形で正確な情報を発信したいと思うようになりました。

そんな中、東京ディズニーリゾートに関する様々な同人誌が集まるイベントに参加したことで、「書籍に情報を残す」ということの重要性を感じたことが執筆に至ったきっかけです。

ウェルズさん:

きっかけはスペース・マウンテンのクローズですね。その時に、自分の好きなアトラクションもいつかクローズする日が来る、という思いが強くなり、何かにスター・ツアーズを記録しなければと考えました。

最初はブログやTwitter等に残す形でも良いと思っていたのですが、ネットだとプラットフォームがサービス終了してしまうと記録が全て消えてしまうリスクがありました。ネットよりも永く記録を残せる物として、紙媒体での制作を考えました。本であれば、同人誌でも国会図書館で永久に保存してくれるので、この国が無くならない限り、記録を保存し続けられるんです。

同じ本を作った二人でも、記録を残そうとした出発点は少し違っている。えーてぃーさんにあったのは、情報をできるだけ正しく残したいという意識だった。一方のウェルズさんが強く意識したのは、できるだけ長く残したいということだった。

前編でも触れたように、テーマパークは映画とは異なる。映画なら公開から何十年経っても同じ映像を再生できるが、アトラクションは改装されれば、その場所にあった空間や体験そのものが失われる。では、もしファンが何も残していなかったら、何が失われるのだろうか。

Q. もし誰も記録していなかったら、スター・ツアーズから何が失われていたと思いますか?

えーてぃーさん:

『スター・ツアーズ・クロニクル』に載せているような情報は、アトラクションや文字資料を確認すれば誰でも知ることができるものがほとんどです。

しかし、ランダムなシーンに関して「どのシーンが出やすい、出にくい」といった話は情報を集めるのがかなり難しく、その点を本に残すことができたのは非常に大きいと思っています。

一人で一度乗っただけでは知ることのできない情報がある。100回、1000回と体験し、複数の人間が記録を持ち寄ることで初めて見えるものもある。スター・ツアーズを記録することは、単に一つのアトラクションの説明を書き残すことではない。

変わり続けるものを、どう記録するのか

『スター・ツアーズ・クロニクル』を作るためには、すでに知っていることを文章にするだけでは足りない。スター・ツアーズそのものがリニューアルやアップデートを繰り返す以上、過去には正しかった情報が現在も同じとは限らない。一方で、調べる過程そのものが新しい発見につながることもある。

Q. 『スター・ツアーズ クロニクル』のために調べる中で、初めて知ったことや、スター・ツアーズの見え方が変わった発見はありましたか?

えーてぃーさん:

初代スター・ツアーズのキューラインで働いているドロイド達について、恥ずかしながら今回の調査で初めて名前や設定を知ったドロイドが多くいました。それと同時に、初代で使用されていた個体の多くが新版にも流用されていることに気づきました。両アトラクションのつながりを感じられる良い発見でした。

ウェルズさん:

作るために新たに調べたことはそんなに多くはないのですが、調べれば調べるほどキューラインの作り込みが圧倒的なアトラクションだと思いましたね(笑)。

本編に負けず劣らずキューラインの充実度が高く、クロニクルを読んでいただく際にもぜひ読んで欲しいポイントですね。

Q. 調査や執筆で、特に大変だったことは何ですか? シーンの確認、細かなセリフの違い、資料集め、時系列や設定の整理など、印象に残っている例があれば教えてください。

えーてぃーさん:

画像資料の収集が特に大変でした。せっかく本にするのだから文字だけでなくビジュアルにもこだわりたいと思い、画像をいくつか掲載することにしたのですが、キューラインが暗く撮影が難しいこと、執筆時点でライド本編の撮影が許可されていなかったことなどが悩みの種でした。

以前に訪れたギャラクシーズ・エッジの画像を掲載するなどいくつか抜け道を用意しましたが、いずれはもう少し分かりやすい画像資料に刷新できればと考えています。

ウェルズさん:

資料集めも意外と既に持っていた物が多かったので大変では無かったのですが、当時はアトラクション本編の撮影禁止だったので、シーンの確認が全て記憶頼りだったことが一番大変でしたね。記憶頼りな中、本には正確な情報を載せなければいけないプレッシャーがきつかったです(笑)。

そのため、通常シーンとレアシーンの違いは本当にここだけなのか?という疑問を常に持ちながら執筆していました。当時はレアシーンの確率も低かったので、検証がなかなか思うように進まずで……(笑)。

ウェルズさんが直面した「記憶頼りの中で正確な情報を載せる」という問題は、そのまま『スター・ツアーズ・クロニクル』を作る上でのもう一つの課題につながる。何を「確かな情報」と判断するのか。

Q. 情報をまとめる上で、何を「確かな情報」と判断しましたか? 資料の選び方や、確認するときに意識した基準があれば教えてください。

えーてぃーさん:

スター・ツアーズ関連情報は書籍やリーフレット、ウェブサイトなど様々な媒体から発信されていますが、スター・ツアーズがリニューアルやアップデートを繰り返している関係上、それらに記載された情報は現在と異なる可能性があります。

一方、アトラクション本編やキューラインで確認できる情報は訪れた時点での最新かつ正確な情報です。これを念頭に置いた上で、文字資料についてはスター・ウォーズ正史に該当するものや東京ディズニーリゾート公式から発行されたものを中心に参照しております。

さらに、スター・ツアーズの場合は事実を確認するだけでは終わらない。初代は制作時に『ジェダイの帰還』直後の「エピソード6.5」として位置づけられた一方、『アドベンチャーズ・コンティニュー』では異なる時代の出来事が一つのライドに共存するようになった。スター・ウォーズ全体でも2014年に設定の再編が行われている。

記録するためには、それらをどう整理するかも考えなければならない。

Q. 時系列や正史上の位置づけが複雑なスター・ツアーズを、どのように整理していますか? 初代の「エピソード6.5」から、複数の時代が混ざる新版まで、調べて感じたことも教えてください。

えーてぃーさん:

基本的には正史で語られた内容が全てであり、それ以外は足りない部分を埋めるピースのような位置づけであるというのが個人的な見解です。

現在、スター・ツアーズは初代・新版ともに正史から除外されていると考えられていますが、「スター・ツアーズ」という企業自体は設定上確かに存在しますし、登場するビークルやドロイドなどが正史作品に採用されることも増えてきています。

初代に登場する第三デス・スターや、新版の様々な時代を旅するストーリーをそのまま正史に取り入れるのは難しいと思いますが、今後も何らかの形で拾ってくれることを期待しています。

調べ、比較し、記録することで、それまで単に「乗っていた」スター・ツアーズの中にも新しいものが見えてくる。そして、その記録は次に乗る時の体験も変えていく。

ウェルズさん提供

本を持って、もう一度スター・ツアーズへ

Q. 『スター・ツアーズ・クロニクル』の中から、次に乗るときにぜひ見てほしいポイントや豆知識を一つ挙げるなら?

えーてぃーさん:

キューラインでG2-9Tがスキャンしている乗客の荷物には様々な元ネタがあり、『スター・ツアーズ・クロニクル』では全ての荷物の画像を載せた上で元ネタについて詳細に解説しています。

ぜひ本書を片手に荷物検査をじっくり見ていただきたいです。思わぬ隠れキャラクターや面白い荷物を発見できるかもしれません。

興味深いことに、ウェルズさんもスター・ツアーズの中で好きな場所として、同じG2-9Tの荷物検査を挙げている。

 ウェルズさん:

あとはキューラインでいうと、G2-9Tの荷物検査シーンですね。彼の検査シーンに散りばめられた小ネタの数がとんでもないんですよ。スター・ウォーズに関するネタだけではなく、ディズニー作品、ディズニーパークに関するネタまで含まれており、見ていてずっと飽きないポイントです。このシーンを担当した人達と無限にお話できると思います(笑)。

さらにウェルズさんは、ライド本編にも『スター・ツアーズ・クロニクル』を片手に見てほしいポイントがあるという。

 ウェルズさん: 

ライド本編のシーンですね。ただ色んなシーンに注目してほしいというだけではなく、シーン自体にも多くの小ネタがあったり、レアシーンとの違い、細かいセリフ、揺れなど、色んな観点で楽しんでほしいです。

例えば、コルサントのシーンにはスター・ウォーズだけではなく、トゥモローランドの小ネタもあります。読んだら乗りたくなるような小ネタが多くのシーンにあるので、ぜひ本を現地に持っていって、すぐ確認してみてほしいですね(笑)。

記録とは、過去のものを保存するためだけにあるわけではない。本を読んでもう一度宇宙港へ入れば、以前は気づかなかった荷物やドロイド、表示へ目が向く。一度は背景として通り過ぎたものが、次の搭乗では見るべき対象になる。記録したものが、次の体験をまた変えていく。

スター・ツアーズだからできること

映画やドラマなら、観客は基本的に画面の外から物語を見る。スター・ツアーズでは、自分自身が旅行会社の乗客になる。その違いを、実際に何度もスター・ツアーズを体験してきた二人はどう捉えているのだろうか。

Q. あなたにとって、スター・ツアーズはスター・ウォーズの中でどんな存在ですか? 映画やドラマとは違う、このアトラクションならではの魅力も教えてください。

えーてぃーさん:

宇宙旅行会社スター・ツアーズのフライトを利用する乗客としてスター・ウォーズの世界に没入できることが唯一無二かつ最大の魅力です。

乗客の中に反乱軍のスパイがいるという演出も没入体験を後押ししています。第三者の視点で物語を俯瞰するのではなく、自分たちが物語の主人公になれるという体験は他にありません。

ウェルズさん:

スター・ツアーズはスター・ウォーズの世界をゲストがありのままの姿で楽しめる唯一無二の存在だと思います。特に、スター・ツアーズはゲストが反乱軍やレジスタンスでもなく、ただの旅行客、一般市民の視点でスター・ウォーズの世界を楽しめるアトラクションなのが魅力で、スター・ウォーズ作品を見ていなくても楽しめるのはそういったゲストの立ち位置も関係していると思います。

映画やドラマと違い、事前知識も必要なく、本編も非常に分かりやすい内容なので、その入り口の広さが魅力かつ素晴らしい点ですね。その魅力は、スター・ウォーズファンを作るためのチャネルとして非常に優れていますし、常にファン以外の方にもスター・ウォーズ作品に触れるきっかけを作っていると思います。

二人に共通するのは、スター・ツアーズでは英雄や兵士ではなく、一人の乗客として銀河へ入れるという感覚だ。ウェルズさん自身、幼い頃には「本当に宇宙に行ってしまったのではないか」と感じていた。その体験を支える空間にも、東京版ならではの要素がある。

Q. 東京版ならではの面白さや、海外版と比べて特徴的だと思うところはありますか?

えーてぃーさん:

東京版のオリジナル要素として、ホーンテッドマンションに登場するヒッチハイクゴーストと同じ動きをする3体のドロイドがキューラインにいます。

東京ディズニーランドにもあるアトラクションなので元ネタが伝わりやすく、見つけた人が嬉しそうに写真を撮っているところなどを見ると、素晴らしいローカライズだなと感じます。

ウェルズさん:

東京版だからこそといえばアライバルホールですね。

キューラインに入るとまず広がる大空間は、東京版のスター・ツアーズにしか存在していません。スター・ウォーズを代表する音楽や、巨大なスクリーン、スタースピーダーが構えている贅沢な場所が東京にしかないことは、世界中のファンに自慢できる点だと思います。

アライバルホールのおかげで、スペースポートの設定も東京版で掘り下げられているのもコアなファンには嬉しいポイントなのではないでしょうか。

日本に残る「銀河への入口」

日本には現在、『Star Wars: Galaxy's Edge』のようなスター・ウォーズ専用のテーマランドは存在しない。その中で、東京ディズニーランドのスター・ツアーズは1989年以来、スター・ウォーズを身体で体験できる場所であり続けている。

そして、その意味を尋ねると、二人はよく似た答えにたどり着いた。

Q. 日本のファンにとって、東京ディズニーランドのスター・ツアーズはどんな場所だと思いますか? 『Galaxy's Edge』がない日本で、長年スター・ウォーズを身体で体験できる場所であり続けていることも含めて聞かせてください。

えーてぃーさん:

私自身がそうであったように、スター・ウォーズを観たことがない人もその世界観を存分に味わうことができ、スター・ウォーズに興味を持つきっかけになっているのではないかと。

そういった意味ではシリーズの入門作品と言って差し支えないと思います。もちろん往年のファンの方にとっても、スター・ウォーズの世界を身近に感じられるかけがえのない場所であることに違いないはずです。

このアトラクションがなければ、私を含めスター・ウォーズに出会うことなく一生を終える人も多かったかもしれないと考えると、スター・ツアーズはスター・ウォーズの歴史を語る上で欠かせない存在であり、これからも多くの人を魅了し続けてほしいと強く願います。

ウェルズさん:

結論から申し上げると、スター・ツアーズは、スター・ウォーズというコンテンツの入り口としての意味が大きいと思います。

子供から大人まで様々な世代が入園する東京ディズニーランドだからこそ、スター・ウォーズに初めて触れる機会がスター・ツアーズとなる方が多いです。スター・ウォーズの門戸を大きく広げることとなった、コンテンツにとって重要な役割を果たしているアトラクションといえるでしょう。

Galaxy's Edgeがない日本で、長年スター・ウォーズの世界を身体で体験できる場所であり続けていること、まずは東京のスタツアに感謝ですね。旧スタツアを日本に導入する際に、企画した㈱オリエンタルランドの方や、製作したルーカスフィルムやイマジニアメンバー、現場を支えたキャストの方、様々な人々が関わってくださったおかげで、長年スター・ウォーズの世界を身近に体験できていると考えると非常に感慨深いものです。

二人とも、自分自身がその入口を通ってきた。スター・ウォーズを知らない子どもが宇宙船へ乗り、本当に宇宙へ飛び出したように感じる。その経験から映画やアニメ、玩具へ興味を広げ、やがて何百回、何千回と同じ入口へ戻るようになる。

ウェルズさん提供

これからのスター・ツアーズ

過去を記録してきた二人は、これからのスター・ツアーズに何を望むのだろうか。

Q. スター・ツアーズに今後も残してほしいもの、これから追加してほしいものはありますか?

えーてぃーさん:

新作公開に伴い新たなシーンを追加する試みは今後も継続してほしいと思います。

さらに、過去作からもたくさんの惑星やキャラクターを登場させることで、広大なスター・ウォーズ世界の魅力を余すところなく伝えてくれるアトラクションになってくれれば嬉しい限りです。

ウェルズさん:

残してほしいものと追加してほしいもの…同じ解答となるのですが、どちらもシーンですね。現在あるシーンはこれからも全て残して欲しいですし、新作ドラマや映画が出る度にシーンは余すことなく追加して欲しいです。

特に、シークエルのシーンが全体的に少ないので、「エピソード10」や『スターファイター』が公開されたら新規シーンとして追加されるのを期待しています。

おわりに:入口を残すということ

子どもの頃、スター・ツアーズからスター・ウォーズへ入った二人は、何度もその入口へ戻り、その中にあるものを探し、比較し、記録するようになった。その結果として生まれた『スター・ツアーズ・クロニクル』は、単なる攻略本や設定資料ではない。

えーてぃーさんにとっては、変化を続けるアトラクションについて、できるだけ正確な情報を残すためのものだった。ウェルズさんにとっては、いつかアトラクションそのものが姿を変え、インターネット上の情報さえ消えるかもしれない中で、体験をより長く残すためのものだった。

スター・ツアーズはこれからも変わるだろう。新しい作品が作られれば、新しい人物や惑星が加わる。その一方で、更新によって消えていくものもある。だからファンは乗り、探し、記録する。

そしてスター・ツアーズを未来へ残すことについて、ウェルズさんはこう語っている。

先人へのリスペクトも大きいですが、我々今のゲストが将来のファンを作り続けるためにもこの場所を守らなくてはと強く感じています。私たちが乗り続けることがアトラクションの存続に直接貢献できますし、スター・ツアーズがどれだけ魅力的な場所なのか、発信し続けていくべきだと思います。スタツアを通して、先人から受けた愛を、後輩のファンにお返ししていきたいですね。

前編で約40年にわたって開き続けてきた「銀河への入口」を追った。今回二人の話から見えてきたのは、その入口をくぐったファン自身が、今度はその体験を残し、次の誰かへ渡そうとしている姿だった。

なお、在庫はわずかとなるが、「スター・ツアーズ・クロニクル」は2026年10月11日のWonder Bazaarで頒布予定。詳細はこちら。

筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)

えーてぃーさんのAT-ATコレクション(えーてぃーさん提供)
ウェルズさんのスター・ツアーズのコレクション(ウェルズさん提供)

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筆者

ジェイK
プリクエル三部作~『クローン・ウォーズ』直撃世代。多くの人を動かし、時代とともに形を変え続ける“現代の神話”としてのスター・ウォーズに魅入られ、映画・ドラマから小説、レジェンズ、制作背景、ファン文化まで幅広く追い、記事を執筆しています。Xでは最新情報を日々発信中。