一般公開に先立ち、9月15日のプレビューで会場を訪れた。展示品は500点を超え、落札予想価格の総額は1500万ドル(約24億円)以上。スター・ウォーズ関連だけでも、ダース・ヴェイダーのライトセーバー、アクション用ライトセーバー、ブラスター、ドロイド、小物、模型など想像以上の数が揃っている。Heritage Auctionsによれば、ライトセーバーについては一般公開として史上最大規模のコレクションになるという。
実物を間近で見ると、画面の中だけでは分からないことも多い。どれにも新たな発見があり、気づけば私は2時間以上も食い入るように展示を見続けていた。今回の記事では展示品を網羅するのではなく、実際に見て特に面白かったプロップを紹介したい。
一本のライトセーバーに残る「履歴」
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| レイアのライトセーバーは左下の写真の一番左、シンのライトセーバーは右下の真ん中 |
そして、会場でひときわ目につくところに鎮座するのが今回の目玉でもあるダース・ヴェイダーのライトセーバーだ。会場には『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』の両作で使用されたライトセーバーと、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』で使用されたライトセーバーの2本が近くに展示されている。同じヴェイダーの武器でも、制作された時代は40年以上違う。
『オビ=ワン・ケノービ』版は、今回のプレビューに際して特別に手に持たせてもらうことができた。まず驚いたのは金属の重さだった。手にするとずしりと重く存在感がある。あのヴェイダーが持つ武器として説得力のある重さだった。ブレードが伸びるエミッター周辺も細かく作り込まれており、近くで見れば見るほど情報量が増えていく。
ヒルトには「S」や「E」といった小さな刻印も確認できる。ヴェイダーのライトセーバーの原型となったMPP Microflashにも存在する特徴で、ドラマ用に制作されたプロップでも、こうした元の部品に由来するディテールが再現されている。
話がやや脱線するが興味深いのはグリップの数だ。『新たなる希望』で使用されたヴェイダーのライトセーバーは7本のグリップを持つが、『オビ=ワン・ケノービ』版は6本となっている。実は2007年にMaster Replicasが発売したANH版Force FXライトセーバーにも、本来7本のところを6本とした同じ相違があり、ドラマ放送時からプロップ研究者の間ではMaster Replicas製レプリカとの関連が指摘されている。
『帝国の逆襲』&『ジェダイの帰還』で使われたライトセーバーは所々に傷があり実際に使用されたことが実感できる。『オビ=ワン』版と比べると似ているところも違うところもある。そしてこの1本を見る面白さは、その姿だけではない。Heritage Auctionsでは劇中映像と比較しスクリーンマッチを行い、実際に撮影で使用された個体であることを確認しているという。『帝国の逆襲』から『ジェダイの帰還』では一部のパーツが無くなっており、それが外された履歴があるかを確認しているとの話を伺った。
撮影用プロップの真贋を見極める際には、その品物がどのような経緯をたどってきたのかだけでなく、使われている部品が制作年代と整合するかといった点も確認される。現地担当者によれば、その際にはファンが長年積み上げてきた部品特定などの知識が参照され整合性を確認することもあるという。以前のカスタムライトセーバーの記事でも取り上げたように、スター・ウォーズのプロップ研究では、もともと何の部品が使われていたのか、劇中のどの場面でどの個体が使われたのかをファンが追い続けてきた。そうした蓄積が、数十年後には本物を見極める材料にもなっており、文化が息づいていることを実感する。
一本ではないライトセーバー
会場には、細部まで作り込まれたヒーロー用プロップだけでなく、アクションやトレーニングのために作られたライトセーバーも複数展示されている。
この中で地味だが印象に残ったのが、『シスの復讐』のトレーニング用ライトセーバーだ。奥の緑のものはブレード部分がカーボンで、手前のオレンジのものはブレード部分が竹である。劇中で見る精巧なライトセーバーとはまるで違う。殺陣を繰り返し練習するための道具なのだから、これが正解なのだろう。ヘイデンが実際に使って練習していたのではと想像すると、トレーニング用でもファンが欲しくなる理由はよく分かる。
その近くには、プリクエル三部作のアクション用ライトセーバーや、シークエル三部作で使われた発光式のライトセーバーも並ぶ。実物を見比べると、その違いはかなり大きい。シークエルの発光式プロップは、それ以前の非発光式のものに比べてブレードもヒルトも太く、見るからに重量感がある。そして、カイロ・レンには細部まで作りこまれたヒーロー用にも実際に発光するFXプロップが用意されていた。発光式のライトセーバーというのは、それだけ映画に新たな演出をもたらした。
これらは画面の中では、どれもライトセーバーだ。しかし撮影現場では、練習するため、激しく振り回すため、そして実際に光らせるため、それぞれ違う道具が必要になる。並べて見ることで、ライトセーバーの見た目だけではなく、それを使ってスター・ウォーズをどう撮ってきたのかまで見えてくる。プリクエル三部作からシークエル三部作の殺陣の変化を改めて実感した。
映画に必要なものを作る
ライトセーバー以外の展示を見ていると、撮影用プロップが必ずしも精巧に作られているわけではないことも分かる。その一例が、『フォースの覚醒』でストームトルーパーが使用したF-11ブラスターだ。現地担当者によれば、展示されているものは後方に映るストームトルーパーのために用意されたもので、木製であるという。画面の手前で大きく映るのでなければ、細部まで作り込む必要はない。大量のストームトルーパーが登場し、多数の武器を用意する必要がある中では、それこそが合理的だ。大作映画にもこのような工夫が必要なのだ。
また、会場にはジャー・ジャー・ビンクスの撮影に使われた被り物も展示されていた。完成映像ではCGで描かれるキャラクターだが、撮影現場では俳優の目線を合わせるための目印など、物理的な存在も必要だった。観客が映画館で見るジャー・ジャーとはまったく違う。しかし、当時セットに立っていた俳優たちにとっては、「そこにジャー・ジャーがいる」状態を作るためにこのジャー・ジャーが必要だった。その作りには妥協はなく、愛おしさを覚えた。以前の記事では当時非難され、そして今愛されているジャー・ジャーについて取り上げたが、この小道具があったからこそ、今のジャー・ジャーがある。
おわりに:映画を作るための道具だった
今回並んでいるプロップの中には、現在では信じられないような金額で取引されるものもある。『帝国の逆襲』&『ジェダイの帰還』の撮影で使用されたヴェイダーのライトセーバーは想定落札額5億円とのことだ。正直、「とんでもない世界だな」とも思う。
ただ、実物を見ていると、それらも最初から高価なコレクターズアイテムだったわけではないことを改めて感じる。ヴェイダーのライトセーバーも、竹で作られたトレーニング用ライトセーバーも、木製のブラスターも、もともとはスター・ウォーズを撮るために作られた小道具だった。必要なところは徹底的に作り込み、必要のないところは思い切って簡略化する。その積み重ねで、私たちが知る「はるか彼方の銀河」が作られている。
だからこそ、こうした品を欲しくなる気持ちも少し分かった気がする。単なる物ではなく、その映画が作られた時間そのものを手元に残すような感覚なのかもしれない。
今回紹介したのは、会場で気になったもののほんの一部だ。他にもオビ=ワンのパダワン・ブレードや『新たなる希望』のアストロメクの頭部などファンにはたまらない品物が並んでいる。スター・ウォーズのプロップをこれだけまとめて日本で見られる機会はめったにない。スター・ウォーズのファンなら、一度足を運んでみる価値はあると断言できる。ここで取り上げなかったプロップに、私が気づかなかった発見が必ずあるだろう。
Heritage Auctions Japan ポップカルチャー・オークション展
・会期:2026年9月18日(金)~10月27日(火)
・開館時間:11:00~18:30
・休館日:月曜日および祝日 ※9月21日(月)~23日(水)、10月12日(月)は休館
・会場:東京都渋谷区神宮前6-13-3
・入場料:無料
※本記事はHeritage Auctionsから依頼を受けたPR記事ではありません。別途XでのPR施策に伴い、交通費相当の報酬を受けた上で一般公開前のプレビューを取材しています。
筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)

